昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十八) 会社の花形は、営業だ

2014-05-26 18:03:26 | 小説
(二)

ひとしきり笑いを取った後、顔をぐっと引き締めて言う。

「冗談はこのくらいにしてだ。会社の花形は、営業だ。
こいつらが注文を取ってこないと、会社は成り立たん。

しかしだ、仕入れも大切なんだ。品物が潤沢に入ってこなければ、売るに売れない。
それにだ、納めた商品の中に粗悪品でも入ってろ、大変なことになる。

だから、加藤専務が必死の思いで頑張っているんだ。
日の本商会を思い出せ。粗悪品が混じっていたというだけで、あっという間だ。
ことほどさように、恐いんだ」

社員の間にざわめきが起こった。
「あれは酷かった、ほんとに」
「新聞で、叩かれたよな。『安かろう、悪かろう』って」
「あっという間だったよ、実際」
「あれって、社長の画策だって…違うよな?」

「小夜子を担ぎ出すのは、相手の心証を良くするためだ。
男というのは、とに角美人に弱い。しかも小夜子は、弁が立つ。

そこらの男なんか、簡単に言いくるめられる。
白いものを黒いとは言いくるめられんが、灰色だったら言いくるめちまう。

俺も舌を巻くほどだ。ま、それはそれとしてだ。もうひとつ、大事なことがある。
配達に専念している者たちだ。

力仕事だけの男だと考えているかもしれんが、とんでもない間違いだ。
服部たち営業は、増岡たち配達専門の人間にもっと感謝の念を持て。

いいか、このことに気付いているのが一人いる。
誰か、分かるか? そう、竹田だ。
理屈ではなく、直感的にだ」


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