a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

母のこと

2007-09-20 15:07:28 | 東京公演
広渡常敏追悼 東京演劇アンサンブル公演

母 -おふくろ―
作=ベルトルト・ブレヒト
演出=入江洋佑
音楽=林光


写真

■公演日程  2007年10月5日(金)~14日(日)
月・土・日=14時開演 火~金=19時開演
■会場  ブレヒトの芝居小屋 (西武新宿線「武蔵関駅」北口より6分)
■料金  当日5,000円 前売(一般)4,500円 前売(学生)3,500円
10/9(火)のみハーフチケットデー=2,500円均一
■上演予定時間 2時間40分(休憩あり)
■全席自由 発売順に整理券発行

今年の目玉公演の後編。
ブレヒト作品です。
上演されたのは30年くらい前になるので、
ほぼ新作の構えとして考えています。
昨年、ブレヒトの本拠地でブレヒト・作の『ガリレイの生涯』を上演し、
けっこうな好評をいただき、
うわさがうわさを呼び、
今年の夏には韓国のフェスティバルに呼ばれ、
これまたブレヒト・作の『セチュアンの善人』を上演しました。

劇団としても、
待ちに待った“新作”としてのブレヒト。
難解でもあり、それでいて、
ブレヒトのやさしさを思うと、
とても人間的であり、
良く理解できる部分が多かったりします。

舞台はコミュニズムへと傾倒し、
革命前夜のロシア。
ゴーリキーの『母』をモチーフにした戯曲。
革命運動の中心にいる息子が逮捕される。
しかし、
なぜ彼が捕まらなければならないのか。
彼の“母”は、そのことを考える。
人間が当たり前のことを考え、
当たり前のことを話し、
当たり前のことを使用とした。
ただ、それだけのことが、
なぜ罪になってしまうのか。
“母”は考える。
自分が何も知らないことを知る。

無知であることが、どんなにか、
人間らしさを失わせてしまうというのか。
そのことを知る。
ただ、息子のために。
“母”は学び、人と話をする。
そんな彼女は、いつしか運動の中心にいた。
ただ、“母”であることが、
彼女をそうさせた。

闘うことを望んだわけではない。
人間らしく生きることを模索した、
そんな“母”の物語。

さて、
タイトルがまさにど・ストレートの『おふくろ』。
うちの母も、
若干似たところがあったかな、
というのは褒めすぎかも知れませんが…。

今でこそ、「こども110番」なんて家が、
張り紙してあるけど、
ぼくが小学校に上がったときは、
通学路が子どもの足で30分以上はあったので、
心配だったようだ。
兄や姉が通いなれた道であったとはいえ、
幼稚園のような集団登校があったわけでもなく、
また、昼間働きに出ている母にとっては、
目の届かないところでの子どもの生活は、
心配事が絶えなかったのであろう。

当時、というか、生まれてから現在まで、
我が家は“かわさきおやこ劇場”という会員制の会に入っていた。
定期的に生の舞台を見ながら、
地域にサークルを作り、
日常的な子育てのことを中心に、
集団で考えていこうという会だ。
もちろん現在もあるし、
うちの劇団は毎年例会で取り上げてもらっている。
同じようなおやこ劇場(または子ども劇場)は、全国に700くらいある。
この“おやこ劇場”は、
子育て運動であり、地域運動であるのだが、
会員制の会であることで、
たくさんの親の目で、
たくさん子どもたちを見ていくことを実現していた。
ぼくにとって、
ここで出会った異年齢の友人たちは、
後々いろいろと影響を与えてくれた。

母は考えた。
ぼくの学校までの長い道のり、
通学路に、会員を増やすということを。
そして、それを実現していった。
彼女にとって、
それが子どもの“安全確保”につながる、
ということなのだろう。
通学路にある会員の家には、
次の例会の舞台のポスターが貼ってあったりして、
そこに住む大人たちとも顔なじみになっていった。

あの当時、
通学路にあった大人の目は、
ぼくにとっては、
ちょっと見張られているなぁ、
という気がしていた。

しかし、
大人になった今思うと、
それが母の愛情であったと気づく。
あのときにはわからなかった。

例えば、毎日の食事にしたって、
まずいもの食わせてやろうとは思わないだろう。
きっと、自分の子どもにはおいしいものを食べさせてあげたい。
そう思って、作っているに違いない。
しかし、子どもにとっては、
好きだとか、嫌いだとか、の対象でしかなく、
その親の愛情を知るには、
ずっと、ずっと、後のことになるだろう。
それでも、与え続けるのが母の愛なのだ。

今度の芝居作りに向かいながら、
そんなことを考えた。
さ、みなさん、
ぜひ足を運んでくださいねるんるん
たくさんの林光さんのソングもあるし、自信作です!
ブレヒト恐るべし、です。

写真
加納さんを交えての、衣裳の打ち合わせ中

写真

写真
基本舞台作ってます。