いつの間にか寝入っていた彼が目覚めたのは、けたたましい早苗の笑い声だった。
外は、すっかり暗くなっていた。
「あゝ、よく寝た。お母さん、お早う、じゃないか。もう暗いんだね」
階段を下りながら、彼は母親に声をかけた。
「起きたの? 丁度いいわ、お夕食が出来てますよ。早苗ちゃんも来てるし、食べましょうか?」
にこやかな表情で、母親が応えた。
「やっと、起きてきた。お兄ちゃんの寝顔って、可愛いね? さっき、少し見とれてたよ」
早苗の屈託のない声に、彼は思わず
「何を、生意気言ってる!」と、かみついた。
「ふふふ…」
早苗は意味ありげに笑うと、彼の傍に寄ってきた。
そして爪先立ちすると、彼の耳元で囁いた。
「ファーストキス、しちゃった」
顔を赤らめながらの早苗の言葉に、彼は意味がつかめずに
「ファーストキスだ?」
と、小声で聞き返した。
そして、昨夜の真理子との事を思い出し、彼も又少し顔を赤らめた。
早苗は彼を廊下に連れ出すと、彼を少しかがませた。
「お兄ちゃんに、チュッ! って、しちゃった。少しお酒臭かったけどね」
耳元にかかる早苗の吐息が、彼にはくすぐったく感じられ、思わず体をよじらせた。
「そんなのは、違うゾ! 本当の、やめた、やめた。早苗にはまだわからんさ」
窘めるような彼の口調に、早苗は思わず体をビクリとさせた。
「お兄ちゃんの、イヂワル!」
少し涙目になりながら、早苗は玄関に駆けだした。
”少しきつい事を言ったかな?”
と思いはしたが、早苗の気持ちに応えてやれない事を知らせる為にも、と思い直した。
外は、すっかり暗くなっていた。
「あゝ、よく寝た。お母さん、お早う、じゃないか。もう暗いんだね」
階段を下りながら、彼は母親に声をかけた。
「起きたの? 丁度いいわ、お夕食が出来てますよ。早苗ちゃんも来てるし、食べましょうか?」
にこやかな表情で、母親が応えた。
「やっと、起きてきた。お兄ちゃんの寝顔って、可愛いね? さっき、少し見とれてたよ」
早苗の屈託のない声に、彼は思わず
「何を、生意気言ってる!」と、かみついた。
「ふふふ…」
早苗は意味ありげに笑うと、彼の傍に寄ってきた。
そして爪先立ちすると、彼の耳元で囁いた。
「ファーストキス、しちゃった」
顔を赤らめながらの早苗の言葉に、彼は意味がつかめずに
「ファーストキスだ?」
と、小声で聞き返した。
そして、昨夜の真理子との事を思い出し、彼も又少し顔を赤らめた。
早苗は彼を廊下に連れ出すと、彼を少しかがませた。
「お兄ちゃんに、チュッ! って、しちゃった。少しお酒臭かったけどね」
耳元にかかる早苗の吐息が、彼にはくすぐったく感じられ、思わず体をよじらせた。
「そんなのは、違うゾ! 本当の、やめた、やめた。早苗にはまだわからんさ」
窘めるような彼の口調に、早苗は思わず体をビクリとさせた。
「お兄ちゃんの、イヂワル!」
少し涙目になりながら、早苗は玄関に駆けだした。
”少しきつい事を言ったかな?”
と思いはしたが、早苗の気持ちに応えてやれない事を知らせる為にも、と思い直した。
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