田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ネクスト・ゴール・ウィンズ』

2024-01-16 16:56:56 | 新作映画を見てみた

『ネクスト・ゴール・ウィンズ』(2024.1.10.オズワルドシアター)

 米領サモアのサッカー代表チームは、2001年にワールドカップ予選史上最悪となる0対31の大敗を喫して以来、1ゴールも決められずにいた。次の予選が迫る中、型破りな性格のためアメリカを追われた鬼コーチ、トーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)が監督に就任し、チームの立て直しを図るが…。

 「ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦」(14)というドキュメンタリー映画も製作された、奇跡のような実話を基に、『ジョジョ・ラビット』(19)「マイティ・ソー」シリーズのタイカ・ワイティティ監督が映画化。ロンゲンの元妻をエリザベス・モスが演じた。

 ストーリー自体は、弱小アイスホッケーチームを描いた『飛べないアヒル』(92)、ジャマイカのボブスレーチームを描いた『クール・ランニング』(93)など、90年代にウォルト・ディズニー・ピクチャーズが連作した、スポーツを媒介とした、問題児の監督(コーチ)と個性的な選手たちの再生物語をほうふつとさせる。

 とはいえ、この映画の場合は、ワイティティ監督独特の世界観とユーモアが異彩を放つ。中でも、コメディリリーフ的な役割のサッカー協会会長を演じたオスカー・ナイトリーが傑作だった。

 こうした映画は、結果が分かっているスポーツの試合を、いかに面白く見せるかに勝負が掛かっているが、その点でも、回想を巧みに盛り込むなどして、飽きずに見せることに成功していた。ロンゲンが『ベストキッド』のミヤギさんに憧れているのもおかしかった。


『クール・ランニング』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51d04cf44b39863b70877c84975e2a0c

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『レディ加賀』

2024-01-16 10:37:10 | 新作映画を見てみた

『レディ加賀』(2024.1.11.オンライン試写)

 石川県の加賀温泉にある老舗旅館「ひぐち」の一人娘・樋口由香(小芝風花)は、小学校の時に見たタップダンスに魅了され、タップダンサーを目指して上京したものの、夢破れ、実家に戻って女将修行をすることに。

 由香が女将修行に苦戦する中、地域を盛り上げるためのプロジェクトが発足。観光プランナーの花澤(森崎ウィン)の発案で、新米女将たちによるタップダンスのイベントを開催することになるが…。

 加賀温泉を活性化するために結成された旅館の女将たちによるプロモーションチーム「レディー・カガ」から着想を得て映画化。監督は雑賀俊郎。新米女将たちを松田るか、中村静香、八木アリサ、奈月セナ、小野木里奈、水島麻理奈、由香の母親で旅館の女将役を檀れいが演じる。主役の小芝はじめ、若女将たちが吹き替えなしの着物姿で披露するタップダンスが見もの。女将や旅館業についてのハウツー的な面白さもある。

 実話を基に、ダンスを絡めて地元を盛り上げるために奮闘する女性たちを描くという点では『フラガール』(06)を思わせるが、先に発生した能登半島地震によって、別の意味を持つ映画になった。

 奇しくも劇中に「加賀温泉は、(2007年の)能登地震、東日本大震災、コロナと3度の危機があったが、それを乗り越えた」というセリフがあったが、この映画のテーマは、再生、応援、チームワークなので、今回の被災者や復興への“応援映画”になり得るのではないかと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする