昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (五十九)の五

2013-04-20 13:35:45 | 小説

(五)

茂作にそしられた正三、小夜子に絶縁を宣された正三。
しかし落ち込んでいる暇はない。

省内の廊下を歩く折には、必ず五三会の面々が後ろに続いている。

「佐伯さん、佐伯さん。」
大きく手を振って、正三を呼ぶ者がいる。

「誰だ、あれは?」
「M無線じゃないか? 
テレビジョン製造問題で、通産が揺れてるらしいじゃないか。」

大柄な体を小さくして、正三に近づいてきた。
「今晩、お時間を頂けませんか? 
ちょっと趣向を変えて、キャバレーなど如何です?」

「M無線さん。何だよ、そりゃ。
そんな下世話な所に、坊ちゃんを連れて行くって言うのかい?」
と、山田が噛み付いた。

「いや、待て待て。案外面白いかもな? 
ドレス姿の女給というのも、いいじゃないか。」
とは、好奇心の強い坂井の弁だ。

「そうですよ。たまには毛色の違った遊びをしましょうよ。
ちらりちらりと、見えそうで見えないというのも良いものです。」


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