明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1186)災害対策のソフト面からの強化は民主主義の促進につながる(12日は新島会館に)-2

2015年12月08日 09時30分00秒 | 「原発からの命の守り方」発売中です!

守田です。(20151208 09:30)

昨日の続きです。三回に渡った滋賀県での取り組みに関する感想の続きです。

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近江八幡での「くらしとせいじカフェ」もとても印象的でした。ここには社民党の福島みずほさん、共産党の宮本たけしさん、民主党の徳永ひさしさんなど国会議員と国会経験者が参加されていて、さまざまな話題が論議されました。
最後の方で僕が原子力災害対策についての自論と兵庫県篠山市での実践を紹介し、同じような取り組みを各党で行って欲しいと要望したところ、社民党の福島みずほさんが、国が行っている避難計画のひどさを指摘し、避難なんかできないと言われるのです。
ちなみに福島さんのお連れ合いの海渡弁護士は数々の原発訴訟を担われてきた方です。福島さん自身も各地の原発の視察を行われています。僕など足元にも及ばないほど、原発の現場を周ってきて原発に反対して来られた方です。

しかしその福島さんですら、国の行っている災害対策のひどさの指摘(それ自身は実に的確ですが)にとどまってしまい、それでは民衆の側がどうすべきかについては触れられない。「避難は無理」と断言される。
僕は「避難はできないとは言わないで下さい。それでは実際の事故の時に多くの人が避難しなくなってしまう。現実には原発事故はどう進展するか分からない。もちろん最悪の場合は膨大な人が急性死することもありえる。
だから完璧な避難計画などできないと言うのは正しいけれども、実際に避難できないかどうかとは違う。福島原発事故では時間的余裕があった。だからとどうなるか分からないから可能性にかけて必死に逃げ出すことが必要です」と述べました。

これに対して、くらしとせいじカフェin長浜では、民主党の田島一成議員と僕が発話させていただき、僕の話の後に、彦根や長浜からの避難のリアリティも討論になったのですが、田島さんは彦根からなら南下しないで関が原方面に逃げた方が良いと言う。
南下した場合、湖岸に近い道路を通ることになるわけですが、しかし放射能は琵琶湖の上をすぐに渡ってきてしまうので琵琶湖の西側の湖西と東側の湖東の間には距離はないと思った方がいい。だから彦根にいるなら自分なら関ケ原方面に逃げると言うのです。
他にも田島さんはご自分がいろいろに考えておられる事故想定と、対処方針を語られていました。田島さんとは「くらしとせいじカフェ」を何度もご一緒してきたのですが、こうしたリアルな想定を深められていることがなんだか嬉しかったです。

僕はここにキモがあると思うのです。原子力災害対策のみならず、国や行政の行う災害対策はとかくハードに傾きがちです。典型的には風水害対策では一級河川の多くの堤防を増強し、100年に一度の洪水に耐えられるようにするという。
しかしそれには莫大な費用がかかるし、実は非常に遅々としてしか進展していないのが実情なのです。このままでは国中の河川を改修するのに1000年かかってしまいます。100年に一度の洪水をふせぐために1000年かかる。矛盾が大きすぎます。
しかも大事なのは、そうやって整備しても、100年に一度の規模を越える洪水が来たら、もう打つ手なしなのだということです。概してハードは予算がかかる上に、想定が越えられたらまったく役に立たなくなってしまう。

これに対して僕が言うソフトとは人の頭脳のことです。災害に対する民衆の能動性を高めるのです。そのために事前の学習を増やし、判断力をみんなでアップしていく。いざというときにそれぞれが自力でやれることを増やしておく。
概してソフト強化はハード強化に比べてお金がかかりません。その上、人間の知恵を高めておけば、想定が破られてもまだまだ対応する余地があります。人間には柔軟な応用力があるからです。
そのために災害対策は国や行政がやるものという従来のパラダイムを転換し、国や行政がやるべき範疇は残しつつも、民衆の側、人間の側の力をアップさせることに力を注ぐのです。そうすれば災害・事件などあらゆることに適用でき、費用対効果も抜群です。

ところが原子力災害対策の場合、ソフトの強化に踏み込めば、原発と放射能の危険性を多くの人々があまねく知ってしまうことになるため、原発推進側によって避けられてきたのです。このことに着目すべきです。
反対に、民衆が下から原子力災害対策を強化すれば、自ずと隠されてきた真実も明るみに出てくる。放射能から身を守る知識を増やす中でこそ、原発の危険性がよりしっかりと把握されるのです。しかも身を守る術が軸ですから能動的に学べます。
その意味で、この取り組みは民主主義を強化するものでもあること、民衆の能動性を磨くものであることを強く訴えたいです。

新著にはこうしたことをたくさん盛り込みましたが、この間の滋賀県への関わりの中で、僕自身、さらに確信を深める思いがしました。
そもそも、しがの方たちが作った「くらしとせいじカフェ」というキャッチ自身がこのことを表しています。ここには「政治は政治家がするもの」という、いつの間にかできあがってしまった硬い想念をスルっと抜けていくモメントがあります。
「くらしのばでせいじをかんがえようよ」という柔らかい呼びかけがある。「想念を打破せよ」なんて怖い言い方はしない。「カフェでせいじをはなそう」というわけです。その場で「放射能がきたらどっちに逃げる?」なんてがやがや語り合ったわけです。

さてすでに何度かお伝えしましたが、新著の出版を祝う会を12日に友人たちが催してくれます。京都市内の新島会館で午後2時から行われます。
もちろん僕も30分ほどスピーチすることになっていて、何を語ろうか考えていましたが、いま述べてきたような話をもっと煮詰めて話そうかなと考えています。
原発からの命の守り方をみんなで高めあげ、その中で民主主義を育てていきたい。ラディカルなデモクラシーの発揚へとつなげていきたいと思うのです。

お近くの方、ぜひ出版を祝う会にお越しください。
来られない方も、原子力災害のみならず、あらゆる災害に対する私たちの能動性を一緒に磨いていきましょう。
そのために新著をぜひお手に取ってください。自信を持ってお勧めします!

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守田敏也さん「原発からの命の守り方」(海象社)出版を祝う会
https://www.facebook.com/events/178060139201488/

守田敏也さんは、2011年の東日本大震災と福島原発事故の直後から、ブログ「明日に向けて」(http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011)にて、原発事故や放射能の情報を発信し続けてきました。
被災地や日本各地に避難した方々を訪ね、励まし、人と人の関係をつなげながら、その活動はトルコ、台湾、ドイツにもおよび、放射能による被曝からの身の守り方、各地の実践に根ざした原子力災害対策のパイオニアとして奔走されています。 

10月末に出版された『原発からの命の守り方』(海象社)には4年半の活動の成果と、「原発」からだけでなくさまざまな災害から命を守るための具体的な知恵がどっさり盛り込まれています。
守田さんがつないできた多くの人たちが集い、この大切な一冊の出版を祝う場を持ちたいと思います。守田さんには、台湾訪問などの最新情報を加え、渾身の記念講演をお願いしています。
明日に向けて、師走の午後にみんなで出会い楽しみましょう。お誘いあわせのうえ、ぜひお越しください。

日時:12月12日(土)午後2時~4時頃
場所:新島会館 別館 京都市上京区寺町丸太町上がる
http://www.doshisha-alumni.gr.jp/access/access.html
会費:1000円(おやつ付)

主催:守田敏也さんの出版を祝う仲間たち
連絡先:090-3704-3640(蒔田)

出席される方は蒔田までご一報ください。
こちらへ⇒bosko@gaia.eonet.ne.jp


 

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