明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1933)玄海原発3号機(プルサーマル)の再稼働に強く抗議します!

2020年11月25日 22時30分00秒 | 明日に向けて(1901~2100)

守田です(20201125 22:30)

玄海原発3号機が特重施設なしに再稼働

11月21日に九州電力が、定期点検で停止中だった玄海原発3号機を起動させました。同日午後11時41分に臨界に達し、23日午後2時に発電を再開しました。
これで日本で現在稼働中の原発は、玄海4号機、川内1号機と合わせて3基になりました。ただし川内1号も玄海3号も営業運転を開始するのは12月中旬なので、実際に営業的に電気を供給しているのはいまも玄海4号機1基です。
その玄海4号機も、3号機が営業運転に復帰するや、停止して定期点検に入ります。稼働原発がわずかに1~2基という状態がまだしばらく続きます。


玄海3号機再稼働を報じるNHK NEWS WEB

ただし今回の再稼働も問題だらけ。実に腹立たしいです。とくに強調したいのは玄海3号機も4号機も、特定重大事故等対処施設なしに動いていることです。
この施設は2013年に施行された新規制基準によって設置が義務付けられたもの。しかし2018年まで5年も猶予を与えられたのでした。ところがどの電力会社も期限内に作りませんでした。
そうしたら原子力規制委員会が、この施設の工事認可を受けてから5年まで期限を再延長してしまいました。それでもなお電力会社が設置をせず、本年3月川内1号機、5月2号機、8月高浜3号機、10月4号機が停まったのでした。

では玄海原発はどうなのかというと、最も期限が来るのが遅いのです。3号機が2022年8月24日、4号機が2022年9月13日です。
それまでこの特定重大事故等対処施設を作らなくて稼働できることになっているのですが、これはもう詐欺みたいなものです。福島原発事故の教訓を踏まえるとかいいながら、事故から10年以上も新設備を作らないのですから。
しかも川内1号機の再稼働の時に指摘したように、この設備の中核をなす免震重要棟に関して、九州電力が新規制基準に合格して以降に、約束を反故にし、作らないことにしてしまいました。酷さが二重、三重に重なっています。


特重施設の設置期限 守田作成


玄海3号機はプルサーマルを行っておりより危険

玄海3号機の危険性は、プルサーマルが行われていることにもあります。プルサーマルとはウラン燃料にプルトニウムを混合させたMOX燃料を使った運転のこと。より核分裂性の高いプルトニウムを使用するのですから、危険性が高くなります。
もともと日本にある原発はすべてウラン燃料で運転するように設計されており、プルトニウムを混ぜた燃料の使用など想定されてなかったです。それなのに混ぜてしまった。
何故なのか。おもにMOX燃料を使うはずだった高速増殖炉もんじゅが、何年経っても稼働せず、プルトニウムがどんどんあまり、MOX燃料も使用先を失ったままになってしまって、追い詰められたからです。


本来はここで核燃料サイクルの破たんを明らかにし、プルトニウム使用を断念すべきでした。しかしそうなると「使用済み燃料」がプルトニウムを取り出す財からただの廃棄物に変わってしまう。資産価値もなくなってしまう。
それをふせぐために無理やり、形だけでもプルトニウムを使っている事実を作るために編み出されたのが、プルサーマルでした。
実際に行われ始めたのは、柏崎刈羽3号機(28体)、浜岡4号機(88体)、高浜3、4号機(48体)、伊方3号機(21体)、玄海3号機(36体)です。カッコ内はそれぞれの原発が持っているMOX燃料集合体の数です。


各原発で保有するMOX燃料の数 ブログ「社会科学者の批評」より

この中でトップを切ったのが玄海3号機。2009年12月のことでした。しかし2010年12月から定期点検に入ったのち、福島原発事故が起こって動かせなくなり、2018年3月にほぼ7年ぶりに再稼働しました。
しかしすぐに腐食した配管から蒸気漏れを起こしました。このとき当時の九電瓜生社長は「何があるか分からないと言っていたが現実になってしまい残念だ」と語り、批判を浴びたのですが、その後も、稼働を続けてきています。
玄海3号機は、もともとも設計思想にないより核分裂性の強いプルトニウムの使用という無茶をしています。それでいて特定重大事故等対処施設、いや実際には重大事故等対処施設と呼ばれるべきものも完成させていない。酷い状態です。


rkb毎日放送より

使用済みMOX燃料は狭い燃料プールに置くしかなくとても危険

九電によると今回の定期点検で、こうして無茶に使ってきたMOX燃料のうち16体が炉内から取りだされ、燃料プールにいれられたそうなのですがこれも大問題!
一つにMOX燃料は通常の核燃料より核分裂性が高いため、使用後の熱もよりたくさん発するのです。燃料を冷やすためのプールに、より高い負担をかけるのです。
しかも通常の核燃料は六ケ所村の再処理工場に運び出し、再処理にまわすことになっています。実際には六ケ所村がいつまでたっても完成しないので、再処理にまわせず、燃料プールがどんどん埋まってしまっています。


SAGATVより

この上に燃料プ―ルに入れられた使用済みMOX燃料は、実は処理方法が決まってない。もちろん処理施設もない。となるとただでさえ手狭になった燃料プールに置き続けるしかなくなる。熱量が高いのに。
九州電力はこの状態を見越し、玄海原発3号機の燃料プールのリラッキングをこの12月から始めようとしています。
リラッキングとはラックを作り直すこと。要するに核燃料を入れる間隔を狭くして、プールの容量を増やすことですが、これまた詐欺のようなもの。


SAGATVより

なぜなら使用済み核燃料に含まれるウランとプルト二ウムなどの核物質は、ある一定の量が集まると臨界状態になり、爆発してしまう危険性をもっているからです。
だからプールでは冷やすだけでなく、核燃料を間隔をあけて保持することが必要であり、そのためにラックが作られているのですが、なんとそれを狭めるという。
しかもそんなところにより熱量が高くて、よりプルトニウムも入っている使用済みMOX燃料がすでに入れられている。なんだかもう滅茶苦茶です。

問題はすべて核燃料サイクルが、もんじゅが廃炉になり、六ケ所村再処理工場もいつまでも完成できず、完全に失敗しているのに、「生きているふりをしている」ことの無理から生じています。
それが何重にも危険性を大きくしているのです。玄海3号機の稼働はあまりにも危険。すぐに停めよと訴え続けましょう。

#玄海原発3号機 #原発再稼働反対 #プルサーマル #MOX燃料 #リラッキング

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明日に向けて(1932)資本主義は暴力の広がりの中で登場し市民革命という暴力で政治支配を確立した(われわれはどこからどこへ行くのか-3)

2020年11月25日 14時30分00秒 | 明日に向けて(1901~2100)

守田です(20201125 14:30)

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」の考察の続きです。
今回は資本主義の成立から市民革命までを俯瞰します。

商業圏が暴力的に広がっていった

資本主義にいたる過程で、大きな社会的作用を及ぼしたのが大航海時代だったことを前回見ました。
この時代は羅針盤の登場で航海がより遠くまでできるうようになって、商業圏が一気に拡大していくとともに、火薬の登場によって武力が飛躍的に大きくなり、暴力が全面開花しました。
船には大砲がすえられ、大きな海戦が何度も起こりました。資本主義には、その発生からして大きな暴力性が宿っていたことを見ておく必要があります。


レパントの海戦(1571年) オスマン帝国対教皇・ベネチア・スペイン連合の戦い


アルマダの海戦(1588年) イングランド対スペインの戦い 海戦では火力が勝敗のカギを握っていた

それでも資本主義時代の前まで、商人たちは自分たちで商品を作っているわけではなく、あるところのものを商品として、違うところに運んでいるに過ぎませんでした。
生産活動は商品経済の外側で行われており、資本主義はそこには及んでいませんでした。
生産はそれまでの社会構造の中で行われており、商品交換は共同体と共同体の間でおこなわれているにすぎませんでした。


商品交換が私有意識、個人意識を促進した

しかし商品交換の急速な進展は、共同体内部に変化をもたらせはじめました。それまで世界の多くの地域で、モノとは人や社会に縁のあるもので簡単に交換できませんでしたが、それが急速に変えられていったのです。
例えば日本の中世の場合、モノは縁を断ちきらないと他者に渡すことができませんでした。それで聖なる場である市場に投げ込んで縁を切り、やっと譲渡可能なものすることができました。
このため市場の「売り買い」を担うことができたのは、属性と縁を断っている聖者たち、禅宗の僧侶などでした。


日本中世については網野善彦氏の研究に詳しい

ところが商品交換が共同体内部に浸透し出すと、モノと人の縁が薄くなりだしました。これとともに資本主義社会以前には主流ではなかった「私有」概念もまた強まりだし、これともに近代に主流になる個人意識も生み出されました。
共同体から無縁で、切り離された「私物」であってはじめて「交換」の場に持ち込めるからですが、それは共同体的生産の中で「われら」として捉えられていた自分を「われ」と捉える意識をも強めたのでした。
こうした「私有」意識は、それまでは共有財産であり、誰ものもでもなく誰のものでもあった土地に対してももたらされはじめました。「土地所有」という、それまでは希薄だった意識が膨れていきました。

ルネ・デカルトの『方法序説』1637年「Cogito ergo sum=我思う、ゆえに我あり」など近代個人主義哲学の祖とも言われる考察が


イギリスで農村から人々が追い出された

こうした中で、歴史的にはスペインを打ち負かして制海権を得たイギリスの、ある特殊商品が大きな歴史的位置を持つこととなりました。
販路の拡大の中で毛織物の需要が高まりだし、原料の羊毛の社会的価値があがっていったのです。
これに目を付けたイギリスの領主たちが、羊をたくさん飼って羊毛を売るために、それまでの農地を囲い込んで住んでいた人々を追い出し、牧場に替え始めました。これを「囲い込み」=エンクロージャーといいます。

重要なのはそれまで領主によって土地と共にあるものとして統治されていた人々が、土地(生産手段)から切り離されたことでした。
これらの人々は行き場を失って都市に流入して貧民となりましたが、領主の持ち物でもあった封建的な人間関係からも自由になりました。
しかし耕す土地がない。封建関係からは自由でも生きていくための生産手段がない。都市にはこうした貧民が溢れるようになりました。


『ユートピア』の著者トマス・モアは、エンクロージャーを「羊が人間を食べている」と批判

資本主義の成立と市民革命

商取引の中で財を蓄積した人々はさらに羊を飼うだけでなく、自分たちで織物を作りはじめました。小さな工場(マニファクチャ―)が作られだしました。自らの財を資本として使いだしたこれらの人々が資本家階級(ブルジョアジー)を形成していきました。
資本家階級は、自らの資金で工場や工作機を買うとともに、都市に流入した生産手段のない人々を雇い入れ、これらの人々に生産を担わせ始めました。雇用という形で貧民の労働力を商品として買い、使いだしたのです。
こうして工場などの生産手段と、労働力を商品として購入し、生産を行って新たな商品を作り、それを売ってより大きな価値を得る仕組み=生産をも商品形態のうちに行う資本家的商品経済の仕組みができあがりました。

この際、生産手段を持たないがゆえに無産階級とも呼ばれた人々が、自らの労働力を売って生活していく労働者階級(プロレタリアート)となりました。
こうなってくると、かつて商人を保護しつつ支配もした王たちの力は、自ら商品を生産して自由な売り買いをはじめた人々=資本家階級(ブルジョアジー)に煙たがられだしました。
ブルジョアジーたちは、税の支払いを求める王の支配を否定して「自由主義」を掲げました。その力はやがて王政を倒す市民革命に結実しましたが、この際、プロレタリアートもブルジョアジーとともに王政を倒すために起ちあがりました。

こうして資本主義は旧制度を一掃して新時代を切り開きましたが、この市民革命もまた徹底した暴力の行使によってなされました。とくにフランスではギロチン台が登場して多くの王族の首がはねられました。
この点で資本主義にはその登場を促した大航海の時代も、政治権力を王達から奪取した「市民革命」の時代にも、強い暴力性がまとわりついてきたことをおさえる必要があります。


「民衆を導く自由の女神」ドラクロワ画 しかしフランス革命の暴力性から問い直す必要があるのでは?

#資本主義 #火薬の登場 #羅針盤 #商品交換 #方法序説 #エンクロージャー #マニファクチャア #ブルジョアジー #プロレタリアート #市民革命 #資本家階級 #労働者階級

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