松本市波田、上高地へ向かう国道158号線沿いの一画に、大正14年(1925)に建設された木造の「旧波多村役場」があります。
この建物を見つけたのは全くの偶然、旧梓川村から安曇村に向かう途中の事です。時間的に余裕がないを承知で、急遽車を停めて貰い、デジカメ片手に走りました😅
心に残りながらも、御亭主殿に車で待たれるとゆっくり眺めるわけにもいかず・・。そうして心残りのまま6年の歳月が流れ、再びこの建物との再会を果たすチャンスが巡って来たのです。
波多村役場が建てられたのは大正14年(1925)。「波田町誌」によれば、7月1日に上棟式が行なわれ多くの村民が集まり、145俵もの投げ餅がふるまわれたとあります。また、相撲大会や花火大会も催され、我が村のハイカラな役場の誕生に村は湧きかえりました。建築費用は19,015円92銭。今の価格で換算すると約6千万円くらいでしょうか。
建物は玄関ポーチの上がバルコニーになっており、塔の頂部と切妻屋根の棟端には、西欧の教会建築などによくみられる「フィニアル」と呼ばれる飾りが取り付けられています。
さらに波田町誌によれば、昭和31年(1956)、波田村農協の事業拡大に際し役場庁舎を移転して土地を農協に貸すことになり、曳屋による移転が行われ、その際に一階部分を増築して面積を広げ、玄関上部の切妻破風やバルコニーを撤去。昭和48年に町政が施行され波田町役場となり、1990年に新庁舎の建設が始まり、旧庁舎は再び東側の現在地に移築されました。また移築に当たっては、古写真に基づいて竣工時の姿に戻され、その後は公民館として使われていましたが、2017年に公民館が移転し、旧庁舎の建物はほとんど使われなくなりました。
その後の経緯がどうなったのか知る由もありませんが、願わくば今もあの場所で、あのモダンで優しい姿のまま存在してくれることを願ってやみません。
隣りにあった「松本市消防団第43分団」・・・多分、旧町役場に合わせて作られたんだろうと思う姿。
庁舎の敷地内に建立されていた「忠魂碑」
訪問日:2010年10月17日&2016年4月22日
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