昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (九) 人畜無害と思われてるんでしょう

2015-01-30 08:57:05 | 小説
「しかし先生。女子学生の間では、大人気ですよ。エコヒイキがない、とも言われてます。」

吉田は話題をすり替えた。確かに、浅田のホモ説は知っている。
しかしその真偽については、知りたくなかった。

「ハハハ。そりゃまあ、人畜無害と思われてるんでしょう。
私はね、学生に対しては、一切偏見を持たないようにしています。
来る者は拒まず、去る者はあっ、引き止めてますね、ハハハ」

「女子に対して厳しい教授も、ちらほら居ますしね。
偏見じゃないですか? 浮ついてる娘ばかりじゃないと思うんですけど」

「いやまあ、ねえ、。
確かに、女子大生というブランドにぶら下がっている女子がいるにはいますが、
だからといって“女子大生亡国論”までは言い過ぎだと思いますがね」

「しかし、いろいろのメディアで活躍してますからね、皮肉ですけど。
ビキニ姿になって、おちゃらけなんかをやらかして。
やはり目をひそめる輩もいますよ、先生。」

「吉田君。
私が若い頃、あなたと同じぐらいの頃ですが、大恋愛をしたと言ったら信じますか? 
駆け落ち寸前まで行ったんですがね。
彼女は、敬虔なクリスチャンでした。
私もね、クリスチャンに、とまで考えたのです。
でもね、結局だめでした。
ある一つの事実が、私を踏み止まらせてしまったのです。
あの頃の私は、潔癖でした。
そしてそれを相手にも求めてしまった。
勿論彼女もまた潔癖でした、一つのことを除いては。
ただ、その一つのことも彼女の責任ではないのだけれど」


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