昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ブルー・はんたぁ ~蒼い情愛~ (二)

2010-04-05 23:10:40 | 小説
その恐ろしく事務的な声は、
ひんやりとした空気の漂う場を直線的に走った。

そしてその言葉の矢は、
じっと聞き入っていた傍聴人たちのざわめきを呼び起こした。

そのざわめきは、
皮肉にも死刑囚の緊張感を和らげさせた。

刺すような視線を全身に感じて、
肌に痛みを感じていた死刑囚のざらつきを消え去った。

しかし次の瞬間、その緊張感と心のざらつきを、
至極懐かしいもの━冬眠を終えた蛙が、
暖かい春の陽射しの下に出た歓びにも似る━と、感じた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿