(五)
茂作にそしられた正三、小夜子に絶縁を宣された正三。
しかし落ち込んでいる暇はない。
省内の廊下を歩く折には、必ず五三会の面々が後ろに続いている。
「佐伯さん、佐伯さん。」
大きく手を振って、正三を呼ぶ者がいる。
「誰だ、あれは?」
「M無線じゃないか?
テレビジョン製造問題で、通産が揺れてるらしいじゃないか。」
大柄な体を小さくして、正三に近づいてきた。
「今晩、お時間を頂けませんか?
ちょっと趣向を変えて、キャバレーなど如何です?」
「M無線さん。何だよ、そりゃ。
そんな下世話な所に、坊ちゃんを連れて行くって言うのかい?」
と、山田が噛み付いた。
「いや、待て待て。案外面白いかもな?
ドレス姿の女給というのも、いいじゃないか。」
とは、好奇心の強い坂井の弁だ。
「そうですよ。たまには毛色の違った遊びをしましょうよ。
ちらりちらりと、見えそうで見えないというのも良いものです。」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます