昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(三十三)の三と四

2012-03-31 12:06:41 | 小説
三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
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久しぶりに自宅でくつろぐ武蔵に対し、小夜子はあれこれと世話を焼いていた。
♪ふん、ふん♪と、鼻歌混じりで洗濯物を干した。
出涸らしのお茶っ葉を畳の上に撒いての掃き掃除も、今日は楽しいものに感じられる。

「何だ、小夜子。えらくご機嫌じゃないか?
何か、良い事でもあったのか?
英語学校の先生にでも、誉められたのか?」

「別に、何もないよ。
お天気が良いから、気分が良いの。」
武蔵に声を掛けられて、高揚している気持ちに気付いた小夜子だった。

“別に、武蔵だからじゃないわ。
そうよ、誰でもいいの。
一人ぼっちが、つまんないのよ。”

武蔵が居てくれるからだとは、思いたくなかった。
あくまでも武蔵は足長おじさんであり、小夜子の思い人は正三でなくてはならないのだ。

葉書きの一枚も送らない不実な男であっても、小夜子にとっては唯一人の男なのだ。
そうでなくてはいけない、と言い聞かせていた。






最近、小夜子に予感めいたものが、じわじわと攻め立ててくる。
“私の処女は、武蔵に捧げることに、うぅん、奪われることになるわ。
でも、心だけは許さないの。
心はもう、アーシアに預けてあるもの。”

“こんなたくさんの、お洋服やらアクセサリー、着物も作ってくれたし。
処女ぐらいは仕方ないわよ。
梅子姉さんも言ってらしたもの。

‘物を貰ったら、それなりのものをお返しするものよ。
心を貰ったら、心でお返しするの。’

ほんとは正三さんにあげたいんだけど、仕方ないわよね。
そうだわ、私の初接吻は正三さんだったわ。”

武蔵に対する恋心らしきものがじわじわとにじみ出て来ることを、
頑として認めない小夜子だった。

‘正三一途’という金文字が頭から離れない。
“金品に惑わされる、小夜子じゃないわ!”

決意にも似た思いを、事あるごとに呪文の如くに口にする。
しかし金員を湯水のように遣うことが、武蔵の愛情表現だと知る小夜子だ。


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