『バビロン』(2022.12.20.TOHOシネマズ日比谷.完成披露試写会)
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『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督が、オリジナル脚本を書き、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く189分の大作。音楽は『ラ・ラ・ランド』のジャスティン・ハーウィッツが担当。
チャゼル監督は、『セッション』(14)ではジャズ、『ラ・ラ・ランド』ではロサンゼルスへの偏愛ぶりを示したが、それはこの映画からもうかがえる。そういう意味でも、これは明らかな“チャゼル印の映画”だといえる。
夢を抱いてハリウッドへやって来たメキシコ人の青年マニー・トレス(ディエゴ・カルバ)と、スターを目指す新進女優のネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)。彼らの人生は、サイレント映画の大スター・ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)との出会いによって大きく動き出す。
恐れ知らずで美しいネリーは、自由奔放な個性で観客を魅了し、スターへの階段を駆け上がっていく。一方、マニーはジャックに世話係として雇われた後、大手映画会社のプロデューサーとなる。だが、『ジャズ・シンガー』(27)を皮切りに、トーキーが映画に革命を起こし、彼らの運命が狂い始める。
ジャックのモデルはジョン・ギルバート、同じくネリーはクララ・ボウか。パーティのシーンではロスコー・アーバックルのような男も出てくる。
主役の3人に、トランペットの名手シドニー・バルマー(ジョバン・アデポ)、中国系女優のレディ・フェイ・ズー(リー・ジュン・リー)、ゴシップコラムニストのエリノア・セント・ジョン(ジーン・スマート)らが絡む。
そのほか、トビー・マグワイア、サマラ・ウィービング、オリビア・ワイルド、エリック・ロバーツ、ルーカス・ハース、キャサリン・ウォーターストン、「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーらが顔を見せる。
オープニングで描かれる狂乱のパーティや、パワフルで狂気に満ちた映画製作が、やがて映画業界に求められた社会性やヘイズ・コード(自主規制条項)の導入によって、様変わりしていく様子は、例えば、西部開拓時代の無法、無秩序がもたらしたエネルギーが、やがて文明や法の波によって終息していくさまとも重なる。
そして、この映画が描いたサイレントからトーキーへと移行する際の混乱を見ながら、何だか『雨に唄えば』(52)のパロディみたいだと思っていたら、この曲が先に歌われた『ハリウッド・レヴィユー』(29)と思われる映画の製作風景が映り、ラストでちゃんと本物の『雨に唄えば』が出てきた。しかもすこぶる感動的にだ。
それによって、3時間余り描かれてきた、一種グロテスクな狂乱や狂気の話が、全て帳消しになって、何だかいい話を見たような気分になる。これはちょっとずるい感じもする。
とはいえ、3時間余が、思いの外、長く感じられなかったのも事実。やはりチャゼル監督の力量はたいしたものがあるといえるのかもしれない。
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『雨に唄えば』
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『20世紀の映画』から
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