守田です(20250210 18:00)
東京駒込のカプセルホテルからの発信です。
● 明日11日、ウエスタ川越 活動室2にて。午前10時からお話します
タイトルはこれです。
「ノーベル平和賞受賞を踏まえてその先に~いま現に進行している被爆(被曝)に立ち向かおう!」
詳しくはイベントページをご覧ください。
https://fb.me/e/2LBDM31CL
今回の記事で展開していることも盛り込みます。
● イギリスがプルトニウム100トン超の廃棄を決定した
イギリスが再処理によってため込んだ100トン超のプルトニウムの地層処分を行うことを発表しました。
地層処分にはあまりに大きな問題があり、肯定できません。しかしイギリスが膨大なプルトニウムを廃棄物と判断せざるを得なくなったことには、核燃料サイクルも、原発もまったく展望がないことが顕著に現れています。今回はこの点を考察します。
記事によればイギリスが貯めているプルトニウムは140トン。そのうち24トンが他国分であり、うち21.7トンが日本のものだそうです。
イギリスはこのうち自国分の116トンについて、①MOX燃料にする②長期保管する③ごみとして処分すると三つの選択肢を検討し、ごみとしての処分を決めたというのです。
英、使い道ないプルトニウムを地中に廃棄方針 保管する日本分は未定
朝日新聞 2025年2月2日
https://www.asahi.com/articles/AST2100QVT21TIPE00LM.html
● 再処理工場THORP(ソープ)の破綻
これはイギリスによる「再処理ビジネス」と日本の原発政策の破綻を表すものでもあります。
イギリスはセラフィールドに民生用の再処理工場ソープとMOX燃料製造工場SMPを建設、ソープは1994年に試験運転を開始しました。まだ幾つかの国で核燃料サイクルの実現が夢見られているときの計画でした。
イギリスは各国で再処理工場の建設が進まないことから、海外の電力会社から再処理を受託することにウエイトを置き、建設費の大半もこれらの電力会社に担わせました。
なかでも突出していたのは日本でした。第一期委託分の38%と突出した支払いがなされて、ソープは「ジャパンプラント」とすら呼ばれました。
日本は国内での再処理が進まない中、各原発の燃料プールが使用済み核燃料で埋まってしまい、運転ができなくなることを恐れて、ソープに多大な出費を行ったのです。
ところがこの再処理工場、トラブル続きでした。処理量も当初の年間1200トンにおよばず400トンで、経費も上昇するばかり。しかも各国が核燃料サイクルを断念し、顧客がいなくなりつつありました。
そんな中で2011年に福島原発事故が発生。英国・原子力デコミッショニング機構(NDA)は同年8月3日に、日本でMOX燃料使用の展望が途絶えたとしてMOX燃料製造工場SMPの閉鎖方針を発表。ソープも2012年に廃止が決まり、その後2018年まで契約分の再処理を行ったのち、閉鎖されています。
日本が六ヶ所村再処理工場を稼働させるための使用済み核燃料の運び先として確保しようとした工場群の閉鎖であり、それそのものが日本の原子力政策の破綻を意味してもいます。参考記事を示しておきます。
破綻したイギリスの核燃料サイクル ―セラフィールド再処理工場の終焉と六ヶ所再処理工場の行方
NEW DIPLOMACY INITIATIVE 20220404 平野あつき
https://www.nd-initiative.org/research/10486/
ATOMICA掲載の図より
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_14-05-01-17.html
● 核燃料サイクルは完全に破綻した。MOX燃料を作っても使い手がいない!
今回、イギリスがプルトニウムを「ごみ」と判断したのは、この先、核燃料サイクルなどまったく展望がないことがはっきりしているからです。
もともとウランの埋蔵量はけして多くないことが知られていました。しかも核分裂するウランは天然ウランの0.7%しかない。
しかし残りのウランに中性子を当てるとプルトニウムが生まれる。そしてそのプルトニウムを使ったMOX燃料で発電すると、燃やした以上のプルトニウムを作り出せる。エネルギー源を増殖させることができて、無限のエネルギーを得られるというのです。それが原子力の夢だったのでした。
しかし世界のどこでも増殖させるための「高速増殖炉」を作れなかった。技術的に無理だったのです。
だからもうMOX燃料を作っても意味などないのです。プルサーマルはため込みすぎたプルトニウムを無理やり消費するだけのもので、増殖の夢など果たせない。
それどころかMOX燃料はウラン燃料の10倍もするので、経済的にまったく不効率だし、冷却にも何倍もかかる。その上、そもそもウラン燃料よりさらに大きな危険性にも満ちている。
だからどう考えてもこれ以上MOX燃料を作っても使い手がないことは明らか。つまりもはやごみでしかないのです。だからごみとしての処理以外の道がないのです。
日本も確実にこの道を行くしかない。そもそも六ヶ所再処理工場を動かせる展望などないし、動かしても国内ではMOXへの加工ができない。
そのためMOX製造工場も作っていますが、それが完成してももんじゅは廃炉になってしまったから、もうMOX燃料も使い道などないのです。
ではプルサーマルを続けるのか。それもすぐに行き詰まる。コストが高すぎるし、熱量が高いのでプールをよりはやく埋めてしまうからです。
ANNニュース 20161228
● 原子力はオワコン
これらが示してるのは、もはや原子力になんの展望もないということです。原子力はオワコンなのです。
いま原発推進が叫ばれているのは、このままでは確実に終わってしまい、「資産」としているものが「ごみ」になってしまうので、そうならないようにと原子力に利権を持つ人々があがいているためが一つ。
同時にその何が何でも原子力を生き延びさせようとして次々に繰り出されるウソを利用して、利ザヤを稼ごうとする投機マネーが群がっていることが二つ。
主要にこれらによるものでしかありません。そんなウソに踊らされてはいけない。
原発政策を終わらせるために、この破綻の現実をより多くの人に伝えていきましょう!
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