明日に向けて

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明日に向けて(2286)新自由主義とはなにかー「やさしい経済の話ー社会的共通資本とは何か」-2、

2023年01月03日 21時30分00秒 | 明日に向けて(2201~2400)

守田です(20230103 21:30)

表題の連載の2回目をお届けします。以下の動画をご覧下さい。

なお全編は以下からご覧になれます。
https://youtu.be/z0GM1Mv4XGA

以下、動画の文字起こしです。


ポンド切り下げとフリードマン教授

ここで象徴的な人物を紹介します。
宇沢先生の一番の論敵であったミルトン・フリードマンという方です。
この方が現代社会をおおう新自由主義を言い出された方です。
「すべてを市場に任せよ」というので市場原理主義とも言われます。
ミルトン・フリードマンはノーベル賞もとっています。ばかばかしい・・・。

フリードマンを象徴する話があります。宇沢先生の言葉をそのまま読みます。
(『人間の経済』から引用)

「1965年6月頃のことだったと記憶しているが、ある日、ミルトン・フリードマン教授がおくれて昼の食事の席にやってきた。
その頃、経済学部の教授はファカルティ・クラブの決まったテーブルで一緒に食事をする慣わしだった。
フリードマン教授は興奮して真赤になって、席に着くなり、話しはじめた。
その日の朝、フリードマン教授はシカゴのコンチネンタル・イリノイ銀行に行って、国際担当のデスクに会って、英ポンドを一万ポンド空売りしたいと申し込んだというのである。
当時IMFが機能していて、固定為替相場がとられていた。一ドル360円、一英ポンド2ドル80セントの時代である。
それは、英ポンドの平価切り下げが間もなくおこなわれようとしているときだった。」

このこと、知らない方はおられますかね。
昔、1ドルは360円で固定だった。いつ変わったのかというと1971年です。
今は変動相場制です。実体がないんですよ。何が本当の信頼の基準なの?という状態です。

1ドル360円の時代は、ドルが中心で、世界の中でドルだけが金と交換できる「兌換券」でした。
ドルの後ろには金が控えていて、それがお金の価値を担保していたのですね。1ドル360円、1ポンド2ドル80セント。
ところが英ポンドがドルに対して少し高くなる。そんな時だったのです。また宇沢先生の文章を読みます。

「IMF理事会の決議事項は必ず一週間か二週間前にはリークされてしまうのが慣例で、そのときも英ポンドの平価切り下げはすでに時間の問題となっていた。
ただ、その切り下げ率のみが不確定であって、経済学部の同僚たちは切り下げ率について、賭をしていたほどであった。
実際にこのエピソードの一週間後に英ポンドが2ドル80セントから2ドル40セントに切り下げられることになった。」


空売りを行おうとしたフリードマン教授と拒否したコンチネンタル・イリノイ

この時にフリードマン教授は空売りをしようとしました。
これは株などの儲けのあり方の最悪の方法です。
空売りというのは元手がないのに儲けることで、自分が持ってないものを売るから「空売り」なのです。

1万ポンドの空売りするなら・・・まず1万ポンドを貸してもらう。
それをすぐに売ってドルにする。1ポンド2ドル80セントだから1万ポンドで2万8千ドルが手に入る。
次にポンドが切り下げられたら1万ポンドをドルで買う。すると2万4千ドルで買えて1万ポンドを返すことができる。それで手元に4千ドルが残る。
元手がないのに借りて売って、「4千ドル儲かった!めでたしめでたし!」-これが空売りの仕組みなのでした。

「それはさておき、『英ポンドを一万ポンド空売りしたい』というフリードマン教授の申し出を受けて、コンチネンタル・イリノイ銀行のデスクはこういったというのである。
No, we don't do that, because we are gentlemen.
外貨の空売りというような投機的行動は紳士のすることではないと。
そこで、フリードマン教授は激怒していった。
『資本主義の世界では、もうけを得る機会のあるときにもうけるのが紳士だ。もうける機会があるのにもうけようとしないのは紳士とはいえない』」

フリードマンはこういう考えの方で、それが新自由主義の根っこにあるものです。
この考えがいま世界を蔓延しているのです。本当にバカみたいなことです。


池袋リベロの倒産の例

例えば僕の本を出版をして下さった出版社の社長さんに聞いた話なのですが、ちょうどその本が出たときに、池袋のリベロという有名な本屋さんが倒産したのです。
なぜ倒産したのかというと、いまあちこちでコンビニなどが使っているバーコードシステムが流行っているそうです。
あのバーコードの読み取りで、モノを売買した瞬間に、全国で一番売れているものが何かが分かるのだそうです。

コンビニはそれに従って商品を並べるのですが、それがコンビニの中の本を売っているコーナーにも適用されている。
そうすると何が売れるのかというと「嫌韓本」とかが売れているそうです。
世の中がイライラしていてるので、誰かを激しく攻撃しているセンセーショナルな本が売れるわけです。
そのコンビニが使っているバーコードのシステムをリベロは入れてしまったのだそうです。

それまでは各フロアーに「書棚屋さん」と言う人がいたそうです。
たぶん僕に近いような人で、本を読みまくっているのです。それで「これは良い本だ」と思うものを並べるわけですよね。
だから僕なんかが「こんな本があったのか」と面白くなって、書店に行くようになるわけです。

ところがその方の首を切ると、その分でバイト二人とそのバーコードシステムが入れられたのだそうです。
それで瞬間的にリベロは売り上げを上げたそうです。
でも僕みたいな本好きがばかばかしくてリベロに行かなくなるわけです。
コンビニのように「嫌韓本」などが並んでいるのだったら行く必要がないわけです。
それで本当のコアなその書店のファンがどんどん離れていって、結局潰れてしまったのです。典型的な話ですね。

単純にこれと同じことが、世界で起こっているのですよね。
だからいま、会社で生きのびるために必要なのはスキルではないんですよ。
社長へのゴマすり力、忖度力なんです。
そんなことになってしまっている世の中を変えなくていけない。


コンチネンタル・イリノイもジェントルマンであることを捨てた

その後、アメリカはどうなったのかというと、投機が横行するわけです。
その結果、「資産20億円以上の上位0.1%が国の富の20%を所有している」状態になっています。
(ここで使ったデータは堤未果さんが著書『貧困大国アメリカ』などで示してくれたことで、もう10年以上前のものです)

コンチネンタル・イリノイ自身はどうしたのかというと倒産しました。
その後、彼らはジェントルマンであることを捨てて行ったのです。

1971年8月にニクソンドルショックが起こりました。
アメリカが「1ドル360円での交換を止めた。もうドルを金と交換しない」と宣言し、変動相場制が始まったのです。
このときコンチネンタル・イリノイは、東京外為市場で投機的ドル売りを大量に行って巨額の利益を手にしました。
つまりフリードマンが言ったことを、この銀行はやったのです。
それでその後、すっかり節度を失い、投機的取引に大きく傾斜し、1985年5月に事実上の倒産を迎えました。

これが銀行では戦後最大の倒産なのだそうです。
しかしこの時、レーガン政権が倒産させなかった。
「大きすぎて潰せない(too big to fail)」と言い出して政府が救済したのです。これ、東電にも適用されています。

本来の市場経済の考え方では、「不良な企業は倒産してなくなってね」となるべきなのですが、実際には大きいものは救済する。
市場原理主義なんてインチキなのですよね。

ともあれこれが今の大きな流れだということを知ってください。
こんな投機的な、ひどい儲けが行われている経済のあり方に、ストップをかけなければいけない。それが今日の話の一番の軸です。

続く

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