昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十一)

2025-02-04 08:00:19 | 物語り

 小夜子の嘱託としての活動は、相変わらずの取引先へのあいさつまわりだった。
ところがある取引先において、会社案内をさせてほしいという申し入れがあり、それをむげに断ることもできず、滞在時間が延びてしまった。
同行していた竹田だけが先に帰ることになってしまった。
そのことを聞きつけた他の会社が、うちの会社もと申し入れが重なり、けっきょく相手先の車が送り迎えをすることになった。
 当初こそ「そこまでの女なの?」と、ねたみそねみの思いを抱いて真理恵だったが、社内で采配をふるうことには好都合だとかんがえるようになり、よろこんで送り出していた。 

   きようは金曜日であり、週の内で一番浮かれやすい日だ。明日の土曜日もしごとではあるのだが、半日だと言うこともあり、物流量が少なく、配達員たちもいつもよりはのんびりできる。
普段はそれぞれの部でもって、連絡会議をもつ。
その日いちにちの流れを聞かされ、質問があればその場で確認する。

さらに会社2階の大食堂において、月にいちどの朝礼がある。
大体がはじめの土曜日が多い。締め後のことでもあり、通常の1/4ていどの物量になる。 
内容としては大きなトラブルの起きたことの対処であり、そこに至るまでの経緯・経過か調べられる。
そしてそのトラブルがにどと起きないようにと、対応・対策が話し合われる。

ときにその通常を超えての異常事態が起きたときになどには、営業開始時間をおくらせての話し合いになる。
こんかいは順調な営業成績の伸びからして、小言のでるとはかんがられない。
 社長である加藤が、胸をはって上機嫌に営業職を褒め。そしてまた物流部門をたたえた。
                                  
先月には取引先からこまかな苦情がきていることを、みなが知っている。
口頭における聞き間違いがあったことへの反省から、指示書がつくられることになった。
それによって、言いまちがい聞ききちがいがへった。そのアイデアを出した女子事務員に部長賞があたえられた。

 そして今日これから、真理恵と徳子の闘いがはじまる。
これまでになんども議題にのぼった会計処理の問題だ。
しかしその勝負は、はじまる前からそのすうせいは決まっているようなものだ。
そのひとつが、正論であること。その導入についてはすでに進路が決まっており、あとは実行の段階だからだ。
もうひとつはその推進者だ。そろそろ1年が過ぎようとしているのだが、遅々として進まない。
これまでは武蔵の温情によって不問とされている。そこにいよいよメスが入れられようとしている。

 平机が片付けられ隅っこに積み上げられている。
直立不動の社員のまえに、リンゴ箱を台として五平がのぼった。
武蔵が使って以来、壇にはリンゴ箱を使用している。
株式会社として名前が売れたからといって、創業当時の思い――熱気・根気・やる気――を忘れないという意思表示のためだった。



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