空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「女性手帳」

2013-05-08 20:35:35 | ノート
 例によって講義用論点メモ。



 誤変換は問わないこととして―育児休業を3年まで延長するのは,そう悪い案ではないだろう(絶対に3年間休ませる,というならそれどこの共産主義国家?という話だが)。
 …財源が未定というのは問題だが,「お前が言うな」ということは思わないこともない。

日経新聞 働く女性に手厚い支援 首相「育児休業3年」表明 2013/4/18 21:40

 休業の在り方についても,複数の在り方が認められればなおよい(ああ,週に2-4コマでも担ってもらえたら,非常勤講師さんをお願いするコマ数も減るのになあとか,我が職場の事例について思わんこともない)。

朝日新聞 首相の「育休3年」要請に波紋 女性ら「復職不安」 2013年4月30日11時38分

 こちらによれば,別に法制度を変えようというものではなく―「安倍首相が19日に表明した「育休3年」要請のポイントは二つ。一つは、いまの法制度を改正するつもりはなく、あくまでも企業に独自制度の充実を求めたにすぎないこと。二つ目は、正確には「育休を3年とれる制度」の導入すら求めていないことだ」。

 …民間でできることは民間で~♪

森雅子・少子化担当相も25日、国会答弁で「まるまる3年育休ではない」と述べ、短時間勤務などを合わせて3年という趣旨と説明した

 すると,1年半の間をまるっきり休み,その後,1年半かけてゆっくり助走,フルタイムに備える―という使い方が可能ではある(少なくとも,想定できる)。

 また,いくら女性の労働資源をもっと活用しようという文脈で言われたからといって,新聞記事の論調が「女性に育児負担を増やそうとはけしからん!」一方っぽいのはどーかなーと思ったら―

NPO「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也副代表は、「(男性の育児参加が進まない)現状では女性の取得期間が延びるだけ」と話す

 …要は,『男性が育児休業とるわけないじゃん』という大前提を誰もかれもが暗黙のうちに認めたうえで,その点にろくろく言及せず,「女性にばかり負担を押し付けて!」と言っている模様。

 …確かに安倍首相の意図は,”女性に育児の負担を押し付ける”ことになるのではあろう。だけどそういう状況は,別に安倍首相ないし自民党ないしだれか政治団体の陰謀によってできているわけではなく,それなりには我々所個人の選択によっても,そうなっているのであって―

 その論点は拾っておかねばなるまい。
 とにかく,女性に三年育児休業をさせろという意図から出たものであろうとも,男性にも三年までの育児休業を認める結果にはなるわけだ。自由の拡大ではあるわけだ。

沖縄タイムス 社説[育休3年]先にやることがある 2013年4月21日 09時49分

 先にやることがある,と言って「しかし政府の規制改革会議で進むのは、保育士数や施設面積など保育サービスに関する基準の緩和である。保育士の給与の低さにつながる国の保育単価や、市町村の保育園増設の足かせにもなっている国基準保育料の高さなど、「保育の質」を担保する議論には踏み込んでいない

 そう,保育所の質を保証し,改善する方策に力を注ぐべきだとまっとうなことを指摘はする。

そもそも「育休3年」の根っこには、子どもは3歳まで母親の手元で育てるべきだという古い家族観がある。親子で一緒に過ごす時間はもちろん大切だが、大事なのは、子どもが安心して過ごせる環境。保育のプロが愛情を持って「抱っこ」すれば健やかに育つ

 とはいえ,保父さん/保母さん一人当たり何人の赤ちゃん/子供を担当するやら。つまり親がまるっきり見るより,1/nの時間しか割り振れないわけだ(親の独善で育てるよりいいじゃないか!という反論があり得るが,そのために父親/母親学級等々の拡充も,多様な選択肢の中の一つとして言及すべきということで済むか)。

東京新聞 社説 育休3年 男性の育児参加が先だ 2013年4月25日

女性の活力は経済成長には欠かせない。待機児童解消のため保育所整備を加速させる姿勢は間違っていない。ただ、政府の規制改革会議で検討されている施設面積を狭くしたり、保育士の配置を減らすなどの基準緩和は問題である。子どもの詰め込みや保育の質低下を招く

 云々。「先にやるべきこと」その他の問題点を短い言葉でスペースの許す限り詰め込んでみた感じか。さすが文章の出来はよりよい。男性の育児参加に言及した後とはいえ(男性が主として労働に従事し育児費用を稼ぐのだという価値観を反映する可能性が大いにあるとはいえ)「長時間労働の是正や、非正規社員の待遇改善など男性の働き方の変革も必要である」とあって,職がないとか,あっても給料が足りないとか,まあさしあたり育児問題を論じる場で直接正面から語るのは困難な事情に付言しておくあたりも,文章作成の上で配慮がなされているなと思わされる。

 さて



 この場合の「プレッシャー」の中身としては,「『産めよ,増えよ,地に満ちよ』という[国家]権力の意志」であろうか。もちろん,そんな手帳が発給された時点で権力の行使ではあるわけだが。

 但し,することで権力が見えることもあれば,しないことで権力が実際上働いちゃう可能性もまたあるわけで,その点にいろいろ注意が必要か。

 そもそも「子供を様々な理由で産めない女性」にも,何通りもあるだろうと。

・出生時には男性として生まれたことで妊娠の機能を持たない女性
・(生まれつき,ないし事故・大病等によって)虚弱であって妊娠出産に身体的に耐えない女性
・何らかの精神的事情によって妊娠出産に至らない,または至れない女性

 上から順に妊娠出産困難であるかな。

 或いは,単純に高齢である場合もあり(うちの研究室出身の某姐御とか),夫婦であって夫の何らかの事情により妊娠しかねる場合,ないし時間の経過によってそういう状態に立ち至った場合もある。

 5分考えただけでも,この程度のバリエーションは出てくるんであって,それを一言に「子供を様々な理由で産めない女性」と済ますのは,その時点ですでに暴力的なことである可能性がある(※左翼思想脳)。

 また,上掲某議員氏の意見をそのまま押し通せば,”子供を様々な理由で産みたい女性”への情報提供がないがしろになりかねない。というか,今現在がそうだから,情報提供をやらせろ,というのが安倍首相ないし彼の見解を支持するひとびとの見解であろうか。

 この場合,上掲某議員の意見は,それなりに割と数多い”子供を様々な理由で産みたい女性”たちの(潜在的な?)ニーズを,”それに応じる「子供を様々な理由で産めない女性」への圧力になるので,[そもそも]ダメ”となって―
 ―これはこれで権力の行使ではあるよなと,そんな話(※左翼思想脳)。

 尤も,”子供を様々な理由で産みたい女性”には既に十二分な情報提供がなされているのだというのなら,話は別ですが。まあ男性手帳のほーが急務じゃないのかっていう気もせんでもない。

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