(六)
何とか正三の興味を引こうとするM無線に対して
「ぼくに何の用です? お宅に図れる便宜はないですよ。」
と、連れない正三だ。
「そうそう、テレビジョンは我々の管轄外だからね。
通産に行かなきゃ。」
「いじめないでくださいよ。
お願いしますよ、ほんとに。
他意はないんですから。
日々の疲れを取って頂きたいだけなんですから。」
「とに角、今夜はだめです。」
と、にべもない正三だ。
「アポイントを入れなきゃ、坊ちゃんは忙しいんだ。
今夜は、先約が入ってるし。」
快活に笑いながら部屋の中に消えていった。
「ところで、坊ちゃん。面接は済みましたか?」
「誰の?」
「誰のって、坊ちゃんのですよ。
東京大学法学部ですよ。」
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