(二)
「おっ、来たかい? 痛いね、陣痛が来たね?
よしよし、でもまだ駄目だよ。いきんじゃだめだよ。もう少し我慢してね。
いかい? よしよし、それじゃね、先生の気をあげよう。
気って、知ってるかい? 気持ちの気だよ。気力って、知ってるよね。小夜子さんは、物知りだから。
中国のね、偉ーいお坊さんがね、人間の気でもって、病を治してたんだ。
こうやって手をかざしてね、病の原因をやっつけてたんだ。
それと同じことをしてあげるから。大丈夫だよ。赤ちゃんには、害はないからね。
先生の気はね、赤ちゃんも元気にしちゃうんだよ。
ねえ、赤ちゃんだって頑張ってるんだ。小夜子さんと同じように、痛い思いをしてるんだ。
でも大丈夫、大丈夫だよ。先生の気は強いから。
よしよし、いいぞ! さあ、赤ちゃんが出てきたぞ。
よしよし、イキんで! イキんで! はい、休んでえ。
息を吸ってえ、吐いてえ。吸って吸って、吐いて吐いてえ。
ご主人かい? 大丈夫、大丈夫。廊下で待ってるよ。
『ガンバレ、ガンバレ!』って言ってるよ。先生には聞こえてるよ。
よし、イキんで。はい、休んでえ」
医師の声が、分娩室に響く。
小夜子の声を掻き消すように、大きな声を出している。
「もういや、先生。こんなに痛い思いをするなら、赤ちゃん、もう要らない。
もう二度と産まないから。あっ、あっ、痛い!
タケゾー、タケゾー、助けて! 手を握ってえぇぇ!」
あらん限りの声を絞り出す、小夜子。
その絶叫に、舌を噛まれては大変だと、口の中にガーゼが入れられた。
「おっ、来たかい? 痛いね、陣痛が来たね?
よしよし、でもまだ駄目だよ。いきんじゃだめだよ。もう少し我慢してね。
いかい? よしよし、それじゃね、先生の気をあげよう。
気って、知ってるかい? 気持ちの気だよ。気力って、知ってるよね。小夜子さんは、物知りだから。
中国のね、偉ーいお坊さんがね、人間の気でもって、病を治してたんだ。
こうやって手をかざしてね、病の原因をやっつけてたんだ。
それと同じことをしてあげるから。大丈夫だよ。赤ちゃんには、害はないからね。
先生の気はね、赤ちゃんも元気にしちゃうんだよ。
ねえ、赤ちゃんだって頑張ってるんだ。小夜子さんと同じように、痛い思いをしてるんだ。
でも大丈夫、大丈夫だよ。先生の気は強いから。
よしよし、いいぞ! さあ、赤ちゃんが出てきたぞ。
よしよし、イキんで! イキんで! はい、休んでえ。
息を吸ってえ、吐いてえ。吸って吸って、吐いて吐いてえ。
ご主人かい? 大丈夫、大丈夫。廊下で待ってるよ。
『ガンバレ、ガンバレ!』って言ってるよ。先生には聞こえてるよ。
よし、イキんで。はい、休んでえ」
医師の声が、分娩室に響く。
小夜子の声を掻き消すように、大きな声を出している。
「もういや、先生。こんなに痛い思いをするなら、赤ちゃん、もう要らない。
もう二度と産まないから。あっ、あっ、痛い!
タケゾー、タケゾー、助けて! 手を握ってえぇぇ!」
あらん限りの声を絞り出す、小夜子。
その絶叫に、舌を噛まれては大変だと、口の中にガーゼが入れられた。
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