(一)
「奥さん、奥さん。僕が、分かりますか?」
その声に、小夜子の目が開く。
上から覗くようにして、医師が言葉をかける。
「大丈夫だからね。僕が付いているから、大船に乗った気でいなさい。
でね、僕の言うとおりにしてくださいよ。
『イキんでー』って言ったら、下っ腹に力を入れてよ。
『休んでー』って言ったら、どうするかな? そう、力を抜くんだねえ。
よく分かってるねえ、良い妊婦さんだ。そうすればね、少しでも楽なお産になるからね」
時折看護婦への指示を混ぜながら、小夜子に声をかけ続ける。
小夜子の視界から医師が消えても、おかげで不安な気持ちにならずにすんだ。
「先生、まだ生まれないんですか? 陣痛、随分と前から始まったんですけど。
あ、来た来た、また来た。先生、イキムんですか? まだ早いですか?」
小さな声で、懇願するように言う小夜子。
次第に陣痛の間隔が狭まり、その痛みに脂汗さえかいている。
「そうだね、そうだよね。痛いよね、痛いよね。
でもまだ、いきまないでね。今ね、赤ちゃんね、産道を通るための準備をしているんだ。
それはそれは狭い産道を通るんだよ。
ところが、赤ちゃんね、大きくなり過ぎちゃったんだ。
たくさん栄養を摂ったものねえ。旦那さんが用意してくれたんだよね。
良い旦那さんだね。でも、ちょっと摂り過ぎちゃったんだよね。
だから赤ちゃん、大きくなっちゃったんだよ。
でも、大丈夫。奥さんなら、大丈夫だよ。
そう、小夜子さんだ。小夜子さん、僕が付いてるから」
「奥さん、奥さん。僕が、分かりますか?」
その声に、小夜子の目が開く。
上から覗くようにして、医師が言葉をかける。
「大丈夫だからね。僕が付いているから、大船に乗った気でいなさい。
でね、僕の言うとおりにしてくださいよ。
『イキんでー』って言ったら、下っ腹に力を入れてよ。
『休んでー』って言ったら、どうするかな? そう、力を抜くんだねえ。
よく分かってるねえ、良い妊婦さんだ。そうすればね、少しでも楽なお産になるからね」
時折看護婦への指示を混ぜながら、小夜子に声をかけ続ける。
小夜子の視界から医師が消えても、おかげで不安な気持ちにならずにすんだ。
「先生、まだ生まれないんですか? 陣痛、随分と前から始まったんですけど。
あ、来た来た、また来た。先生、イキムんですか? まだ早いですか?」
小さな声で、懇願するように言う小夜子。
次第に陣痛の間隔が狭まり、その痛みに脂汗さえかいている。
「そうだね、そうだよね。痛いよね、痛いよね。
でもまだ、いきまないでね。今ね、赤ちゃんね、産道を通るための準備をしているんだ。
それはそれは狭い産道を通るんだよ。
ところが、赤ちゃんね、大きくなり過ぎちゃったんだ。
たくさん栄養を摂ったものねえ。旦那さんが用意してくれたんだよね。
良い旦那さんだね。でも、ちょっと摂り過ぎちゃったんだよね。
だから赤ちゃん、大きくなっちゃったんだよ。
でも、大丈夫。奥さんなら、大丈夫だよ。
そう、小夜子さんだ。小夜子さん、僕が付いてるから」
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