空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

極めて典型的、定型的な作文に接して

2015-01-27 20:10:57 | Weblog



 上掲twitterの評を見て以下の記事を読んだが、典型的な、定型的な左派的文章であって、一気に読める状態に仕上げられているのは見事である。文章を書きなれている人であるなあと思わされる。

The Huffington Post 最優先すべきは命だ 森達也 投稿日: 2015年01月26日 09時57分 JST 更新: 2015年01月26日 13時43分 JST

国益が大好きな日本のメディア関係者やジャーナリストや識者たちに言いたい。国益とは国の利益。でも確認するけれど国益の最優先は、国民の生命のはずだよね。ならばその国益が明らかに犯されようとしている今、なぜこれを放置し続けた政権を批判しないのだろう。なぜ見過ごしているのだろう。なぜ本気にさせないのだろう

「総体としての国民」の生命を護ることと、個々の国民の生命を護ることと、日本語の名詞に複数・単数の区別が薄いこと、抽象概念と具象概念とを適宜、作文の上で(半ば意図的に)混同することと、そういうレトリックを使っている。極めて典型的、定型的な作文。オリジナリティという点では全く採るべきところがない(それだけに、まとめとしては有用である)。

 注意しなければならない。
 この議論では、「現に生存している日本人であるがゆえに、絶対的な保護を日本国に要求できる」ことになる―それをしない、していないがために安倍首相を愚物とするのであるから。

 この事件には明らかな犯罪行為がある。が、それを度外視して、「そこに現に日本人が生きているのだ。日本国はそれを最大限の力を以て保護せねばならない」と主張することになる。

 では例えば、記憶の中にある限り、最も愚劣・陋劣・卑劣・猛悪・極悪・…な犯罪を思い起こそう。コンクリ事件でもドラえもんロープ事件でもアベック事件でもかまわない。ところでそれらの下手人は(まあまず)日本人であろう。それが摘発されたとしよう。その際、―上掲の説に従えば、現に生きている日本人であるそれら下手人たちの生命は最大限尊重されるべきだということになる(いやまあそれはそうなんだが)。さらに進んで、絶対的に保護されるべきものと見做されるようになる―具体的に言って、死刑は絶対禁止ということになる。
 理屈としては理解できるが、感情的に非常に許しがたい、ということになる。

 犯罪者は罰せられなければならない、しかし日本人であれば絶対に保護されなければならない―このコンフリクトを調停する一案は、「犯罪者は日本人ではない(だから処罰してかまわない)」であろう。で、現にそういう主張が2ch等々で開陳されているわけだ。

 ―あからさまなバックラッシュである。

 
 …某氏の文章はするすると読めてしまう、ソレほどまでに見事な作文であって、まるで精巧な自動生成プログラムでもつかったかのようだ。だけれど、それだけに、むしろ非人間的であって―さらには、却って非個性的であって―、従来の典型的左派の功罪を非常に明瞭に見せ付けてもいる。

 この状態でも固定客は確保できるし、一定の新規の顧客も確保できる。しかし、やはり、限界は明らかなのである。
 昨日辺りに記事になった、共産党の新人議員の安倍首相批判ツィートの件も類似の問題の水準を示す。再生産は可能なのだが、拡大再生産には至らない。アンチを再生産する回路も安定的に機能するので、構造全体は(揺らぎはするが)変化しない。

 私としては、こうした永劫回帰状態の不毛な旧来の”言論”市場をではなく、これらをすり抜ける方向を目指すとよいと思うものなのだが。
 …だから学生には右翼扱いされたり左翼扱いされたりする。左右双方に批判的だから。

WSJ 邦人人質問題で再び集団的自衛権論議 By ALEXANDER MARTIN 2015 年 1 月 27 日 09:49 JST

安倍政権が軍事力行使での自由裁量を拡大するための法整備を用意する中で、イスラム過激組織「イスラム国」による日本人人質問題が世界の安全保障における日本の姿勢をめぐる論議で一定の役割を果たすのは確実なようだ。安倍政権は26日に始まった通常国会で、日本が自国の安全を脅かす地域紛争で米国などの同盟国を支援する「集団的自衛」に参加したり、海外の日本人を救出したりできるようにする法案を提出する計画だ

 まあ提出したところでそうそうモノが変わるわけはないからなあ。
 というか、便乗してあれこれ言うのははしたないのは与党側(ないし首相)も同じであって、集団的自衛権の本命は半島有事・台湾海峡有事対策だろうに。そこを言わずにごまかすのは、いやいろいろ仕方ない点はあろうが、それにつれて反対派の人々の議論も拡散してさらに議論も世論も混迷するばかりになりはしないか。

産経IZA シリア拘束の湯川遥菜氏 事業失敗、妻の死、自殺未遂…渡航の背景を父が激白 2014.8.23 08:00

産経 【イスラム国殺害脅迫】民主まるで“学級崩壊”…岡田氏「政府後押し」も首相批判続々 共産は“鶴の一声”で鎮火 2015.1.27 08:24

 さすが共産党はまだしも統制が取れているなあと、産経が賞賛するという。

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