昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十五) 五

2013-09-10 19:17:04 | 小説
(五)

「まったく……、お前だって似たようなものだろうが。
日本全国そこかしこで聞ける話だろうに。

『俺はなんて不運なんだ』なんて考える奴は、だめだ。
世間さまを恨む奴に、ロクな奴は居ない。」

「まったくその通りで。
お情けにすがって生きる奴は、死んだ方がましですよ。」

「そこまで言ってやるなよ。
どうしようもない事情ってのもあるんだ、世の中には。
そういうお方には、静かにしててもらうさ」

「ところで、今夜はどうしますか? 
繰り出しますか、久しぶりに。

電話が入ってましたよ、梅子姐さんから。
新婚旅行の土産を待ってるから、帰ったらお出でと。」

「いや、暫くは欠勤だ。すかんぴんなんだぜ、今の俺は。
大人しくしてるさ、お家で。小夜子が居ない、寂しいお家でな。」

「らしくもない、らしくもない。
それじゃあたしがお相手して、一杯やりますか? 
女っ気なしの酒盛りでもしますか?」

「いいなぁ、そいつも。開店当時を思い出しながらやるか?」
「それより、間引き話を聞きたいですよ。」
「あぁ? 酒の肴にしようってか?」


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