田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ねらわれた学園』

2020-04-19 10:39:03 | 映画いろいろ

『ねらわれた学園』(81)(1981.7.3.東洋現像所)

 超能力で悪と対決する少女の姿を描いた学園サスペンス。原作は眉村卓。

 非常に漫画チックで、角川映画の楽屋落ちや、つまらないギャグも多く、真面目に考えれば「何じゃこれは?」となるのだが、実は結構楽しんだ。『金田一耕助の冒険』(79)では、ふざけ過ぎを感じさせた大林宣彦であったが、これが彼のやり方だと思えば、それはそれで、他の監督にはまねができない特技だとも言える。ちょっと変わった特撮を使って、奇想天外なストーリーを展開させるファンタスティックなSFに大林の存在価値を見付けた。

 ユーミンの「守ってあげたい」に乗って薬師丸ひろ子のかわいらしさを再発見。手塚真が癖のある役を好演していた。それにしても、峰岸徹はよくこんな役を引き受けたものだ。

【今の一言】公開当時は、結構戸惑わされた覚えがあるのだが、現在では、角川映画のアイドル路線と、大林が“大林ワールド”と呼ばれる独自の映像スタイルを確立させた作品として評価されているらしい。確かに、この映画の延長線上で傑作『時をかける少女』(83)が作られたのだ。

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『シネマと銃口と怪人―映画が駆けぬけた二十世紀』(内藤誠)

2020-04-19 09:50:26 | ブックレビュー

『昭和映画史ノート』に続いて再読。最初に読んだ時のノートを。

 山田五十鈴が樋口一葉に扮した戦前の東宝映画から明治時代を考察する、第1章「「一葉の時代」の画像。」
 監督フリッツ・ラングと俳優ピーター・ローレの数奇な運命とファシズムをめぐる、第2章「『M』の時代。」
 セッシュー・ハヤカワの栄光と挫折、第3章「戦時下、パリの早川雪洲。」
 産児制限運動者と芥川龍之介の小説をからめた、第4章「サンガー夫人と芥川の『河童』。」
 ロベルト・ロッセリーニ作品と吉田満の著書『戦艦大和ノ最期』を軸に、国策映画について考察した、第5章「『白い船』と『戦艦大和』。」
 ルキノ・ビスコンティとナチズムを交錯させた、第6章「ファシズムの美学と『地獄に堕ちた勇者ども』」、というラインアップ。

 まさに映画を中心とした幅広い雑学を縦横無尽に語っている。『昭和映画史ノート』もそうだが、難しいことをすらすらと読ませる文章のうまさ、あるいは幅広い書物からの引用文の巧みな配置に唸らされる。巻末の解説を書いた某氏の、妙にひねって分かりづらい文章と比べても文才の差は一目瞭然。こういうものが書ける自分でありたいと思う。 (2005.1.13.)

『昭和映画史ノート 娯楽映画と戦争の影』(内藤誠)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ab14ec5dbe593013cb9df93d85a3f4ec

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