永遠の若さを得ることは果たして幸せなのか?
SF作家ケン・リュウの短編小説「円弧(アーク)」を、石川慶監督が芳根京子主演で映画化。芳根が17歳から89歳までを演じる。と言っても、見た目は若いままなので、髪形や服装の変化、あるいは言葉遣いやしぐさの違いでそれを表現するという難役をこなしている。倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫らが脇を固める。
遠くない未来。17歳で、生まれたばかりの息子と別れ、放浪生活を送っていたリナ(芳根)は、19歳の時にエマ(寺島しのぶ)と出会い、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)をする「ボディワークス」の仕事に就く。
一方、エマの弟で天才科学者の天音(岡田将生)は、姉と対立しながら、ボディワークスの技術を発展させた不老不死の研究を進めていた。30歳になったリナは、夫となった天音と共に不老不死の処置を受け、人類史上初めて永遠の命を得た女性となるが…。
いきなり前衛的なダンスのシーンで始まり、どうなることかと思えば、ちゃんと肉体の動きが重要な要因となるボディワークスにつながる。あるいは、この手の映画は、過去をモノクロやセピアで撮ることが多いが、それとは逆に、後半の“未来”のシーンををモノクロで撮るなど、石川監督はいろいろと工夫を凝らしているが、カメラ(画面)を不必要に揺らすのだけは勘弁してほしかった。危うく手振れ(映像)酔いをしそうになった。まあ、それを除けば、哲学的な要素も持ったSF(少し不思議)な話として、非常に興味深いものがあった。
また、若さを保ったままの長寿=不老化という点で、奇跡的な出来事から29歳のまま年を取らなくなったヒロイン(ブレイク・ライブリー)がたどる数奇な人生を描いた『アデライン、100年目の恋』(15)のことを思い出した。
不老不死や若さの継続は、人類にとっては永遠の夢であり、テーマでもある。それについて、この映画と『アデライン~』では、アプローチの仕方は異なるが、どちらも、最後に、永遠の若さを得ることは果たして幸せなのか? と問い掛けてくるところは同じだった。
『アデライン、100年目の恋』
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