『ファースト・カウ』(19)(2024.1.14.新宿武蔵野館)
西部開拓時代のオレゴン州。アメリカンドリームを求めて未開の地へやって来た料理人のクッキー(ジョン・マガロ)と中国人移民のキング・ルー(オリオン・リー)が出会い、意気投合する。2人は、この地に初めてやってきた“富の象徴”である一頭の牛からミルクを盗み、ドーナツを作って一獲千金を狙うが…。
アメリカのインディペンデント映画界で高く評価されるケリー・ライカート監督が、西部開拓時代を舞台に、成功を夢みる2人の男の友情を、アメリカの原風景を思わせる映像と渋い音楽に乗せて描く。
これまでライカート監督作の脚本を多く手がけてきたジョナサン・レイモンドが2004年に発表した小説「The Half-Life」を原作に、ライカート監督とレイモンドが脚本を書いた。
同じくライカート監督の『ミークス・カットオフ』(10)同様に、ほとんど照明なしの暗く静かな画面が続くもので、何度か睡魔に襲われた。ただ、牛の乳を盗んでドーナツを作るというアイデアは面白いし、後半は2人の“悪事”がいつばれるのかとハラハラさせられるなど、決してつまらない映画ではない。
それに、この監督の西部開拓時代のオレゴンへのこだわりやリアリティーの追求には、一本芯が通っている気がして、いい意味での頑固さが感じられる。
また、クッキーとルーの関係は、ジョン・シュレシンジャー監督の『真夜中のカーボーイ』(69)のジョー(ジョン・ボイト)とラッツォ(ダスティン・ホフマン)をほうふつとさせるものがあると思った。
名脇役のトビー・ジョーンズと、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)での演技が印象的だったリリー・グラッドストーンが、この映画にも出ていた。
『ミークス・カットオフ』
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