守田です。(20140717 19:30)
パレスチナが大変なことになっていますが、マスコミ報道では何かイスラエルとパレスチナ側のハマスなどが対等な戦争を行っているかのような書き方もしています。
とくにハマスが「ロケット弾」を撃つことと、イスラエルがF16からミサイルを撃ち込むことがどっちもどっちのように書かれてしまう場合も多い。しかし両者はあまりに大きな差があります。蟻とゾウほども違います。
この決定的な差異を踏まえないで「ロケット弾へも抗議を」という方もおられますが、僕はそれは違うと思います。それではイスラエルの行っている戦争犯罪が見えなくなってしまう。イスラエルはそれを狙ってもいます。
ではこの事態をどう捉えたらいいのか。まず大事なのは、イスラエルの暴力がどれほどすさまじいものであるかをパレスチナに生きる人々の目線から捉えていくことです。
しかもそれは長期化された封鎖の中で構造化されてきている。暗殺などが常態化されてもいるのです。今もハマスなど、パレスチナ側の武器をもって抵抗しようとしている人々は一様に暗殺の危機にさらされており、地下に潜行しているそうです。
ところがイスラエル軍は「それなら住民に恐怖を植えつけてやる」と称して、一般市民そのものを軍事的ターゲットにした攻撃を繰り返しているのです。まさしく非戦闘員の保護を無視した悪辣な戦争犯罪です。
私たちは、現場のリアリティを知らずに「ロケット弾」と「ミサイル」という単語を対比させてはならないと思うのです。まずは現地でどんなことが行われいてるかを知らなくてはいけない。
そのための文献を探していたところ、知人がパレスチナを取材してきたジャーナリスト、土井敏邦(どいとしくに)さんが、パレスチナに住まうラジ・スラーニさんにスカイプで緊急インタビューをした記事を送ってくれました。
それを読んで、これは今すぐ、できるだけたくさんの人とシェアする必要があると感じました。7月10日に行われたものです。
全体として、報道からは伝わってこないパレスチナの人々から見えるイスラエルの姿が彷彿としてくるのですが、僕が読んでいてとくに身体が慄然としたのは、今回の攻撃の特殊性を捉えた次のやりとりです。((下)に載せているもの)
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(Q・2012年 のガザ攻撃と今回では何か違いがありますか)
空爆のレベルも質も違います。今回はF16、ドロン(無人飛行機)、アッパッチ・ヘリコプター、地対地ミサイル などあらゆる武器を用いています。
また標的もガザの指導者たちの大半の家を攻撃しています。すでに125軒のハマス指導者たちの家が破壊されました。ハマス指導者たちは誰もがその家を破壊され、さらに死傷者が出ています。
もちろん2012年のガザ攻撃もひどいものでした。しかし今回は住民を心底からの 恐怖に陥らせています。前回はイスラエルも一般市民の被害を避けようと注意を払っているようでした。
しかし今回は誰もが この攻撃から自由にはなれないのです。自分の家に留まっていたとしても、比較的静かな地区に住んでいても、家が空爆の衝撃で揺れるのです。家の天井が自分の頭上に崩れ落ちるのではと感じるほどです。非常に危険な状況です。
この状況は前例はありません。こんな事態に直面したことがありません。
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ガザにはこれまでも本当にひどい殺人戦闘が行われてきており、僕の心の中にもなんとなく「またイスラエルの戦争犯罪が繰り返されている」という感じもあったのですが、今回、ラジ・スラーニさんはこう語っている。
「この状況は前例はありません。こんな事態に直面したことがありません。」他ではこうも言っています。「私は今60歳ですが、こんなことは私の人生の中で一度も経験したことがありません。」
・・・イスラエルの暴力に繰り返しさらされてきたパレスチナ住人が「前例がない」事態が起こっていると言っているのです。本当にとんでもないことが起こっているし、もっと恐ろしいことに向かっているのかもしれない。
なんというか、今まで以上に、必死になってイスラエルの殺人行為を世界中で批判しぬかないと、もっと膨大な死者が発生してしまうのではないかという恐ろしい予感すら湧いてきます。
だからこそ、事態の悪化を食い止めるために、まずはこうしたパレスチナの側の実感を私たちがシェアすることが大切です。そのためについ一週間前に行われたこのインタビュー記事をお読み下さい。
ちなみにインタビューが行われた7月10日時点での死者数は87人。16日で225人に拡大してしまっています・・・。
土井敏邦さんとはどんな方なのかも記しておきます。まずはご自身のページをご紹介しておきます。
http://doi-toshikuni.net/j/index.html
ここを見ると、そもそもラジ・スラー二さんとは、土井さんが実行委員長になって、この7月に日本にお招きしようとしていた方であることが分かります。しかしエジプト・ガザ国境の封鎖でラジさんが出国できず断念されています。
また土井さんが、福島県飯舘村に入って映画を作ったりされてきたこと、他にも素晴らしいドキュメンタリーを作ってきたことが分かります。
土井敏邦さんのウキペディアでの紹介も示しておきます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E4%BA%95%E6%95%8F%E9%82%A6
「1985年以来、断続的に延べ5年以上、イスラエルとその占領地(パレスチナ)の難民キャンプや村に滞在して取材を続けている」とありますが、次のような仕事も紹介されています。
「1994年から1998年まで韓国の元慰安婦たちの現状を追い、NHKのETV特集「『分かち合い(ナヌム)の家』のハルモニたち」、NHK・BS特集「戦争・心の傷の記憶」で元慰安婦、姜徳景の半生を描いたドキュメンタリーを制作。」
全体として、世界のさまざまな地域に赴き、素晴らしい取材を重ねてきた方だと感じました。
僕自身はあらゆる暴力に反対なので、パレスチナ側からの「ロケット弾」の発射もやめて欲しいとも思っています。「何百倍返しされるやん」とかも思います。
しかし繰り返しますが、そう単純に指摘することは、パレスチナの側とイスラエルの側が対等にやりあっているような歪められた文脈の中では、イスラエルの戦争犯罪をものすごく軽く扱うことにしかつながらないと思います。
ラジ・スラーニさんは「ロケット弾発射の意義」も論じています。一つは誇りの問題です。そして誇りに支えられた屈しない決意性が、イスラエルの攻撃の意図を砕くという解釈です。今、読み取るべきは、パレスチナの側にこうした思いもあるのだということです。
同時に、イスラエルの白昼堂々行われてきた殺人攻撃の繰り返しを止められていない世界の側にいる僕に、パレスチナ側の抵抗を批判する資格があるのかという点も考えなくてはいけないと思います。
それではも僕は「ロケット弾」の使用を止めて欲しいと思いますし、すべての人が暴力の行使からも解放されて欲しいと心から思います。
でもそれを語ったら「だったら先に、あのイスラエルの戦争犯罪の繰り返しを止めろよ」と言われるでしょう。それには「おっしゃる通りです」と返すしかないし、行動で応えるしかないです。
そしてその上で「イスラエルの戦争犯罪を食い止めるために頑張るので、あなたの側も、例え正義の暴力であっても、それを使うことを止めることを考えてください」と言うべきなのでしょう。というか僕はそう言いたいです。
ともあれ今はイスラエルの暴力を止めるために本当に奮闘しないといけない。攻撃がもっとひどい形に拡大することを避けるために、世界中の正義と平和を愛する人々と連携した行動を重ねたいです。
ぜひみなさん、以下のインタビュー記事をお読み下さい!
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「子どもたちの眼に羞恥ではなく、“誇り”をみたい」
―ラジ・スラーニ氏・インタビュー (7月10日)―(上)
土井敏邦
(Q・今のガザの状況を教えてください)
この新たな「戦争」は、3人のユダヤ人入植者が誘拐され殺されたことのきっかですが、イスラエルは事件があったヨルダン川西岸のヘブロン市だけではなく、西岸全体またガザまで攻撃の対象としたのです。
西岸では大量にハマスの指導者たちを逮捕し、ヘブロン市とその周辺の村々に外出禁止令を敷き、家を一軒一軒捜査し始めました。
また住民の家々を急襲し、住民を脅迫し侮辱し、ハマスの指導者たちの家屋を破壊しました。さらに以前ガザで誘拐されたイスラエル兵(シャリート)との捕虜交換で釈放された元政治犯のパレスチナ人を再び逮捕しました。
その数は数百人に及びます。イスラエル軍はパレスチナ自治政府の治安警察も無視して、少しでも不審だと思ったら、たとえ自治政府の人間でも射殺します。彼らはフリーハンドなのです。
3人のイスラエル人少年の誘拐・殺害後はイスラエルの中に怒りが渦巻き、パレスチナ人少年が犠牲になりました。モハマド・アブクデール(16歳) です。それがまた西岸で怒りと暴力の新たな波を引き起こしたのです。
また同時に、西岸の事件とはまったく 関係のないガザ地区でも、イスラエルは繰り返し、ハマスの指導者たちを暗殺すると脅迫しました。それも公にです。そしてイスラエルの世論は復讐を要求したのです。
イスラエルは10日前(6月30日)からF16やドロン(無人飛行機)、アパッチ・ヘリコプターなどによってガザの攻撃を開始しました。いわゆる「クリーンな爆撃」と彼らは言います。
それはガザ南端のラファから北端のベイトハヌンまで空爆し、個々人を標的して住民を殺すことはせず、ただ住民の間に恐怖心を植えつけるというのです。そしてガザ全体には安全圏はないと感じさせるようというのです。
しかしこの「戦争」の最初に、イスラエル軍は6人のハマス武装メンバーを殺害しました。つまりもはや「クリーン」ではないのです。ハマスはそれを受け入れることができません。イスラエルは自らの宣言を破ったのです。
それでパレスチナ人側は報復しています。つまりイスラエルが挑発し、この「戦争」は始まったのです。
それがこの「戦争」の引き金なので す。イスラエルは当初から、ハマスが反撃を開始することを望んでいました。それに応戦し降伏させようと考えていたのです。
その空爆のやり方は、気が狂ったように猛烈に激しい爆撃です。ガザ全体を爆撃し、標的にした者は確実に殺害し、破壊する。イスラエルは新たな作戦を作り上げ、12時間の間に24人を殺害し、220人を負傷させました。
また85軒の家を破壊しました。その作戦は、 例えば私、ラジ・スラーニがハマスがイスラム聖戦のリーダーであったとすれば、私がそこにいようといまいと、私の家を爆撃するのです。F16によってです。
ガザ中部のハンユニスのアブ・カワレ一家がその一例です。5人の子どもを含む7人を殺害し、28人を負傷させました。
ベイトハヌンのハマッド一家も同様に、近所の男性がコーヒーを飲んでいて、傍にハマッドの妻と母親がその部屋にいました。そのとき空爆され、孫たちを含め6人が死亡したのです。
イスラエル軍は住民、家族を破壊し抹殺しようとしています。破壊とテロです。軍事的な攻撃目標などないのです。これまで犠牲者の中にハマスやイスラム聖戦のメンバーは6人から多くても10人ほどです。
他の犠牲者は一般市民で、その数は今のところ87人です。その数は時間ごとに増えています。武装組織のメンバーたちの大半が地下にもぐって表には出てきません。
だからイスラエル軍は彼らの家、農園、インフラを狙って攻撃するのです。そこに人がいようがいまいが構わないのです。
住民の殺戮と負傷によって、住民に恐怖を植え付けようとしています。それが、200万人が暮らすこの360平方キロの広さしかない狭いガザ地区で起こっているのです。
ここは世界でも最も人口密度の高い地域です。イスラエルにはF16やアパッチ・ヘリコプターがあり武装艦船を持っています。それを用いて24時間、砲爆撃を繰り返しているのです。
それだけでは満足せず、ある地域では地対地ミサイルまで用いています。誰も満足に眠ることができません。夜に動くものは、車でもモーターバイクでもすべて爆撃されます。即座に、です。
夜の間、ガザをマヒ状態にしようとしています。日中でもガザでは普通の車を使うことが困難です。私は今60歳ですが、こんなことは私の人生の中で一度も経験したことがありません。
この「戦争」、爆撃の前からガザ地区はとても特殊な状況に置かれていました。これまで2度もイスラエルの激しい攻撃にさらされ、多くの建物は再建されてはいません。
また封鎖によって、ガザは経済的にも社会的にも窒息状態に置かれています。その封鎖の影響はあらゆるところに及んでいます。
ハマスとファタハの連立政府が成立したばかりですが、ヨルダン川西岸から新たな政府要人がガザへ来て業務を引き継ぐこともできません。ガザ地区は非常にひどい状況下にあるのです。
現在、イスラエル軍の地上侵攻についての噂が大きくなっています。イスラエルには大きな政治的な意見の分裂があります。ネタニヤフは気が狂っているかのようです。
もしイスラエル軍がガザ地区に侵攻してきたら、多くのイスラエル兵が殺されます。今は空爆によって、ガザはまさに 「象が侵入した庭」のような状況です。しかしイスラエル軍がガザに侵攻したら、何千人という兵士が殺されます。
一方、ガザ住民は少なくとも1万から1万5千人が殺されることが推定されます。イスラエル軍はガザに侵入すると流砂の蟻地獄のような状況になります。
だからイスラエルの軍や 諜報部門は侵攻を望んでいないのですが、政府が圧力を加えています。しかもまったく仲介者がいません。
ハマスはエジプト政権に、「我われはあなた方と話をしたくない。あなた方はイスラエルの側に立っていて、我われはあなた方を信用しない」 と言っている。
そのハマスの指導層の大半は地下に隠れています。彼らが表に出てくれば、即座に暗殺されるでしょう。
この事態は短期間では終わらず、長期化すると私は思います。とても困難で、血にまみれたものになるでしょう。何日かではなく、何週間も続きます。
ガザの住民はまだ抵抗を支持しています。ハマスに対する不平・不満はなく、イスラエルと彼らがやっていることに対して激しい怒りを抱いています。またイスラエルを支持するアメリカやヨーロッパなどの立場と対応に怒っています。
2008-2009年、また2012年のガザ攻撃で犯した罪によってもイスラエルは何の罰も受けなかったので、自分たちは免罪され、やりたいことは何でも自由に行動できると思っている、と多くのガザ住民は感じています。
ここで起こっていることは簡単です。 ここは法が支配する世界ではなく、ジャングルの掟(おきて)が支配している世界なのです。一般市民を保護する基本的で原則的な法さえ欠落しているのです。
私は今国際的な組織と接触をとっています。彼らは住民が標的にされ、多くの人が殺され、負傷していること、ガザ全体に医療品が不足していること、また病気や負 傷した人が封鎖によって治療にエジプト側に出られないことをとても心配しています。
あらゆるガザ住民が不安に震えていま す。まったく展望が見えないからです。イスラエルはここでは「全能」です。住民は苦しみ泣いています。
それは道理にかなったことです。私は最悪の事態が起こることを恐れています。時間が経つごとに、前よりさらに事態は悪化し、今日は前日よりもひどい状態になっています。
(Q・夜は動くものが標的にされる中、救急車は動けるのですか)
爆撃は四六時中続いています。24時間ずっとです。夜に動く物体や人は全て爆撃されます。
(Q・もし夜に負傷した場合、どうやって負傷者を病院に運ぶのですか)
とても難しい状況です。動くのがとても困難なのです。昨夜、ハンユニスの海岸で爆撃がありました。住民はただカフェに座っていただけです。電気もなく、テレビも見られない状態でした。
それに対してイスラエル軍は海上の艦船から砲撃したのです。5人が死亡し、20人が負傷しました。病院に駆け込むことができなかったからです。
その1人は脚が切断され、本人がその切断された脚を抱えてジャーナリストたちに見せたのです。とても困難な状況です。まったくイスラエルはガザ住民の被害など気にかけない。女性や子どものこともまったく気にかけないのです。
続く