昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十九)の六

2013-04-21 12:52:11 | 小説

(六)

何とか正三の興味を引こうとするM無線に対して
「ぼくに何の用です? お宅に図れる便宜はないですよ。」
と、連れない正三だ。

「そうそう、テレビジョンは我々の管轄外だからね。
通産に行かなきゃ。」

「いじめないでくださいよ。
お願いしますよ、ほんとに。

他意はないんですから。
日々の疲れを取って頂きたいだけなんですから。」

「とに角、今夜はだめです。」
と、にべもない正三だ。

「アポイントを入れなきゃ、坊ちゃんは忙しいんだ。
今夜は、先約が入ってるし。」

快活に笑いながら部屋の中に消えていった。

「ところで、坊ちゃん。面接は済みましたか?」
「誰の?」

「誰のって、坊ちゃんのですよ。
東京大学法学部ですよ。」


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