田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『嘘八百 なにわ夢の陣』

2022-12-28 09:28:27 | 新作映画を見てみた

『嘘八百 なにわ夢の陣』(2022.12.27.オンライン試写)

 空回りばかりしている古美術商の小池則夫(中井貴一)と、うだつの上がらない陶芸家の野田佐輔(佐々木蔵之介)に、豊臣秀吉の出世を後押ししたといわれる7つの縁起もの「秀吉七品」の中でも、唯一所在が不明だった茶碗「鳳凰」絡みの仕事が舞い込む。

 その「鳳凰」をめぐって、開催間近の大阪秀吉博や、TAIKOHを名乗るカリスマ波動アーティスト(安田章大)、彼の側近の謎の美女(中村ゆり)などが、だまし合いを繰り広げる。

 「嘘八百」シリーズの第3作。『嘘八百』(18)の千利休、『嘘八百 京町ロワイヤル』(20)の古田織部に続いて、今回は秀吉の茶器ときた。

 監督・武正晴、脚本・今井雅子と足立紳という、一作目から変わらぬスタッフが手掛けているので、シリーズとしての安定感がある。これまで、中井はコメディには不向きというか、無理をして演じている感があったのだが、今回はなかなかいい味を出していた。

 先日、岡山城を訪れた際に、関西方面での“太閤贔屓”の様子を改めて知らされたが、この映画の根底にもそれが感じられた。まさに「露と落ち 露と消えにし我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」 。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『近江商人、走る!』

2022-12-27 08:57:19 | 新作映画を見てみた

『近江商人、走る!』(2022.12.26.オンライン試写)

 享保年間、偶然知り合った近江の薬売り(村田秀亮)のつてで、大津の米問屋・大善屋で丁稚奉公することになった銀次(上村侑)は、商才を発揮し、店の仕事はもちろん、けがをして働けなくなった大工を救済する方法を考えたり、閑古鳥が鳴く茶屋に客寄せのアイデアを出したりするなど、さまざまな方面で町の人たちを助けていた。

 そんなある日、悪らつな奉行(堀部圭亮)の罠で、大善屋は千両もの借金を背負わされる。銀次は店を守るため、大津と大坂・堂島との米の価格差を利用した裁定取引を思いつく。両所には飛脚でも半日かかかる距離があるが、情報を迅速に入手するため、銀次はある作戦を立てる。

 最近の、『超高速!参勤交代』(14)『超高速!参勤交代 リターンズ』(16)『引っ越し大名!』(19)などの系譜に連なる、半ばコメディ仕立てのニュー時代劇の一種で、監督は三野龍一。キャッチコピーは「痛快ビジネス時代劇(エンタ)」だ。

 銀次がひねり出すアイデアはなかなか面白いが、映画全体としては雑なところがある。また、お笑い芸人が多数出演し、途中、アイドル選挙のパロディや歌が入り、奉行役の堀部と敵役の矢柴俊博の癖のある演技が目立ち過ぎるなど、首をひねるところも少なくないが、時代劇が絶滅危惧種のようになっている今、どんな形にせよ、こうして時代劇が作られることは喜ばしい。

 それにしても、亡くなった渡辺裕之や、藤岡弘、も顔を出すこの珍品映画は、一体どういう経緯で作られたのだろう。地域おこし映画の一種なのか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「BSシネマ」『グーニーズ』

2022-12-27 06:30:04 | ブラウン管の映画館

『グーニーズ』(85)

「金曜ロードショー」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/298c99428fafaf371fd45af92dc87599

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『かがみの孤城』

2022-12-26 08:43:34 | 新作映画を見てみた

『かがみの孤城』(2022.12.25.オンライン試写)

 辻村深月の同名ベストセラー小説を、原恵一監督が劇場アニメ化。脚本は丸尾みほ。

 中学1年生のこころ(声:當真あみ)は、クラスメートからのいじめによって学校に行けなくなり、部屋に閉じこもる日々を送っていた。 

 そんなある日、部屋の鏡が突然不思議な光を放ち始める。こころが鏡の中に吸い込まれるように入っていくと、そこはおとぎ話に出てくる城のような建物の中で、6人の見知らぬ中学生がいた。

 そこへオオカミの面をかぶった少女「オオカミさま」(声:芦田愛菜)が現れ、7人は選ばれた存在であること、そして城のどこかに秘密の鍵が一つだけ隠されており、見つけた者はどんな願いでもかなえてもらえると話す。

 集められた7人は、一人を除いて、何らかの理由で不登校となった中学生たち。だから、見る前は、自分よりも年上の原監督が、果たして今の中学生である彼らの心情に寄り添えるのか、描けるのか、という疑問があった。

 ところが、この映画を見ながら、こうしたいじめは、遥か昔の自分の中学生時代にも目にした(止められなかった)。つまり普遍的なものなのだと改めて気付かされた。そしてラストの謎解きで、その意はさらに強まった。そうか、これは根源的な問題を描いているのだから、年齢や世代はあまり関係ないのだと。

 もちろん、ファンタジーだから、設定やストーリー展開に「ん?」というところはあるのだが、謎解きミステリーとして見てもなかなか面白い。

 また、“扉”や“時”が重要な役割を果たす新海誠監督の『すずめの戸締まり』との共通性にも興味深いものがあった。

 モチーフはグリム兄弟の『狼と七匹の子ヤギ』にあるのだろうが、ラストでは、『時をかける少女』や、小山ゆうの『チェンジ』という漫画のことを思い出した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『SCREEN(スクリーン) 2023年2月号「未体験ゾーンの映画たち2023」

2022-12-25 11:08:48 | SCREEN スクリーン

 『SCREEN(スクリーン)』 2023年2月号に、「未体験ゾーンの映画たち2023」全32作の紹介記事掲載。表紙は『インディ・ジョーンズと 運命のダイヤル』。

https://www.amazon.co.jp/dp/B00APKFODI/ref=sr

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『カンフースタントマン 龍虎武師』

2022-12-25 10:29:44 | 新作映画を見てみた

『カンフースタントマン 龍虎武師』(2022.12.24.オンライン試写)

 香港映画界が生み出した数々のアクション作品を支えたスタントマンと、彼らが活躍した年代を振り返るドキュメンタリー映画。

 1970年代から90年代にかけて、数多くのアクション映画を生み出し、世界中に大きな影響を与えた香港映画。膨大な数の作品群を支えたのは、危険も顧みず、すさまじいアクションシーンで代役を務めた武師(スタントマン)たちの存在だった。

 証言するのは、武師たちのほか、サモ・ハン、ドニー・イェン、そして『帰って来たドラゴン』(74)で倉田保昭と死闘を繰り広げた懐かしのブルース・リャン、また、監督のユエン・ウーピン、ツイ・ハーク、アンドリュー・ラウら。

 映画の本編シーンや、メイキングなどのアーカイブ映像を交えながら、彼らの仕事ぶりや、「ブルース・リーが香港映画のアクションに革命を起こしたこと」「ジャッキー・チェンのアクションコメディーがトレンドになったこと」などが語られていく。

 「サモハンが『やれ』と言うんだからやるしかない」「あいつは8階から落ちたから、俺は9階から落ちてやる」といった、武師たちの心意気はあっぱれだが、「金はかなりもうかったが、全て酒と賭けに消えた」というような、「宵越しの銭は持たない」的な生き方が、香港返還後、カンフー映画が衰退した今となっては寂しさを感じさせる。

 彼らは高齢化と後継者不足にも悩まされているし、製作会社のゴールデン・ハーベストやショウ・ブラザーズも、今は様変わりしているのだ。

 この映画がユニークなのは、「昔はよかった」と、過去の栄光を懐かしむばかりではなく、現在と未来をきちんと見つめている点だろう。そこから、香港映画の光と影が浮かび上がってくる。


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「BSシネマ」『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』

2022-12-25 06:22:47 | ブラウン管の映画館

『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』(20)

北海道に暮らすネコの大家族の映像
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7b1de389eb159b21672728b429a99535

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「NHKプラス」「まんが道 青春編」「三谷幸喜の言葉~「鎌倉殿の13人」の作り方~」

2022-12-24 11:57:06 | テレビ

 最近、「NHKプラス」で、見落とした番組や再放送ものをよく見るようになった。

 銀河テレビ小説「まんが道 青春編」(87)全15話。脚本・布施博一

 主人公・満賀道雄(竹本孝之)と才野茂(長江健次)が、手塚治虫(江守徹)に連れられて見に行ったのが、ジョン・ヒューストン監督の『アスファルト・ジャングル』(50)、満賀が、トキワ荘に住む美人姉妹の妹(森高千里)と一緒に見たのが、エリア・カザン監督、ジェームズ・ディーン主演の『エデンの東』(55)だった。ちょっと時系列が合わないが、まあ、ご愛敬ということで。

 石ノ森章太郎(息子の小野寺丈)が、自身のコマを無視した大胆な構図を「シネマスコープ漫画」と表現するシーンもあった。江守が好演する手塚は、ドラマ内では遥かに年上だが、実際は、藤子不二雄たちと5、6歳しか違わない。

藤子不二雄A『まんが道』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2cc091fc375428c194137fe16e6ea169


「三谷幸喜の言葉~「鎌倉殿の13人」の作り方~」

 「鎌倉殿の13人」の脚本を書く際に、『仁義なき戦い』(73)『ゴッドファーザー』(72)を参考にしたとのこと。確かに、主人公の北条義時(小栗旬)は、『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)と通じるところがあると思っていた。ちなみに、大江広元(栗原英雄)の役割は、トム・ヘイゲン(ロバート・デュバル)だそうだ。なるほど。

 また、戦の天才(それ以外は…)の源義経(菅田将暉)は、『パットン大戦車軍団』(70)の主人公・ジョージ・S・パットン将軍(ジョージ・C・スコット)を参考にしたのだという。こういう裏話は面白い。

【インタビュー】「鎌倉殿の13人」三谷幸喜(前編)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c7da9b5b02ac56987b16cbf63b901204

【インタビュー】「鎌倉殿の13人」三谷幸喜(後編)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/00c5fbc4696195e085877a8224fa89f5

「鎌倉殿の13人」と「草燃える」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d1c36450859482d0466097e0b3b053b3

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『バビロン』

2022-12-24 08:17:49 | 新作映画を見てみた

『バビロン』(2022.12.20.TOHOシネマズ日比谷.完成披露試写会)

 『ラ・ラ・ランド』(16)のデイミアン・チャゼル監督が、オリジナル脚本を書き、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く189分の大作。音楽は『ラ・ラ・ランド』のジャスティン・ハーウィッツが担当。

 チャゼル監督は、『セッション』(14)ではジャズ、『ラ・ラ・ランド』ではロサンゼルスへの偏愛ぶりを示したが、それはこの映画からもうかがえる。そういう意味でも、これは明らかな“チャゼル印の映画”だといえる。

 夢を抱いてハリウッドへやって来たメキシコ人の青年マニー・トレス(ディエゴ・カルバ)と、スターを目指す新進女優のネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)。彼らの人生は、サイレント映画の大スター・ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)との出会いによって大きく動き出す。

 恐れ知らずで美しいネリーは、自由奔放な個性で観客を魅了し、スターへの階段を駆け上がっていく。一方、マニーはジャックに世話係として雇われた後、大手映画会社のプロデューサーとなる。だが、『ジャズ・シンガー』(27)を皮切りに、トーキーが映画に革命を起こし、彼らの運命が狂い始める。

 ジャックのモデルはジョン・ギルバート、同じくネリーはクララ・ボウか。パーティのシーンではロスコー・アーバックルのような男も出てくる。

 主役の3人に、トランペットの名手シドニー・バルマー(ジョバン・アデポ)、中国系女優のレディ・フェイ・ズー(リー・ジュン・リー)、ゴシップコラムニストのエリノア・セント・ジョン(ジーン・スマート)らが絡む。

 そのほか、トビー・マグワイア、サマラ・ウィービング、オリビア・ワイルド、エリック・ロバーツ、ルーカス・ハース、キャサリン・ウォーターストン、「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーらが顔を見せる。

 オープニングで描かれる狂乱のパーティや、パワフルで狂気に満ちた映画製作が、やがて映画業界に求められた社会性やヘイズ・コード(自主規制条項)の導入によって、様変わりしていく様子は、例えば、西部開拓時代の無法、無秩序がもたらしたエネルギーが、やがて文明や法の波によって終息していくさまとも重なる。

 そして、この映画が描いたサイレントからトーキーへと移行する際の混乱を見ながら、何だか『雨に唄えば』(52)のパロディみたいだと思っていたら、この曲が先に歌われた『ハリウッド・レヴィユー』(29)と思われる映画の製作風景が映り、ラストでちゃんと本物の『雨に唄えば』が出てきた。しかもすこぶる感動的にだ。

 それによって、3時間余り描かれてきた、一種グロテスクな狂乱や狂気の話が、全て帳消しになって、何だかいい話を見たような気分になる。これはちょっとずるい感じもする。

 とはいえ、3時間余が、思いの外、長く感じられなかったのも事実。やはりチャゼル監督の力量はたいしたものがあるといえるのかもしれない。


『雨に唄えば』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3f26b055ce96f109becb1499e4e4b622


『20世紀の映画』から

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』『フラッグ・デイ 父を想う日』

2022-12-23 08:01:07 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
世界中を魅了した人気歌手の生涯とは『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
ショーン・ペン版『男はつらいよ』『フラッグ・デイ 父を想う日』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1364959&preview=true

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする