田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『僕だけがいない街』

2016-03-21 15:18:47 | 新作映画を見てみた

つじつま合わせが下手過ぎる


 
 ある時点まで何度も時間が巻戻るリバイバル(再上映)という現象に巻き込まれた主人公(藤原竜也)が、現在(2006年)と過去(1988年)を行き来しながら、過去の連続児童殺人事件の謎と真犯人に迫る。

 この映画もまた、最近流行の、漫画→テレビアニメ→映画という形態の一環。

 映画の「テーク~(撮り直し)」を利用すれば、現実にはあり得ない、同一人物による幾通りもの現在、過去、未来を描くことが可能になる。

 その点、タイムトラベルものは、映画向きの題材ではあるのだが、そこに説得力を持たせるには、ディテールへのこだわりやつじつま合わせが不可欠になる。

 この映画の監督はテレビドラマ「JIN-仁-」の平川雄一朗だから、漫画が原作のタイムトラベルものは得意なはずと思いきや、つじつま合わせが下手で、現在と過去とのつながりや対比がうやむやになってしまう。

 加えて、主人公が過去を変えたことで起きた現在の変化の様子の描き方も中途半端。真犯人はすぐに分かってしまうし、藤原と石田ゆり子がとても親子には見えないのも難点。

 原作漫画が未完のうちに映画化したということは、ある意味描き方に幅ができたはずなのだが、原作未読の者から見ても、ラストの決着のつけ方はかなりひどいものとして映った。

 タイムトラベルものは、もともと現実離れをしているだけに、中途半端な作りでは余計にあらが目立つことになる。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ちはやふる-上の句-』

2016-03-19 18:30:06 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

広瀬すずの切れ味鋭い動きに魅了される
『ちはやふる-上の句-』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1041619
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「ちいがくベストテン」に投票

2016-03-18 08:46:48 | 映画いろいろ

 昨年に引き続き、ちいさなひとのえいががっこう主催の「ちいがくベストテン」に投票。



 このベストテンは、前年に劇場公開された映画の中から、「親子で観てほしい!」「子どもたちと一緒にぜひ観たい!」映画を5本選ぶもので、今年は3月31日に結果が発表されるとのこと。

「ちいさなひとのえいががっこう」のホームページは↓
https://blog.goo.ne.jp/eigagakkou/c/6ae7fafac4b3ac5d8bef797e60a762de

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『東京裁判』(83)

2016-03-18 08:34:54 | All About おすすめ映画

日本の近代史を記録したドキュメンタリー



 この映画は、終戦後の昭和23年に行われた極東国際軍事裁判(通称、東京裁判)の模様を、アメリカの国防総省が撮影した多量のフィルムを編集したものです。この映画は、そこに裁判の内容に沿った事件や出来事を記録した映像も挿入し、明治以降、軍事国家となっていった日本の近代史を総括していきます。そして、戦争責任や、戦争と国家、あるいは個人との関係を問い掛けながら、戦勝国が敗戦国を裁く矛盾も鋭く突きます。

 上映時間は4時間30分余に及びますが、退屈するどころか、緊張感あふれる画面から目が離せなくなります。改めて映像が持つ力の強さを思い知らされます。監督は『人間の条件』(59)などで知られる小林正樹、音楽は武満徹、大ベテランの編集者・南とめが膨大な量のネガ編集を担当しました。個性派俳優として知られた佐藤慶の感情を抑制したナレーションも絶品です。

 ところで、2012年に公開された『終戦のエンペラー』は、この裁判の最大の論点だった昭和天皇の戦争責任と連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの関わりについて描いています。『東京裁判』を見た後でこの映画を見ると感慨深いものがあります。

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『エヴェレスト 神々の山嶺』

2016-03-15 08:39:40 | 新作映画を見てみた

哀れな熱演



 山岳カメラマンの深町(岡田准一)は、カトマンズで“エベレスト史上最大の謎”を解く可能性を秘めた古いカメラを発見する。そして孤高のクライマー羽生(阿部寛)と出会う。

 深町が実在のイギリスの登山家マロリーと羽生についての証言を集め、推理していく出だしはなかなか面白く、その後に期待を抱かせる。ところが、深町と羽生が向かい合う中盤からおかしな具合になっていく。何より、彼らがエベレストにこだわる動機づけが弱いし、心境の変化の理由もよく分からない。

 それに加えて、時代背景や人物の性格や年齢の設定があまりにも雑。深町の羽生に対する横柄な態度や言葉遣いを見ていると、一体羽生と深町は幾つ年が違うのかと違和感を抱かされること甚だしい。

 岡田と阿部は山岳シーンでは体を張って大健闘しているのに、空回りして滑稽に映り、最後は哀れにすら思えてくる。これは演出のせいなのか、それとも脚本のせいなのか。

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『母よ、』

2016-03-14 08:46:28 | 新作映画を見てみた

もう一人の自分の視点



 家族と人生を見詰めたナンニ・モレッティ監督作。映画監督マルゲリータ(マルゲリータ・ブイ)は、母が余命わずかと知り、仕事をしながら兄(モレッティ)と共に看病するのだが…。

 マルゲリータが直面する問題は、モレッティ自身の体験が反映されているという。それを兄役=もう一人のモレッティが見ているということになる。加えて、モレッティいわくの「記憶なのか、夢なのか、それとも現実なのか。すぐには分からない物語形式」がユニークだ。

 「教師だった母が研究や仕事に捧げた年月が死によって無になる」と考え、空しさを感じるマルゲリータ。母の教え子を登場させ「決してそうではない」とするラストシーン。この変化はモレッティ自身が母に対して抱いた感慨の反映なのだろう。

 カトリーヌ・ドヌーブとスーザン・サランドンを合わせたような外見から、不思議な魅力を醸し出すブイ、エキセントリックな主演俳優を演じたジョン・タトゥーロが好演を見せる。キューブリック、フェリーニ、アントニオーニ、ペトリ…などに関する“映画ネタ”も語られる。

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【ほぼ週刊映画コラム】『家族はつらいよ』

2016-03-12 17:15:54 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

久しぶりに「男はつらいよ」の味わいがよみがえった
『家族はつらいよ』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1040609
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『影武者』(80)

2016-03-11 09:53:56 | All About おすすめ映画

1980年代初頭の映画界の状況を反映



 この映画、製作前は黒澤明監督が『赤ひげ』(65)以来の時代劇を撮るということで大きな話題となりました。

 戦国武将・武田信玄(仲代達矢)の影武者となった盗人(仲代二役)が、奇妙な才覚を発揮して敵も味方も欺いていく姿を描きます。観客はダイナミックな合戦シーンを期待しましたが、黒澤は合戦シーンを正面からは描かず、人間ドラマの方に重きを置きました。

 当時、すでに70歳を迎えた黒澤に、かつての『七人の侍』(54)『隠し砦の三悪人』(58)のような大活劇を望むこと自体が無理な相談なのですが、黒澤自身はこの映画を、次回作となった『乱』(85への序章、ステップと考えていたところもあったようです。

 この映画は、主演が勝新太郎から仲代に交代したほか、脚本の橋本忍、撮影の宮川一夫、音楽の佐藤勝が相次いで途中降板するという不幸に見舞われました。そうしたことに対する黒澤の焦りや苛立ちが、この映画に暗い影を落としています。

 また、主役以外の俳優をオーディションで選び、当時のハリウッドを席巻していたフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが製作に協力し、カンヌ映画祭でグランプリを受賞するなど、映画本編以外のところでも多くの話題を提供しました。

 そんなこの映画は、時代劇でありながら、1970年代末から80年代初頭にかけての映画界の状況や、関係者それぞれの立場を内包し、反映しているとも言えます。映画は作られた際の時代を映す鏡であることがよく分かります。

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『星ガ丘ワンダーランド』

2016-03-10 10:41:50 | 新作映画を見てみた

大いなる勘違い




 星ガ丘駅の落し物預かり所で働く温人(中村倫也)のもとに、20年前に姿を消した母(木村佳乃)の訃報が届く。母は今は閉鎖されたワンダーランドの観覧車で自殺したというのだが…。

 架空の街を舞台にした、CMディレクター柳沢翔の監督デビュー作。主人公のトラウマの原因や母の失踪や死因の真相を、幻想的なシーンを交えながら明らかにしていくというものだが、ミステリーとしてもファンタジーとしても、人物描写も、全てが中途半端な印象を受ける。

 もったいぶった演出や聞き取りにくいせりふ、暗い画面などがスタイリッシュだと思っているのなら、それは大いなる勘違いだ。

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『オートマタ』

2016-03-09 08:33:57 | 新作映画を見てみた

大作の装いだが中身はB級



 2044年、地球の砂漠化が進み、生き残った人類はごくわずかに。人類の生き残りを懸けて人型ロボット、ピルグリム(巡礼者)が開発された。彼らは生命体に危害を与えず、自身で修理や改造をしないようにプログラミングされていたが…。

 反ユートピア(ディストピア)とロボットの進化論を結び付けたSF作。アントニオ・バンデラス演じるロボット製造会社の保険調査員が事件の謎に挑む。全体的に『ブレードランナー』(82)の影響が強く見受けられる。

 スペイン人監督ガベ・イバニエスをはじめ、メキシコ、ブラジル、ブルガリアなど多国籍のスタッフが参加し、大作の装いだが中身はB級だ。

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