長野でロケが行われた映画では、ヒロインが蕎麦屋の娘という設定だったので、善光寺周辺や松代、戸隠で撮影された大林宣彦監督の『転校生-さよなら あなた-』という映画があった。
『転校生-さよなら あなた-』『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』(07)(2007.6.4.角川試写室)
ジョン・ウェインのファンとしても知られる大林宣彦監督に、新作のPRにかこつけてジョン・ウェインについてのインタビューを依頼。というわけで、事前に1日で2本の新作を試写することに。
まず、朝の10時から麹町の試写室で『転校生』(82)のリメーク版『転校生-さよなら あなた-』を見る。一端仕事場に行って作業をし、また試写室に戻って午後6時から『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』を見た。
もともと大林映画は、ご本人が徹底的に自分の世界に酔った、見る側にとっては少々照れくさく感じるファンタジーに、中途半端な現実やメッセージを盛り込む支離滅裂なところが弱点なのだが、それでも以前は“大林ワールド”と呼ばれた力業を駆使して、見る者に懐かしさや切なさを感じさせる不思議なパワーがあった。
ところが、この2本ではそうした不思議なパワーが影を潜めて、自分勝手な思いを延々と聞かされたような違和感を抱かされた。どうして『転校生』をいまさらヒロイン(蓮佛美沙子)の難病ものとしてリメークしなければならなかったのか?
『22才の別れ』の主人公(筧利夫)は自分とほぼ同世代の設定だが、「ノストラダムスの大予言」に影響されて、その後の人生の目標を見失った者などいない。なので、これもひどく乱暴な設定というほかない。2作ともまさにゆるゆるの出来で見ていてひどく疲れた。
帰宅後、NHK BSで『駅馬車』(39)を再見。今週は折良くジョン・ウェインの特集。改めて、わずか1時間36分で描かれる密度の濃いドラマとアクションとの見事な融合に感動した。大林さん、ジョン・ウェインのファンなら、もう一度この映画を見て、最近の自分の映画がいかにしゃべり過ぎで説明が多いか、いかに独りよがりで空虚な2時間になっているかに気づいてくださいという気がした。
『ムービーランドの子守唄 いつか見たジョン・ウェイン』(大林宣彦)
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