あれこれと茂作の世話をやきながらも、小夜子は快活に座を盛り上げた。
彼もまた、大学生活やバイトの事を話した。
彼の話の大半はバイト時におけるエピソードだったが、
「学業に響かないようにしなさい」
と言う言葉には、耳が痛かった。
茂作は一言も言葉を発することはなかったが、終始にこやかで「うん、うん」と頷いていた。
食事の終わった後も談笑が続いたが、茂作のあくびが出始めたところで
「さあ、さあ。また、薬草を塗りましょうねえ」
と、母親が腰を上げた。
「お母さん、僕が代わりにやりますよ。お母さんは休憩をしてください」
彼にとって、せめてもの母親孝行だった。
「そう。じゃあ、お願いしようかしら。先ず体を拭いてあげてね。
それから、この薬草を薄ーく伸ばして頂戴。少し匂いがきついけれど、我慢してね」
冷蔵庫の中から小瓶を取り出すと、彼の前に置いた。
彼は骨と皮だけの茂作に驚きつつも、お湯に浸したタオルで茂作翁の背中を軽く拭いた。
”痩せているだろう”とは思ってはいたが、これ程とは思ってはいなかった。
肌のたるみは勿論のこと、そのカサカサとした皮膚には嫌悪感さえ感じられた。
また、薬草独特のツンと鼻にくるその匂いにも閉口する彼だった。
老人特有の体臭と相合わさって、思わず顔を背けてしまった。
茂作に対して一瞬時とはいえ嫌悪感を抱いた、そんな自分に腹を立てた。
”こんな事を、毎日続けているのか”
改めて彼は、小夜子の苦労が思い知らされた。
恐らくは、気持ちよさそうな茂作の表情が救いなのだろう。
そんなことを考えながら、彼は背中全体に塗布した。
彼もまた、大学生活やバイトの事を話した。
彼の話の大半はバイト時におけるエピソードだったが、
「学業に響かないようにしなさい」
と言う言葉には、耳が痛かった。
茂作は一言も言葉を発することはなかったが、終始にこやかで「うん、うん」と頷いていた。
食事の終わった後も談笑が続いたが、茂作のあくびが出始めたところで
「さあ、さあ。また、薬草を塗りましょうねえ」
と、母親が腰を上げた。
「お母さん、僕が代わりにやりますよ。お母さんは休憩をしてください」
彼にとって、せめてもの母親孝行だった。
「そう。じゃあ、お願いしようかしら。先ず体を拭いてあげてね。
それから、この薬草を薄ーく伸ばして頂戴。少し匂いがきついけれど、我慢してね」
冷蔵庫の中から小瓶を取り出すと、彼の前に置いた。
彼は骨と皮だけの茂作に驚きつつも、お湯に浸したタオルで茂作翁の背中を軽く拭いた。
”痩せているだろう”とは思ってはいたが、これ程とは思ってはいなかった。
肌のたるみは勿論のこと、そのカサカサとした皮膚には嫌悪感さえ感じられた。
また、薬草独特のツンと鼻にくるその匂いにも閉口する彼だった。
老人特有の体臭と相合わさって、思わず顔を背けてしまった。
茂作に対して一瞬時とはいえ嫌悪感を抱いた、そんな自分に腹を立てた。
”こんな事を、毎日続けているのか”
改めて彼は、小夜子の苦労が思い知らされた。
恐らくは、気持ちよさそうな茂作の表情が救いなのだろう。
そんなことを考えながら、彼は背中全体に塗布した。
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