(七)
「新しいお絞りです、どうぞお使いください」
実千代の差し出すお絞りを引っ手繰るように受け取った竹田、すぐさま小夜子に手渡した。
「小夜子、今夜はどうしたんだい? 体調が悪いようだね」
「煙草やらお酒の匂いがね、今夜はどうも。どうしたのかしら、疲れてるのかしら…」
弱々しい声の小夜子に、竹田はただオロオロとするだけだ。
“社長の留守中に、小夜子奥さまがご病気になんてことになったらどうしよう。申し訳が立たないぞ”
“もう、帰りましょう”
喉まで出かかっている言葉が、どうしても出てこない。
小夜子に片意地をはられても困ると、言い出せないでいた。
竹田の忠言に対して、素直に従う小夜子ではない。
むしろ逆へと行く小夜子だ。
「梅子さん、ちょっと。ひょっとして…」と、実千代が小声で囁く。
「やっぱり! 実千代もそう思うかい? あんたのお姉さん、おめでただったものね。
うんうん、そうだよ、きっと」
くるりと向きを変えて、小夜子の手をしっかりと握って、梅子が告げた。
「小夜子、今夜はお帰りな。で、暫くの間、出入り禁止だ」
えっ! と不満げな表情を見せる小夜子。そして安堵の表情を見せる竹田。
「いいかい。明日にでも、医者に行きな。
違う、違う。産院だよ、産院。
十中八九、おめでただよ。どうだい、月のものが遅れてるだろ?
間違いない、おめでただよ」
「新しいお絞りです、どうぞお使いください」
実千代の差し出すお絞りを引っ手繰るように受け取った竹田、すぐさま小夜子に手渡した。
「小夜子、今夜はどうしたんだい? 体調が悪いようだね」
「煙草やらお酒の匂いがね、今夜はどうも。どうしたのかしら、疲れてるのかしら…」
弱々しい声の小夜子に、竹田はただオロオロとするだけだ。
“社長の留守中に、小夜子奥さまがご病気になんてことになったらどうしよう。申し訳が立たないぞ”
“もう、帰りましょう”
喉まで出かかっている言葉が、どうしても出てこない。
小夜子に片意地をはられても困ると、言い出せないでいた。
竹田の忠言に対して、素直に従う小夜子ではない。
むしろ逆へと行く小夜子だ。
「梅子さん、ちょっと。ひょっとして…」と、実千代が小声で囁く。
「やっぱり! 実千代もそう思うかい? あんたのお姉さん、おめでただったものね。
うんうん、そうだよ、きっと」
くるりと向きを変えて、小夜子の手をしっかりと握って、梅子が告げた。
「小夜子、今夜はお帰りな。で、暫くの間、出入り禁止だ」
えっ! と不満げな表情を見せる小夜子。そして安堵の表情を見せる竹田。
「いいかい。明日にでも、医者に行きな。
違う、違う。産院だよ、産院。
十中八九、おめでただよ。どうだい、月のものが遅れてるだろ?
間違いない、おめでただよ」
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