昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十三)の三と四

2011-11-11 22:21:52 | 小説


間の悪い時にと思う武蔵だったが、もう一度粉をかけてみた。
「あらまあ。それじゃ、どちらもおなじことじゃありません? 」
「ハハハ、ばれたか。大抵の女はひっかかるんだがなあ。
細かいところまで、聞いてるおられる。
さすがは老舗旅館の、女将だ。」
「ありがとうございます。
賭は別としまして、社長さまとはゆっくり “さしつさされつ” と、まいりたいものですわ。 」
社交辞令か?と、勘ぐる武蔵だが
「よし、決まった。
もう一晩お世話になることにしょう。
空いてるよね、部屋。 」と押してみた。

「はい、もちろんでございますとも。
万が一にもふさがっておりましても、何としてでもお泊まりいただきますわ。 」と、女将が返してきた。
「聞いたか、五平。泣かせるねえ、女将は。
丁々発止とはこのことだぜ。 」
「社長。盛り下げるようですが、明日は銀行が来ます。
酒を抜いておきませんと。 」
「無粋だぜ、五平。と言っても、銀行じゃ何ともならんか。
名残り惜しいけれど、女将。また、日を改めてと言うことで。」
「承知いたしました。首を長ーくして、お待ち申し上げております。」
「それでは・・」と女将が去った後、武蔵の隣に五平が腰を下ろした。




4

「のんびりしますな、ここは。 」
「あぁ、東京の喧騒が嘘のようだ。」
「まったくです。ところで、女将と話が弾んでいたようですね。で、どんな話を?」
「なんだ?気になるのか?」
「いや、あれだけの女傑は、そんじょそこらには居ませんて。
女将でなかったら、社長の伴侶に迎えたいもんで。」
「五平もそう思うか? 」

「というと・・社長!まさか?
唯ねぇ、あの女将、後家さんなんです。
“それでもいい”とおっしゃるなら、話をつけ、、、」
「ばか言うな。ここを捨ててまで、俺について来る訳がねえだろうが。」
「いやいや、社長が本気で口説けば、分かりやしませんよ。」
「おいおい、本気にしちまうぜ。」
「どうぞ、どうぞ。」
このまま話が続くと、五平は本気で女将を口説きかねない。
慌てて武蔵は、五平を押しとどめた。


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