田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ブギの女王・笠置シヅ子 心ズキズキワクワクああしんど』(砂古口早苗)

2024-01-30 22:51:22 | ブックレビュー

 朝ドラ「ブギウギ」の原案本で、著者は笠置シヅ子と同郷のライター砂古口早苗氏。笠置について初めて書かれた評伝だという。

 笠置への強い思い入れをにじませながら、さまざまに人に取材し、いろいろな参考文献に当たって、実によく調べて書かれている。特に服部良一やエノケン、美空ひばりとのくだりは、教えられることも多く、興味深く読むことができた。それだけに時折人名に誤植があったのが残念。自分も気を付けなければと自戒させられた。

 歴史ドラマもそうだが、こうした評伝も、誰の側や立場から見るかで全く違うものになる。そこに筆者の主観が入るからだ。例えば、著者は竹中労の『美空ひばり』での笠置に関する記述に疑問を呈しているが、それはあくまでも笠置の側から見れば…ということになる。もとより、さまざまな登場人物に対して八方美人では評伝は書けないから、人物の描写の仕方やバランスが大事になるのだ。

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『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

2024-01-30 09:02:46 | 新作映画を見てみた

『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(2024.1.17.東宝東和試写室)

 弟が誘拐され、行方不明となった悲しい記憶から立ち直れずにいるマイク(ジョシュ・ハッチャーソン)。妹のアビーの親代わりとして生計を立てるため、廃墟となったレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員として働くことに。

 「モニターを監視するだけ」という簡単な仕事のはずだったが、妹を連れて深夜勤務に就いたマイクは、かつてそのレストランの人気者だった機械仕掛けのマスコットたちが動き出す姿を目撃。マスコットたちはかわいらしい姿から一転して凶暴化し、マイクや廃墟への侵入者を襲い始める。

 世界的ヒットを記録した同名ホラーゲームを、ブラムハウス・プロダクション製作で映画化。監督はエマ・タミ。原作ゲームの開発者スコット・カーソンが製作・脚本に名を連ねる。エリザベス・レイル、マシュー・リラードが共演。

 マイクが何度も見る夢や黒幕の正体などの謎解きの方に力が注がれ、ホラー描写は薄め。巨大マスコットたちに霊がひょう依して…というのは、ゆるキャラが悪さをするようなものなので、そのギャップが面白い。

 とはいえ、多層的な夢が現実に影響を与えるという部分はクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(10)、誘拐、夢と子どもの霊が事件の鍵を握るという設定は、同じくブラムハウスが製作したジョー・ヒル原作の『ブラック・フォン』(21)を思わせるところもある。


『ブラック・フォン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/807735980da480695aea5e0890f71d36

『インセプション』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/68645068755f69c638f1cd3d429daf7b

 

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『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

2024-01-30 08:43:24 | 新作映画を見てみた

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(2024.1.29.オンライン試写)

 コロナ禍の2020年、マサチューセッツ州の会社員キース・ギル(ポール・ダノ)は、全財産の5万ドルをゲームストップ社の株につぎ込んでいた。アメリカ各地の実店舗でゲームソフトを販売する同社は時代遅れで倒産間近とささやかれていたが、キースは赤いはちまきにネコのTシャツ姿の「ローリング・キティ」という名で動画を配信し、同社の株が過小評価されているとネット掲示板で訴え掛けた。

 すると、彼の主張に共感した大勢の個人投資家がゲームストップ株を買い始め、21年初頭に株価は大暴騰。同社を空売りしてひともうけを狙っていた大富豪たちは大きな損失をこうむった。この事件は連日メディアをにぎわせ、キースは一躍時の人となるが…。

 SNSを通じて団結した個人投資家たちが金融マーケットを席巻し、社会現象を巻き起こした「ゲームストップ株騒動」の実話を映画化。ベン・メズリックのノンフィクションを基にクレイグ・ギレスピーが監督を務め、前代未聞の事件の内幕をユーモアたっぷりに描く。

 ピート・デビッドソン、ビンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、シャイリーン・ウッドリー、デイン・デハーン、セス・ローゲンらが共演。

 まず、2020年9月から翌年の2月までに起こった出来事を、すぐさま映画化してしまうという素早さには恐れ入ったが、株取引の世界は複雑で難解なので、どうしても『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)のように説明が多くなり、テンポも悪くなる。株取引はドラマチックなので映画向きかと思われるが、実は映画にはしにくい題材だと思う。

 ところが、この映画は、コロナ禍という特殊な状況下、情報のやり取りはネットの掲示板やSNS、株取引はパソコンやスマホで行うという現状を見せながら、主人公のギルを中心に、実際に株の売買に参加していた女子大生や看護師、ゲームストップ実店舗に勤める従業員といった市井の人々と投資家たちの動静を並行してテンポよく描いている。

 それ故、庶民(個人)対富豪の闘いという図式が分かりやすく示され、しかも溜飲が下がる逆転劇でもあるので、投資や株のことがあまり分からなくても楽しめる映画になっている。株取引を扱った映画にしては、よく整理されているという印象を受けた。


『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8833b58cf38ee292073da2f6570b9b3f

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4859918fcf829ede7299b640a0cad5df

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『映画の森』「2024年 1月の映画」

2024-01-30 00:06:01 | 映画の森

共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)12月25日号で、『映画の森』と題したコラムページに「2024年1月の映画」として、5本の映画を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

アクションスター共演のシリーズ第4弾
『エクスペンダブルズ ニューブラッド』☆☆

DCヒーロー「アクアマン」の続編
『アクアマン/失われた王国』☆☆

舞台は9割のネオンが姿を消した香港
『燈火(ネオン)は消えず』☆☆☆☆

同名漫画を実写映画化
『ゴールデンカムイ』☆☆

ジェンダーを意識した一人の女性の冒険譚
『哀れなるものたち』☆☆☆

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