明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2453)福島原発燃料デブリの取り出しは不可能! 石棺にして100年以上待ち 放射線量が十分に減ってから対応するしかない ウソはダメ!

2024年08月24日 23時00分00秒 | 明日に向けて(2401~2600)

守田です(20240824 23:00)

石棺で封じ込め放射線値が下がるのを待つしかない

前回の記事の続きです。前回は22日に始まった福島原発燃料デブリの取り出しが、「初歩的なミス」によって止まってしまったけれど、問題の本質はそこにはなくて、そもそも取り出し不可能なことを見て見ぬふりをしていることこそ問題であることを明らかにしました。
今回、指摘したいのは、こうした不可能なことをできると言い続けていることも、それを見て見ぬふりをし、はっきりとした批判を行なわないことも、大変良くないという点です。
はっきりいって政府と東電はウソをついているのです。2051年までに廃炉を終える、その展望があるという大ウソです。実際にはまだ1gも取れていない。放射線値が高すぎるからです。人はまったく近づけないし、ロボットも度々壊れてしまう。

ではどうしたらいいのか。放射線値が下がるのを待つしかないのです。そのためにとりあえずは石棺で封じ込めて、安全性を確保することが必要です。
ではどれぐらい待つと良いのかというと、放射線を出している主な物質は、セシウム137やストロンチウム90で半減期が30年ですから、90年経ってやっと8分の1になり、120年経てば16分の1になります。180年経てば64分の1にもなる。210年で128分の1です。
そのように放射線値が十分に下がるのを待ちつつ、放射線防護技術を高め、作業者の十分な安全性を確保する中で、ようやく有効な廃炉作業に進むことができる。なので100年以上は必要で、実際に可能なのはこの道だけです。


石棺化したチェルノブイリ原発 (左)と石棺の老朽化に対して新たに作られた金属製ドーム(右) レールで移動し現在はすっぽり覆っている チェルノブイリもデブリ取り出しはこれから

どうしてウソをつき通しているのか 

ではなぜデブリの取り出しが不可能だと、誰がどう見たって否定しようのない事実を押し通しているのでしょうか。
一つに福島県と沿岸部などの13市町村が、2016年の段階で、取り出した燃料デブリや使用済み燃料などの放射性廃棄物を県外で処分するよう求めており、東電がこれを受けている事実があります。
これに対しまずは石棺化し、廃炉を100年以上の事業として取り組むことを明らかにすると、この約束はおろか、福島の復興も、遠い未来にしか実現できないことが浮き彫りになります。悲しいことですがそれが直視する以外ない真実です。

しかし政府や東電はここを誤魔化し、事実を隠して、批判を避けようとしているのです。マスコミもこれに追従している所が多い。復興を期待する人々の怒りの矢面に立ちたくないので、忖度して曖昧な言に終始し、ウソを明確には批判しないのです。
実際には廃炉には100年以上かかります。原発とは一度過酷事故が起きたら、故郷をまるまる失うしろものなのです。政府と東電はこの事実がハイライトされ、今ある原発の稼働続行もできなくなることも恐れてウソを重ねているのでしょう。
しかしウソで事実は曲げられないし、こんな犯罪を重ねてはなりません。しかも許しがたいことに、この出来もしない作業でも事業者だけはしっかり儲けています。無駄な資金が、原発や建屋を作った事故責任者をいまも潤わせている。こんなこと許しておいていいはずがない。


13年経ってデブリ1gも取りだせないのに「復興と廃炉の両立」をうたう東電


出来もしないデブリ取り出しを行うのは危険

また出来もしないデブリ取り出しは、被曝労働を増やすだけ。もともと電力会社は、格納容器を冠水して上からデブリを取り出したかったようです。水が放射線に対する最も手堅いシールドだからです。
しかしデブリが圧力容器の底を突き破って格納容器の中に広がってしまっていて、上からでは取れない。それで横から取り出し器具を指し込もうとしているわけですが、それでは水がはれず、有効なシールドが得られなくて、危険作業が増えてしまう。
そもそも今も現場は厳重な放射線対策をしなければならず、マスク、ゴーグル、防護服をがちがちに装備するので、作業環境も効率もとても悪く、その面でも危険が大きくなっています。その点も含めて今は放射線値が下がることを待つべきなのに、いたずらに危険施業を繰り返している。

しかもウソだらけの上に無理な作業が強いられているので、現場のモラルと士気も著しく低下しています。現場の方たちにデブリ取り出しなどできないことは分からないはずがない。しかしウソがまかり通り、その共犯者にすらされている。
これだけ注目を浴び、3年も延長した作業の再会にあたって「初歩的ミス」が起きたのもそのためだと考えるのが合理的です。作業環境の悪さに加え、現場の方たちの後ろめたさ、憤り、悲しみが重なり、凡ミスを繰り返す土壌を作りだしているのです。
事実フクイチだけでなく、東電柏崎刈羽原発や六ケ所再処理工場など、日本中の核施設で、にわかには信じがたい不祥事が頻発しています。そしてこのモラルハザードがさらなる危機を招き寄せてもいる。だからウソの作業は幾重にも危険なのです。


今の工法は「放射線防護に課題」があるとしていまも冠水工法が検討されているものの技術的に困難といわれている やはり放射線値が大きく減るのを待つべき 図は東京新聞の記事より


できないことはできないとはっきりさせて廃炉作業を進めるのが肝要 そのため事業主体を東電から廃炉公社にかえるべき

これまで述べてきたように、大事なのは「できないとはできない」とはっきりさせること。このシンプルな方針こそが、廃炉をまともに進めるための唯一の道です。
またそのために、できるだけ早く東電を廃炉作業から撤退させ、透明性を持った廃炉公社に代えて、作業を進めることが必要。
東電はこれまでも本当にたくさんのウソをついてきました。例えば事故直後から放射能汚染水が1日何百トンのオーダーで海に流れているのに知らんぷりしていた。他にも東電が事故後についた犯罪的なウソには枚挙の暇がない。

それやこれや、そもそも福島原発事故を起こし、その後にも犯罪的なことをたくさんしてきた集団に、まともな廃炉作業の遂行を期待する方が間違っています。
この間のウソをきちんと罰し、責任をとらせた上で、原発事業全体から撤退させ、あとは廃炉と賠償のための資金供出に徹するように行政指導すべきです。いわんや柏崎刈羽等の運転を認めるなど言語道断です。
そして代わりにもっと真っ当な人士からなる廃炉公社を作るのです。そのもとで100年以上かかる廃炉作業を、これ以上の被曝を避けることを最優先しつつ、行わないといけません。このことを求め続けていきましょう。


東電は2013年7月21日の参院選の直後に初めて汚染水流出を認めたが、どう考えても最初から知っていたことは明らか 日テレ2013年7月23日

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