ベビーブーマーらしい価値観
ある週末、リリー(スーザン・サランドン)は、医師の夫ポール(サム・ニール)と暮らす海辺の邸宅に、娘のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)とアンナ(ミア・ワシコウスカ)とその家族、そして学生時代からの親友リズ(リンゼイ・ダンカン)を集める。
それは、病気の進行によって安楽死を決意したリリーが、“家族が家族であるうちに”過ごすために用意した最後の時間だった。彼らは、さまざまな思いを胸に最後の晩餐を共にするが、あることをきっかけに、それぞれの秘密が明るみに出ることになる。
登場人物は8人だけで、ほとんどが邸宅内で繰り広げられる、舞台劇を思わせる映画だが、よくある安楽死の是非を問うドラマは、映画が始まった時にはすでに終わっている点がユニーク。つまりは、実行までの過程を描いているのだ。
ただ、リリーが自分の尊厳を必要以上に重視し、娘たちを自由な人間に育てたと勘違いしていたり、葉っぱ(ドラッグ)やウッドストックやフリーセックスのことを楽しそうに語る場面を見ていると、いかにもベビーブーマー(日本で言えば団塊の世代)らしい価値観だという気がして、ちょっと反発を覚えた。
とは言え、この場合は、単なるきれいごとのお涙頂戴話ではなく、そうした嫌らしさをきちんと描いたところを、良しとすべきなのかもしれないとも思った。
いずれにしても、最近母を亡くし、自分も死が身近な年齢になったことを思うと、人生の最期の迎え方について、いろいろと考えさせられるところはあった。
女優たちの演技合戦の横で、夫役のニールと長女の夫役のレイン・ウィルソンがなかなかいい味を出していた。
【付記】母と娘が一緒に歌った曲が気になったので調べてみたら、ナンシー・シナトラが歌った「イチゴの片思い=Tonight You Belong To Me」(63)だった。リリーの思い出の曲という設定なのだろう。ここにも時代が表れている。