死化粧
昨年の八月三日は、義母の葬儀だった。
暑くて、長い一日だった。
家族葬。一日葬。
お通夜も無くて慌ただしい一日だった。
長患いでやせ細り、かっての威勢も虚栄も無くした独りの老婆の最期はそれは淋しいものだった。
葬儀屋の安置所に横たわる義母を見て、正直足がすくんだ。
義兄から『倒れた』と連絡があってから、何度も見舞っていたので、ある程度覚悟はしていた。
両親を始め死人の顔も何度も見て、死体の冷たさも覚えている。
亡き父も母も祖母も皆穏やかな顔をしていた。
九十九才で大往生した伯母は、笑顔を浮かべ満ち足りた顔に見えた。
しかしながら、義母のそれは違った。
口はあけたまま。
何か言いたそう。
偶々死化粧を施してくれている葬儀屋さんの女性に
Г口を閉じなくても良いのですか?」と尋ねると、
Гいつも口を開けっ放しで、寝ていたから、それで良い。」と義兄に言われたとのこと…
思いやりの無さに唖然としてしまった。
入院中は、ずっとパジャマを着て寝ていたから、死に装束はパジャマでと言う人はいないと思う。
いくらГおかあさんは人を受け入れない人だから。」と平然と公言している義兄たちでも、
あんまりだと思います……
女ですもの
せめて死出の旅立ち位
綺麗にしてあげたかった。
冥福を祈ります 合掌