元マイナーリーグの左腕投手で、映画『さよならゲーム』のモデルになったスティーブ・ダルコウスキーが亡くなった。その剛速球の最速は115マイル(約185キロ)という声も上がるほどだったが、制球難でメジャー昇格はならなかった。
『さよならゲーム』(88)(1988.10.8.東劇)
マイナーリーグ、ダラム・ブルズの熱狂的ファンのアニー(スーザン・サランドン)は、シーズンごとにお気に入りの選手を見つけて公私共に世話を焼くのを生きがいとしていた。彼女が今シーズン目を付けたのは、剛速球を投げるが技術も精神面も未熟なエビー(ティム・ロビンス)だった。そして、エビーのコーチ役として雇われたベテランキャッチャーのクラッシュ(ケビン・コスナー)も加えた、奇妙な“トリプルプレー”が始まる。
野球映画は日本ではあまりヒットしないらしい。事実、今日の客席もガラガラだった。そこには日本とアメリカの野球=ベースボールに対する思い入れや捉え方の違いがあると思う。そして、この映画を見ると、それは選手たちも同様で、アメリカでは本当にベースボールを楽しみながら、遊びの延長線上のようにプレーしていることがよく分かる。
その点、日本の野球には、どこか根性論や悲壮感が漂い余裕がない。そんなところから、助っ人外国人選手たちとの間にトラブルが生じるのも必然で、かつてヤクルトでプレーしたボブ・ホーナーが「地球の裏側に、もう一つの違ったベースボールがあった」と語ったのも当然だと思える。
だが、その楽しさや余裕の裏にはメジャーリーグへの厳しい道があり、この映画の主人公クラッシュ(誰も注目しないマイナーリーグの通算ホームラン記録の更新を密かに狙っている)のように、マイナーでいくら活躍してもメジャーには定着できずに去っていく選手の方が圧倒的に多い。そうした選手たちの無念の思いがあるからこそ、メジャーリーグが輝く場所として存在しているのだ。
監督・脚本のロン・シェルトンは元野球選手で、ストーリーに多少の脱線はあったものの、メジャーに上がれなかったマイナーリーガーとしての自身の思いを、見事に映画内に反映させていた、と言えるだろう。特に、ファーストシーンとラストシーンに映された名選手たちの写真(憧憬)が印象深いものとして残った。
コスナーのプレーぶりが抜群! アメリカの俳優たちは本当に野球がうまい。それだけ生活の中に野球がしみ込んでいるからなのだろう。この後コスナーはWP・キンセラの『シューレス・ジョー』の映画版に出演するらしい。今から楽しみだ。
【今の一言】『シューレス・ジョー』の映画版は、言わずもがなの『フィールド・オブ・ドリームス』(89)だ。
「映画で見る野球 その4」 番外編
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