『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(2024.1.29.オンライン試写)
コロナ禍の2020年、マサチューセッツ州の会社員キース・ギル(ポール・ダノ)は、全財産の5万ドルをゲームストップ社の株につぎ込んでいた。アメリカ各地の実店舗でゲームソフトを販売する同社は時代遅れで倒産間近とささやかれていたが、キースは赤いはちまきにネコのTシャツ姿の「ローリング・キティ」という名で動画を配信し、同社の株が過小評価されているとネット掲示板で訴え掛けた。
すると、彼の主張に共感した大勢の個人投資家がゲームストップ株を買い始め、21年初頭に株価は大暴騰。同社を空売りしてひともうけを狙っていた大富豪たちは大きな損失をこうむった。この事件は連日メディアをにぎわせ、キースは一躍時の人となるが…。
SNSを通じて団結した個人投資家たちが金融マーケットを席巻し、社会現象を巻き起こした「ゲームストップ株騒動」の実話を映画化。ベン・メズリックのノンフィクションを基にクレイグ・ギレスピーが監督を務め、前代未聞の事件の内幕をユーモアたっぷりに描く。
ピート・デビッドソン、ビンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、シャイリーン・ウッドリー、デイン・デハーン、セス・ローゲンらが共演。
まず、2020年9月から翌年の2月までに起こった出来事を、すぐさま映画化してしまうという素早さには恐れ入ったが、株取引の世界は複雑で難解なので、どうしても『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)や『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(15)のように説明が多くなり、テンポも悪くなる。株取引はドラマチックなので映画向きかと思われるが、実は映画にはしにくい題材だと思う。
ところが、この映画は、コロナ禍という特殊な状況下、情報のやり取りはネットの掲示板やSNS、株取引はパソコンやスマホで行うという現状を見せながら、主人公のギルを中心に、実際に株の売買に参加していた女子大生や看護師、ゲームストップ実店舗に勤める従業員といった市井の人々と投資家たちの動静を並行してテンポよく描いている。
それ故、庶民(個人)対富豪の闘いという図式が分かりやすく示され、しかも溜飲が下がる逆転劇でもあるので、投資や株のことがあまり分からなくても楽しめる映画になっている。株取引を扱った映画にしては、よく整理されているという印象を受けた。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8833b58cf38ee292073da2f6570b9b3f
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4859918fcf829ede7299b640a0cad5df