「大きな犬に襲われかけた時に、届けにいった商品をかばって噛まれそうになったらしいんだ。
以前に、訓示の中でさ、『商品を第一に考えること。車の水しぶきに対しては、自分は濡れても商品は濡らすな。』って言ったんだが、それを守ってくれたんだナ。
あくまで、ポリシーのつもりで話したんだが、ホントにそうするとはね。
まぁ、水しぶきぐらいのことは過去に守ったアルバイトもいたけれど、犬の襲撃まではな。
驚いたよ、まったく。」
注がれているビールを一気に飲み干した井上は、更に話を続けた。
「でね、そのことで電話が入ったわけだ。
『どういう教育をしてるの! 怪我でもされたら、飼い主の責任になるのよ。
自分の身を守る術くらい教えときなさいな。
でも、感心なアルバイトさんね。気に入ったから、あの方にこれからも配達をお願いしたいわ』ってね。
どうだい、御手洗くん。誰だか、分かるよな、電話の主」
“麗子さんだ!”
顔を真っ赤にしながら、彼は無言で頷いた。
「まぁ、まぁ。そんなに真っ赤になって。可愛い青年ね。お名前は、なんと仰るの?」
愛想良く微笑むママに、彼は反射的に席を立ち、頭を下げた。
「ミタライと言います、御手洗と書きます」
「あらあらご丁寧に。ちょっと待ってね、今女の子を呼びますから。
ケンちゃんは、ミドリね? で、と。子分さんには…、あっ、今ユミの手が空くわ。
お客様をお見送りするところだから」
「おいっ! 御手洗君、ついてるぞ。初めての相手がユミちゃんとは。
羨ましいねえ。ハッハハ。そうそう、この女性はな、オーナーママだ。
偉いんだよ、実に偉いお方なんだ。ハッハハ」
目の縁がほんのりと赤い井上は、高らかに笑った。
仕事中の気難しさはまるで無く、奇異な感じさえ受けた。
以前に、訓示の中でさ、『商品を第一に考えること。車の水しぶきに対しては、自分は濡れても商品は濡らすな。』って言ったんだが、それを守ってくれたんだナ。
あくまで、ポリシーのつもりで話したんだが、ホントにそうするとはね。
まぁ、水しぶきぐらいのことは過去に守ったアルバイトもいたけれど、犬の襲撃まではな。
驚いたよ、まったく。」
注がれているビールを一気に飲み干した井上は、更に話を続けた。
「でね、そのことで電話が入ったわけだ。
『どういう教育をしてるの! 怪我でもされたら、飼い主の責任になるのよ。
自分の身を守る術くらい教えときなさいな。
でも、感心なアルバイトさんね。気に入ったから、あの方にこれからも配達をお願いしたいわ』ってね。
どうだい、御手洗くん。誰だか、分かるよな、電話の主」
“麗子さんだ!”
顔を真っ赤にしながら、彼は無言で頷いた。
「まぁ、まぁ。そんなに真っ赤になって。可愛い青年ね。お名前は、なんと仰るの?」
愛想良く微笑むママに、彼は反射的に席を立ち、頭を下げた。
「ミタライと言います、御手洗と書きます」
「あらあらご丁寧に。ちょっと待ってね、今女の子を呼びますから。
ケンちゃんは、ミドリね? で、と。子分さんには…、あっ、今ユミの手が空くわ。
お客様をお見送りするところだから」
「おいっ! 御手洗君、ついてるぞ。初めての相手がユミちゃんとは。
羨ましいねえ。ハッハハ。そうそう、この女性はな、オーナーママだ。
偉いんだよ、実に偉いお方なんだ。ハッハハ」
目の縁がほんのりと赤い井上は、高らかに笑った。
仕事中の気難しさはまるで無く、奇異な感じさえ受けた。
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