昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(二) やり直し、やり直し!

2014-09-26 08:55:54 | 小説
(四)

「ケンちゃーん! 寂しかったよお!」
「ユミでーす!」

「おぉ、ミドリー!会いたかったぞー」
井上は、その声と同時に立ち上がると、両手を広げてミドリを抱きしめた。

「こらこら、又始まった。あぁ、お尻を撫でてるう。気持ち良くなるから、だめえぇ!」
「おいっ! 御手洗君。俺の真似をしなくちゃだめだ。やり直し、やり直し!」
と、二人を追い返した。

「ケンちゃーん! 寂しかったよお!」
「ユミでーす!」
「おぉ、ミドリー!会いたかったぞ。うんうん愛い奴だ、苦しゅうないぞ。近う寄れ、ほれもっと近う寄れえ!」

井上は、改めて両手を広げてミドリを抱きしめた。
急かされて、彼も立ち上がりはしたものの、どうしたものかと立ちすくんだ。
すかさず、ユミが彼の両手を自分の背中に回させた。

「お尻はだめだぞ。まだ早い。次に来た時には、許してあげる。今夜は、ここまでだ」
ユミの酒臭い息が彼を包んだ。と同時に、ユミの弾力のある乳房が、彼を狼狽させた。

「かんぱーい!」
促されて、彼もコップを空にした。ズンと、お腹に沁みる。
カッと胃の辺りが熱くなり、顔中が火照り始め、心臓の鼓動が早鐘を打ち始めた。

「あらっ! もう真っ赤になっちやって。どうしたの? お姉さんが傍に座ったせいかしら? 
だったら、もっと苛めちゃおうかな。こんな若い人のお相手なんて、ほーんと久しぶり。
井上課長さん、ありがとうね」

空になった彼のコップに、ユミはすぐさまビールを注ぐと、
「ほらっ、ボクちゃん、グッともう一杯。ほらっ、お姉さんにも注いでよ。おつまみ、食べる?」
と、矢継ぎ早だった。

ユミの眩いばかりの太ももが彼の太ももに当たるにつれ、彼は目のやり場に困った。
目の前に座る井上は、ミドリとの大人の会話に興じている。
時折ミドリの乳房に手をやり、
「こらっ、ケンちゃん!」
と、いなされたりしている。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿