五
「やめとこう。あの女将は、男を食らう。男を踏み台にして、大きくなる。
たまに逢うぐらいで丁度いい。それはあの女将も先刻承知だろう。
それにまだ女盛りだぁな、どこぞに間夫が居る。
案外花板あたりと、ねんごろじゃないか?」
「社長。そいつは、ちょっと違いますすぜ。」
「ほう、違うってか。女のことでは、五平にはかなわねえ。」
「あの女将は、一人に入れあげることは、まずないでしょう。
複数の男を、言葉は悪いが、手玉にとりますよ。」
五平の目は、確かだ。
それは五平が見つけるオンリーさんで、証明されている。
アメリカ将校からの不平があるにはあるが、数える程だ。
“こんな高学歴の女が?”
“良家の子女だぞ?”
そんな疑問符の付く女性が、魔法にかかったが如くに陥落する。
「おいおい、そんな女が、俺に似合ってるのか?」
「いや、女将だからです。
会社で言えば、社長だ。
何もかもを、一人で切り盛りしてる。」
「なんでそんなことが、分かる?」
「いえ、仲居から聞きました。」
「聞いたって、お前、いつだ・・えぇ!まさか、今朝・・」
「へへへ、そのまさかです。
丁度目が覚めた時に、その・・。」
「どうやって布団に引張りこんだんだ。
後学の為にも教えろ。」
六
「そんなご大層なことじゃありません。
べ、ちょいと心づけを多めに渡しときまして。
それで、水をくれと。で、口移しで飲ませてくれまして。」
「そうか、それじゃ俺もやってみるかな。」
「だめだめ。あたしみたいな下衆野郎だから、いいんです。
武さんみたいな二の字には似合いません、て。」
「なんだそりゃ。それじゃ、どうすりゃいいんだ。 」
「何もいりませんて。“今夜付き合え”で、充分ですって。」
「ほんとかよ、本気にするぜ。」
「どうぞ、どうぞ。女将も、待ってますよ。」
「女将と言えば、今度陶器を扱うことにしたから。
手始めに、ここに徳利を進呈することにした。
夕べのやんちゃのお詫びの意味をな。」
「お詫びねえ。分かりました、分かりました。
そういうことにしておきましょう。」
「ところで、五平、さん。 」
「気味が悪いなぁ。
いつもどおりに、五平でお願いしますよ。」
にやつきながらの武蔵に、尻がムズムズする五平だ。
「俺に嫁さん云々と言うが、お前さんはどうなんでしょうね。
確か、四十に近いんじゃないか? 」
「えぇ、えぇ。おかげさまで、もう七になってます。」
「やめとこう。あの女将は、男を食らう。男を踏み台にして、大きくなる。
たまに逢うぐらいで丁度いい。それはあの女将も先刻承知だろう。
それにまだ女盛りだぁな、どこぞに間夫が居る。
案外花板あたりと、ねんごろじゃないか?」
「社長。そいつは、ちょっと違いますすぜ。」
「ほう、違うってか。女のことでは、五平にはかなわねえ。」
「あの女将は、一人に入れあげることは、まずないでしょう。
複数の男を、言葉は悪いが、手玉にとりますよ。」
五平の目は、確かだ。
それは五平が見つけるオンリーさんで、証明されている。
アメリカ将校からの不平があるにはあるが、数える程だ。
“こんな高学歴の女が?”
“良家の子女だぞ?”
そんな疑問符の付く女性が、魔法にかかったが如くに陥落する。
「おいおい、そんな女が、俺に似合ってるのか?」
「いや、女将だからです。
会社で言えば、社長だ。
何もかもを、一人で切り盛りしてる。」
「なんでそんなことが、分かる?」
「いえ、仲居から聞きました。」
「聞いたって、お前、いつだ・・えぇ!まさか、今朝・・」
「へへへ、そのまさかです。
丁度目が覚めた時に、その・・。」
「どうやって布団に引張りこんだんだ。
後学の為にも教えろ。」
六
「そんなご大層なことじゃありません。
べ、ちょいと心づけを多めに渡しときまして。
それで、水をくれと。で、口移しで飲ませてくれまして。」
「そうか、それじゃ俺もやってみるかな。」
「だめだめ。あたしみたいな下衆野郎だから、いいんです。
武さんみたいな二の字には似合いません、て。」
「なんだそりゃ。それじゃ、どうすりゃいいんだ。 」
「何もいりませんて。“今夜付き合え”で、充分ですって。」
「ほんとかよ、本気にするぜ。」
「どうぞ、どうぞ。女将も、待ってますよ。」
「女将と言えば、今度陶器を扱うことにしたから。
手始めに、ここに徳利を進呈することにした。
夕べのやんちゃのお詫びの意味をな。」
「お詫びねえ。分かりました、分かりました。
そういうことにしておきましょう。」
「ところで、五平、さん。 」
「気味が悪いなぁ。
いつもどおりに、五平でお願いしますよ。」
にやつきながらの武蔵に、尻がムズムズする五平だ。
「俺に嫁さん云々と言うが、お前さんはどうなんでしょうね。
確か、四十に近いんじゃないか? 」
「えぇ、えぇ。おかげさまで、もう七になってます。」
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