『罪と悪』(2023.12.11.オンライン試写)
中学生の正樹が何者かに殺され、遺体は橋の下に捨てられていた。正樹の同級生である春、晃、双子の朔と直哉は、正樹が度々訪れていた「おんさん」と呼ばれる老人が犯人に違いないと考え、家に押しかけてもみ合ううちにおんさんを殺してしまう。そして、おんさんの家に火を放ち、彼らは秘密を共有する。
22年後、刑事になった晃(大東駿介)が父の死をきっかけに町に帰ってくる。久々に会った朔(石田卓也)は引きこもりになった直哉の面倒を見ながら実家の農業を継いでいた。
やがて、かつての事件と同じように、橋の下で少年の遺体が発見される。捜査に乗り出した晃は、建設会社を経営する春(高良健吾)と再会。春は不良少年たちの面倒を見ており、被害者の少年とも面識があった。晃と朔、そして春が再会したことで、それぞれが心の奥にしまい込んでいた22年前の事件の扉が再び開き始める。
幼なじみの少年たちが背負った罪と、22年後に起きた新たな殺人事件の行方を描いたノワールミステリー。監督は本作が長編デビューとなる齊藤勇起。佐藤浩市、椎名桔平、村上淳らが脇を固める。
齊藤監督のオリジナル脚本による映画だが、少年への性的虐待に端を発した事件と、幼なじみの3人の男性のその後の運命を描くという点では、バリー・レビンソンの『スリーパーズ』(96)やクリント・イーストウッドの『ミスティック・リバー』(03)を思い起こさせる。
また、約25分のアバンタイトルで過去を描き、話はいきなり22年後に飛ぶ。そして、再会した3人の22年間と二つの類似した事件との関りが徐々に明かされていくのだが、登場人物の描き方が曖昧で話も暗いので、見ながら気が滅入る。
最近の若い監督が作る小品は、こうした傾向が目立つ。彼らはよほど屈折しているのか、今の世の中はそんなに希望がないのか、闇が深いのかと思うと、暗澹たる気分になる。