
最近、道の向かい合わせで白壁を綺麗にされた通りがある。共に由緒ある和風の家であるが、壁の内側はうかがい知れない。そんな通りも、昼間は綺麗になった、くらいの思いで通り過ぎている。先日、その白壁のそばを所用があって暗くなってから通った。街灯の灯りが白壁に反射しているが、それがなければ真っ暗な通りとなる。
この通りはかっての城下町の一筋ということもあり、その時代はこの様な光景だったと思わせる。時代劇なら人通りのない暗がり、後ろから太刀を浴びせられるかもしれない。全巻読んだ「池波正太郎 鬼平犯科帳」の一場面を思い出しヤリとしたものを感じる。鬼平は実在の人物で、寛政の改革による経済不安から増加した犯罪を、足と耳と勘で凶悪犯を一網打尽に捕らえる痛快さが受けた。
鬼平は火付盗賊改方長官・長谷川平蔵。物語を読むうち、鬼平は凶悪犯を捕らえるだけでなく部下や密偵への接し方に、いまでいう人材育成として教えられるものを感じていた。難しいことではない、厳しく優しく思いやるという3つの事だった。監視カメラやスマホの無い時代、情報を収集に走る部下や密偵への言葉からそう感じていた。
現在のような各種カメラや写真、通信手段もない時代の犯罪へ立ち向かうには強い人の絆か生み出す力しかなかった。今、未解明で不可解な案件がいくつもさまよっている。記憶を呼び戻し鬼平に劣ることのない解決を図って欲しい。そんなことを想いながら歩いていると、カープカープの応援歌が開け広げた窓から聞こえ、鬼平が消えた。