田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『グリーン・カード』

2020-10-12 10:07:13 | ブラウン管の映画館

『グリーン・カード』(90)

 舞台はニューヨーク。園芸家のブロンテ(アンディ・マクダウェル)は、温室付きアパートの居住者になるために、長期滞在の外国人永住権(グリーン・カード)を手に入れたいフランス人、ジョージ(ジェラール・ドパルデュー)と書類上だけの夫婦になる。ところが、移民局の調査のため、2人はしばらくの間同居することになるが…。

 偽装結婚した男女が、本当の愛に目覚めていく姿を、オーストラリア出身のピーター・ウィアー監督がコミカルに描くロマンチックコメディ。ドパルデューの本格的なアメリカ映画進出のきっかけとなった。

 古くはジャン・ギャバン、1960年代はアラン・ドロン、70年代はカトリーヌ・ドヌーブがハリウッド進出をはかったが、言葉の違いなどの問題もあり、いずれも成功には至らなかった。その点、ドパルデューは時代の変化にも助けられたが、グローバルに活躍するフランス人俳優のさきがけとなったところもある。

【今の一言】この映画を見ると、一時期ハリウッドで活動していた知り合いの俳優が、「グリーン・カードを手に入れるのは大変」だと言っていたのを思い出す。

 

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『ケープ・フィアー』

2020-10-12 07:47:01 | ブラウン管の映画館

『ケープ・フィアー』(91)(1992.2.6.日本劇場)

 レイプの罪で服役していたマックス(ロバート・デ・ニーロ)は出所後、自分の弁護をおこたったとして、ボーデン弁護士(ニック・ノルティ)への復讐を誓う。

 先日、図らずもオリジナルの『恐怖の岬』(62)を見てしまったおかげで、両作の間にある30年という時の流れによって生じたさまざまな変化の方に興味がいってしまい、この映画を、まっさらな新作としては捉えられなかった。

 例えば、善悪がはっきりしていた『恐怖の岬』に比べると、この映画では、何をもって善と悪を区別するのかが曖昧である。それは、極悪な異常者役をデ・ニーロがやることで、彼の演技が善悪を超越してしまったことと、被害者であるノルティ演じる弁護士一家の方に問題があり過ぎて、彼らが襲われても同情心が湧いてこないことも大きく影響している。30年という歳月は、ここまで人間を変え、歪めたのか、という思いがした。

 こういう映画を見ると、最近のアメリカ映画が好んで描く“家族や心の回復劇”は、所詮現実逃避に過ぎないのか、現実があまりにも殺伐としていることへの反作用なのか、と感じて空しくなる。かといって、マーティン・スコセッシがハートウォーム映画を撮ったら、それはそれで驚くだろうが…。

 この映画が全くのオリジナルだったら、いかにもスコセッシらしい映画として評価することもできたかもしれないが、映画はある意味では生ものなのだから、中半端なリメークはよした方がいいのではないかと思う。

 ただ、『恐怖の岬』で主人公の弁護士を演じたグレゴリー・ペック、犯人役のロバート・ミッチャム、警察署長役のマーティン・バルサムがカメオ出演し、タイトルはソール・バスが担当し、音楽はオリジナルのバーナード・ハーマンによるスコアをエルマー・バーンスタインが編曲・指揮している。こうしたオリジナルへの敬意や遊び心は、映画狂スコセッシの愛すべきところだ。

 そんなこの映画を製作したのは、スピルバーグ主宰のアンブリン。前作『アラクノフォビア』(90)を見た際に、アンブリンもファンタジー路線だけではなく、そろそろ“冒険”が必要だと感じた。その意味では、この映画は、成否はともかく、わが意に応えてくれたとも言えるのだが、この後は、またもやファンタジー路線の『フック』(91)ときた。うーん、これはどうなのだろう。



『恐怖の岬』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f9b7eee01d69f1bb22c828191286b02b

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【インタビュー】『バック・トゥ・ザ・フューチャー』宮川一朗太 

2020-10-12 07:37:56 | インタビュー

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の製作35周年を記念して、「バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー 35th アニバーサリー・エディション 4K Ultra HD + ブルーレイ」が10月21日から発売される。マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティ・マクフライの吹き替えを担当した宮川一朗太に、マイケルへの思いや、吹き替えの裏話を聞いた。

アメリカ人から「何でマイケル・J・フォックスが日本語をしゃべっているんだ」と言われたことが心の支えに
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1244940

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『恐怖の岬』

2020-10-12 07:30:24 | ブラウン管の映画館

『恐怖の岬』(62)(1991.12.28.)

 

 弁護士のサム(グレゴリー・ペック)は妻のペギー(ポリー・バーゲン)と娘と共に幸せに暮らしていた。だがある日、自分が刑務所に入れられたのはサムのせいだと思い込む性犯罪者のマックス(ロバート・ミッチャム)が出所する。復讐をもくろむマックスに対して、サムは必死に家族を守ろうとするが…。

 この映画は、来年の正月映画の目玉と目される『ケープ・フィアー』(91)のオリジナルである。多分、それに当て込んでの放送で、予習ができたのはありがたかった。

 製作当時は、恐らくこれでも検閲突破すれすれの危うさを持った映画だったと思われるが、今の暴力や性の氾濫から見ればかわいいものだ。スコセッシ+デ・ニーロによるリメーク版は、もっとストレートに、この題材が持つ異常性を強調して描いているだろう。

 だが、少々キザな言い方をすれば、「秘すれば花」ではないが、何でも直接的に見せることが、果たしていいことなのか、という気もする。

 それは、この映画が持つモノクロ画面の魅力、ペックとミッチャムの対決に加えて、妻役のポリー・バーゲンの貞淑さ故の色っぽさが光っていたことも大きな理由の一つだ。

 リメーク版の夫婦や家族の絆はここまで強くは描かれていないだろうし、善悪の区別もはっきりしないのではないかと思われる。そう考えると、『ケープ・フィアー』では、また「アメリカ社会の病根の深さ」を見せられるのか、という危惧もある。

 この映画の監督はJ・リー・トンプソン。かつては『ナバロンの要塞』(61)『マッケンナの黄金』(69)など、面白い映画を作っていたが、今やブロンソンの『デス・ウィッシユ』シリーズ『禁じ手』(89)など、冴えないB級映画を撮っているのが残念だ。 

『ケープ・フィアー』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0c123171525eee06ed155a84e7131446

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