私は風邪をひいたカエルの声の持ち主です。
人の悪口を言わない、優しかった祖母でさえも、私のことを「働き者で、成績も良く、明眸皓歯だけど、声の悪いのが玉に傷。」と言っていましたので、筋金入りの悪声なんだろうと思います。
小学校五年生の時、夕鶴の劇で悪声の為、何の役も貰えなかった私は母に「何でこんな声に生んだの?」と悪態をつきました。
母は悲しそうな顔をして、「手で作るのなら、どんなにも丁寧に作ってあげたかったんだけど..」と答えました。
音大に進学した高校の同級生は、「人間の声ではない。」とまで言いました。
私の願いは、只一つ普通の声でした。
せめて子供には同じ声の苦労だけはさせたくないと、お見合いで、その声に一聞き惚れした男性と二回しか会わないで、結婚し、三人の人並みの声の子を授かりました。
子供たちが話し始めると、夫ほどの美声ではないけれど、私ほどのガラガラ声じゃないと判って、本当に一安心。
筑波山麓男性合唱団を結成することもなく
三人の息子達は結婚し、独立しました。
次男の結婚式で、夫は得意の歌声で、『君といつまでも』を花嫁さんとデュエットして大喝采。瞬間最大スター、会場中感動の渦でした。
私のカエルの声を聞いてみたくなったでしょう?