弱小チームのファンの夢から生まれた映画
右腕のけががもとで剛速球が投げられるようになった12歳の少年ヘンリーが、弱いけれど人気だけはある老舗球団のシカゴ・カブスに入団するというお話。
いわば、大学教授が偶然木材に反発する薬を発明し、それを使って投手としてメジャーリーグにデビューするという野球映画の名作『春の珍事』(49)の“少年版”です。
初めは、信じられない状況に有頂天になるヘンリーですが、やがて不自然な生活から生じる屈折やジレンマに悩むようになります。
俳優でもあるダニエル・スターン監督は、『ホーム・アローン』(90)で共演した天才子役マコーレー・カルキンの姿を参考にしたのでしょうか。
そして最後は、体だけが大人になった『ビッグ』(88)の主人公ジョシュと同様に、ヘンリーをちゃんと元に戻してあげるところが粋です。
カブスの本拠地リグレー・フィールドの試合前の支度風景、球場内の雰囲気、専属アナ(ジョン・キャンディ)の存在など、野球愛に満ちたディテールの描写が素晴らしい。
弱いチームのファンは、せめて映画の中だけでも強くなってほしいと願うもの。そうしたファンの夢から生まれた映画です。