『雨あがる』(00)(2000.2.渋谷エルミタージュ)
武芸の達人だが、不器用でお人よしの三沢伊兵衛(寺尾聰)は仕官が決まらず、妻たよ(宮崎美子)と共に旅を続けていた。ある日、伊兵衛は、侍同士の果たし合いを仲裁するが、それを見た藩主(三船史郎)が、剣術の指南役として城に迎えたいと申し出る…。
山本周五郎の短編小説を基に、黒澤明が書いた脚本を、いわゆる黒澤組のスタッフ、キャストが映画化。長く黒澤の助監督を務めた小泉堯史の映画監督デビュー作だけあって、黒澤タッチを思わせるところが端々に見られるのだが、やはり「黒澤が撮ったら…」と思ってしまうところが多々あった。この映画に関しては、黒澤ゆかりの人たちが、彼の心残りを晴らしてあげたものという印象が強い。
黒澤の映画は、その力強さだけが強調されがちだが、彼本人は周五郎の、あまり強くない者を主人公にしたものがお気に入りだったという。黒澤は、強い人間ばかりでなく、周五郎が描くような弱さやはかなさを持った市井の人々をもっと描きたかったのかもしれない。
藩主を演じた三船史郎が、父の敏郎をほうふつとさせるような押し出しの強い演技を披露したのには驚いた。
『雨あがる 映画化作品集』(山本周五郎)
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