昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (九) 先生は独身主義者なんですか? 

2015-01-29 09:16:22 | 小説
「はあ、そうですね。言われてみれば、肩肘を張ってたような気がします。
形にこだわりすぎたような気がします自分に対する叱咤激励、というか…」
浅田が、吉田の言葉を引き取った。

「そうですか、君も、青春恋愛から卒業しますか。
うぅん、ちと早いような気がしますねえ。
できれば君の場合は、そのまま成就してほしかったですね。
で、先ほど言った、ホステスさんの夜の顔、分かりますか? 
ハハハ、分かりませんか。まっ、それが当たり前です」

「教えてください、先生。どういう意味なんですか」
「うん。大人になるということは、打算という言葉を覚えてしまうことです。
否応なく、入り込んでくるんです、いつの間にか。
“これは俺にとって、損か得か?”という尺度が一つ増えてしまうんですよ。
資本主義が進めば、きっと充満します。そうですか、君もねえ、とうとうねえ…」
感慨深げに空を見つめながら、浅田は何度も何度も頷いた。

「ひとつ聞いていいですか、先生は独身主義者なんですか? 
先生のお立場なら、嫁さん候補なんて星の数でしょうに」
突然吉田から発せられた言葉は、浅田が普段からもっとも話したいことだった。
よくぞ聞いてくれたと、身を乗り出すようにして話し始めた。

「そうですね。確かに色々とお話は頂きます。
もっとも最近は、ほとんどお話が来ませんが。
年齢的なこともあるかもしれませんが、もう四十代にのりましたからね。
まあそれよりも、あの噂でしょう。
仕方がないです、それにしても、この私がhomosexualとはね。
反論しなければ沈静化すると思ったのですが、逆に定着してしまいましたね。

私はね、こう思うんですよ。
homosexualは純粋である、とね。
確かに、醜悪に感じられるかもしれません。
その点、lesbianは美しいです。
しかしそれ故にsexの奴隷に感じます。
ハハハ、こんなことを言ってると、ますますhomosexualだと言われそうですね」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿