空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

JASRACのご方針とネットの反応の件(2)

2017-02-06 12:00:00 | ノート
ASRACのご方針とネットの反応の件(2017-02-04)」の続き。

 どうも人は「JASRACは(悪辣な手を使って)徴収した金銭を著作権者に支払っていない」と怒るものらしい。しかしたとえば:

ダ・ヴィンチニュース 『残酷な天使のテーゼ』作詞家、3億7000万失った結婚生活を『破婚』とトークイベントで暴露! 2016.8.6 文=ガンガーラ田津美

『残酷な天使のテーゼ』。ついでに印税も6億ほどがっつり稼いだ眠子先生だったが、旅先のトルコで絨毯屋の店先に座っていたイアン・ソープ似の若造(18歳年下)と「面白いネタになるから」と結婚してしまったところ、エヴァ・マネーの3億が溶け、7000万円の借金までも背負う羽目に

 …一曲6億。この場合、「印税」とは著作権使用料の意味だろう。「ほおら、”ちゃんと”配分されれば、作曲家ってこんなにもうかるものなんだ! 僕の隣の家の某作曲家が「食えない」と言っているのは…」と思う向きもあるのだろうが:

Q:印税生活ってできるんですか? A:無理です、無理。 1 Jan 2017

印税の計算式はすごくシンプルで、発行部数×定価×印税率となります
ほとんどの本は初版で終わるのが実態なので、1冊の本から得られる収益は概ね数十万円程度です
「夢を叶えるゾウ」のように200万部なんて行った日には、億単位の収入になるわけですね。これはもう、かなり夢叶っちゃいます。ここまで行けば「印税生活」も可能ですが、一握り中の一握りですね……
いわゆるベストセラー作家であっても、「印税生活」の実現は困難なのです

 そういうわけで,毎年1冊,10万部を売り上げるようなヒットを打ち続ければ,毎年700万~800万くらいはいけそうだが,まあ諦めた方がいいんじゃない? 新書売ってウハウハ,というのは,極一部の大学教員がようやくそこに達するかどうか。おそらく,一生に1,2度のボーナスとでも思った方がいい。つまり本業を別に持て。

 他方,洒落もなにもなく,超大金持ちもいるわけであり:

ガジェット通信 宇多田ヒカルさんがJASRACの方針に反対?「(学校の授業では)著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」 DATE:2017.02.04 22:00 BY:Taka



 これを引きつつ,記事を書いている。

宇多田さんのツイートは、この方針に反発したものと見られる

 公教育では無料だわなあ,しかし「音楽教室」は営利事業だ,という基本的認識の問題はまあいい。

 さらに:

新世紀エヴァンゲリオンの主題歌『残酷な天使のテーゼ』などの作品で知られる作詞家の及川眠子さんをはじめ、さまざまなアーティストが今回のJASRACの方針にSNS等で反対意見を表明するなどしており大きな話題となっている

 さてここで先ほどの「ダ・ヴィンチニュース」の内容を思い出してみたりしよう。「「面白いネタになるから」と結婚」して遊べるような大金持ちが,全国数千か所の傘下教室を持つ大企業に与する見解だそうで,これは「ブルジョワの野合」だとかと言いはしないだろうか。

 なにしろ,JASRACがカネを儲ければ,それは(まー手間賃を除けば)分配に回るのである。おそらくは,まずは公平な,資本主義の理屈にしたがった分配方法で。




 この場合,「平等」の意味内容にもよる:



 平等,一律,公平―その概念の理解,共有の如何が問われているということに。




 JASRACとしては”せやから,公平に分配しとるんじゃ。せやけど,ない袖は振れん。振れるようにさせてくれ,言うたら,極悪人あつかいですわ”と言いたいだろう。

 さて,ブルジョワジーの方々について。
 もし”私はもう,十分もらったよ”という認識があるのであれば,職業ギルドの利害関心から言って,”だから,私の取り分は末端の連中に分配してよ。びんぼーな仲間を助けるのは,同胞としての義務だよね”とでもいかないだろうか。そうならず,なぜ職業ギルドの取り分増加に反対するのか。そうでなければ,配分方法の変更要求には向かわないのだろうか。

 ど末端の創作者たちは,まあ社会的認知もなにもなく,”底辺に呻吟している”ものと思われる。それでもなお創作をするのは,それが己の自己表現であり,人生であるからだろう。この辺,売れない学者・就職のない学者と同様なのだと思うが,どうだろう。

 でまあ,出版・発表したものが,誰も見ない,評価しない,ないものとして扱われる,研究費の割り当てもない,一部”大学者”にだけ社会的評価も研究費も学会誌の割り当てページも…集中するとでもなったら,どうだろう。

 滅多に曲を使ってもらえない創作者たちは,売れない学者と同じようなものではないか。職業的に食っていくことはできない,社会的認知が低いから,その創作物も人目にふれず,消え去って行く定めにみえる…。

 さて,こちらでは,先生によっては科研費審査の際,”無職のひとに高い点数を付ける”と明言する人もいるのだとか。つまりまあ,就職してカネもらってるなら,まずはそこから出せ,という見解。
 僕もわりと同意するが,まあ自分の申請書が落とされたら,むかっとはする。うん。しかし一応,理屈に納得もする。正義の表現,学術の多様性の維持に役に立つな,それ。

 さあ,では,多額の印税を得ている方々は,どうなのだろう?

 その才能で超多額のお金を貰えるようになって,うん,たしかにその取り分は正当に認められたものだ。
 まあ,「音楽振興のために」その金銭を寄付しろとは,まあそりゃひでえわな。しかし「音楽振興のために行動する」場合,また別の見解もありえるのではないか,と,そう思うのだが。

 ということで,この場合,「同業者間の連帯」が問われるのだ。「どういう分配が公平なのだろう?」と。再配分の様式が問われてもいるのだ。資本主義の理屈に従った分配,これはこれで正義ではあり,正面切って否定するのは難だ。だが―?

 ともあれ,直接徴収に関わる者,この場合はJASRACが極めてむっかつくのは,取られる側としてはまあ,自然な感情ではある。まあ,だから同様に,公務員にはむっかつくわけである。

 だが,公務員たたきで遊んでる人たちが多数いるのはさておき,国政・税金の使い方については,如何様にすれば公平か,望ましいかという多様な議論が一部は行われているではないか。JASRAC問題についても同様の方向性を望みたい。

 っていうか,これも結構,いい教材になるなあ。

Togetter JASRACの外部理事を務める東大・玉井克哉教授(知的財産法)による大手音楽教室から著作権料徴収についてのQ&A

 ってえわけで,広報力にも優れる大企業が弱小権利者に対する抑圧を「いままでこれで「うまく」やれてきたんだから,いーじゃん」と続けようとしている図と解釈できるわけである。これこそ,大企業の暴虐だとか,ブルジョワの組織的攻撃とか,プロレタリアートよ団結せよという話だろう。なので,この問題に対してどういう態度をとるかは,ちょっとメルクマールになりそうではある。

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