昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十三)の七

2011-08-18 19:33:18 | 小説
「うわっ!これ、きつい。ダメ、あたしもうダメ。」
前田がまず、ダウンした。続いて
「あぁ、わたしもです。もう、ダメです。」と、小夜子もダウン。
「すごいですね、アーシアは。体力が、まるで違いますね。」
「ほんとね。あんな少しの食事なのに、ねえ。」

ほとばしる汗が、床に落ちる。
恍惚とした表情が、次第に苦痛に歪み始めた。
かれこれ、一時間になる。
「おかしいわ、変よ。」
「アーシア、止めて。もう、止めて。」
「Stop,Stop!」
懇願する小夜子だが、取り憑かれたように踊るアナスターシア。
「身体を壊すわ、やめなさい!」
前田の絶叫に対し、思いもよらぬ言葉が、アナスターシアの口から洩れた。
「いいの、壊れても。小夜子と一緒に、いられる、なら。」

息をゼェゼェと切らしながら、途切れ途切れに話すアナスターシア。
哀しげなその表情に、痛々しい苦悶の表情に、
「もういい、もういい。」と、小夜子が抱きついた。
「おーけー、おーけー、よ。」
涙ながらの小夜子の言葉に、アナスターシアから憑き物が、ハラリと落ちた。
へなへなと座り込んだ。
「・・・・・・・・・・・」
小夜子の耳元で、何やら囁く。前田を見上げるが、
「ロシア語みたいね、わかんないわ。」と、肩をすぼめる。
ひとしきり泣いたアナスターシアは、小夜子をじっと見つめた。
吸い込まれそうな青い瞳に見つめられ、気恥ずかしさを感じる小夜子。
思わず、目をそらした。
「ダスビダーニア!」
小夜子をしっかりと抱きしめて、ゆっくりと囁いた。


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