京都大学総長の式辞に引用されたボブ・ディランの楽曲は著作権法上の「引用」にあたり、著作権料は発生しない。日本国内で著作権管理にあたるJASRACがそれ以外の見解を採ったことはなく、著作権料を要求したこともない。それと異なる報道は誤報。本日の理事会で披露され、報道発表した。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) 2017年5月24日
弁護士ドットコム JASRAC会見「京大HP歌詞は引用。請求しない」…16年度徴収額1118億円 2017年05月24日 15時53分
「「JASRAC」(日本音楽著作権協会)の浅石道夫理事長は5月24日、「JASRACは引用として判断している。(著作権使用料を)請求はしない」と明言した」
「浅石理事長は、JASRACが使用料を請求したという一部報道を完全否定。歌詞の利用目的の確認は、新聞などに対しても行なっている「日常業務」で、困惑していることを強調した」
この記事で興味ある点は:
「JASRAC広報によると、今回の件では、外部から京大HPでの歌詞利用について「問題ないのか」という連絡があったという。JASRACでは歌詞付き楽譜のダウンロード販売などについて使用料を徴収しており、公平性や公衆送信権(読者に対し、コピペ、拡散を推奨するものなのかどうか)の観点から、京都大学に掲載目的の確認を行なったそうだ」
ネット警察(※自任)が通報し、まあ権利者の権利を守る権利者団体としてはそりゃまあ、ちょっと動くかなあという話だと。
この点では:
駅員が水飲んだり消防団が訓練帰りに飯屋に寄る事すら嫌悪するような、善意から来る不寛容な空気というのが日本には確かに有って、確実にそれらは日本を窮屈にしている。 治安維持法とか憲兵や特高なんか実は大したこと無くて、真に恐ろしいのはそういった不寛容の空気だと考えている。 https://t.co/9IGcTuh8tl
— 衛生兵 (@combatmedic) 2017年5月19日
こういうお言葉を注意したい。相互監視社会は、別に国家機関が進めなくとも、”善意”で地獄への道を舗装しちゃうひとたちがめいっぱいがんばっちゃうことで成立したりするってわけだ。
でもって、”すんません、どういう引用ですかね”という問い合わせをしたことについてメディアが―
京都新聞 式辞に歌詞引用、著作権料を 京大HP掲載でJASRAC 【 2017年05月19日 05時00分 】
「昨年ノーベル文学賞を受賞した米歌手ボブ・ディランさんの歌の一節を、京都大の山極寿一総長が取りあげた4月の入学式の式辞について、日本音楽著作権協会(JASRAC)がウェブ上に掲載した分の使用料を京大に請求していることが18日、関係者への取材で分かった」
と、はっきり「使用料を京大に請求している」としている。
「京大によると、約1週間前にJASRAC関係者から、許諾の手続きを求める電話があった。回答期限は示されなかったという」
ここでも「許諾の手続きを求める」と、実務的なお話のように見える。
そう、責任を取るべきは「飛ばし」をやった京都新聞です。このニュースのせいで余計なデマがさらに広がったのだから。大迷惑ですよ。 https://t.co/HTufjUwOFm
— 長坂憲道 (超合金) (@v_accordion) 2017年5月24日
…京都新聞さんがちょっと勇み足をだいぶ踏み出したようなのだ。
朝日新聞 京大総長が式辞に歌詞 JASRAC「使用料必要かも」 2017年5月19日20時15分
「JASRACによると、外部からの指摘で式辞の掲載を把握し、5月上旬、担当者が京大に電話で事実関係を確認したという。広報担当者は「まず利用状況を問い合わせる趣旨で電話をした。今後については当事者間のことなので回答を控えたい」としている」
「京大の広報担当者は「使用料発生の可能性については聞いたが、具体的な請求金額などは聞いておらず、JASRACからさらに連絡がない限りは対応しない」としている」
朝日さんの報道だと、一般的な確認のお電話だったように見える(でまあ、実際、そんなもんだったわけだ)
会見の場では「京都大学に請求していないとしても、そのような印象を世間に与えたのは事実。その責任をどう考えるのか」という趣旨の、愚かな質問も出た。間違った報道をした者の責任を、なぜ肩代わりせねばならないのか。少なくとも、誤報の被害者に対してマスコミが聴くことではなかろう。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) 2017年5月24日
これは興味深い。直接には、Jasracはこう考えているはずだ―と”忖度”して報道した者が悪い。しかし、”忖度させた”者の責任を問うわけだ。この構造をそのまま当てはめれば、例の森友問題にせよ、加計問題にせよ、”忖度”したのは官僚、”忖度させた”のは安倍総理、ということで安倍総理は確実に悪い―と報道してきたもののようであり、
つまりこの場合、”JASRACが(普段の振る舞いから・個々人の心の中にある極悪JASRAC像が)忖度させたんだから、当然JASRACには一般的な責任がある”と報道するのは、報道機関の最近の論理として一貫している。なおこの場合、忖度した官僚を免罪しないと、今回の件で当該報道機関の罪を免罪できない。
そういえば
時事 蓮舫氏「内閣総辞職に値」=安倍首相に説明要求-加計文書 (2017/05/18-12:37)
「菅義偉官房長官は会見で、文書の内容について「そういう事実はない。首相からもその指示は一切ない」と重ねて否定。「出元も相変わらず分からない。信ぴょう性も定かでないことには変わりはない」と指摘」
まあ、そりゃそう言うよねえ。しかし
「これに対し、蓮舫氏は「資料の真贋(しんがん)、実際に存在していたかを明らかにする説明責任は政府にある」と主張した」
ヲイちょっと待て、の一言ではないか。裏取りの責務は、提出側にはないというのか。それなら怪文書出し放題じゃないか。これでは規律が失われる。
同様に、『もしも誤報をしたという結果になったら、そんな誤解をさせた誰かのほうが悪い』では、もう妄想ソース全開にしても問題なくなるわけで…自殺行為だよなあ、メディアの。
大丈夫か?朝日新聞と民進党。第二の「永田メール事件」になりはしないか?朝刊で、加計学園に関連し「文科省が、内閣府から「総理のご意向だと聞いている」などと言われたとする記録を文書にしていた」との記事。私も文書を手に入れたが、省庁の文書として本来あるべき作成期日と作成部局が入ってない pic.twitter.com/3GKm1VxI0e
— 和田 政宗 (@wadamasamune) 2017年5月17日
それは先日の森友事件の経験から「ならない」と予想することもできる。
また、メディアの雰囲気がこのとおりなら、永田氏を死なせたような突っ込みはもはやない、とも予想可能だ。なにしろ、”忖度させたほう”が悪いんだ、どーもこのところの感じだと。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます