五
「そう。あなたは?」
「わたし、ですか?わたしはいつも元気です。
今朝もしっかりご飯を頂いてきました。
いつもみたいにお代わりをしましたら、正三兄さんに言われました。
“少しは控えたらどうだ。最近、太ったんじゃないか?
小夜子さんを見習ったらどうだ!”なんて。」
「あらあら、それはごめんなさい。
でも、朝は大事ですことよ。」
「あのぉ、小夜子さんの朝は、どんななんでしょうか?
ごめんなさい、変なことをお聞きして。」
「あたしも朝はね、しっかりと食べてるわ。
夜のお食事をね、控え目にしてるものだから、朝お腹が空くの。」
「やっぱりお夕食は控え目にされているんですね。
あたしは、だめなんです。
お腹が減ると、眠れないんです。」
「そうね。慣れるまでは、辛いでしょうね。
でも、少しずつでも、ね。」
「分かりました、頑張ってみます。」
「だめ、だめ。頑張りはだめ。
頑張らずに、気楽に、時間をかけてね。」
「でも、頑張らずになんて・・できるものでしょうか?」
「頑張るとね、反動があるの。
頑張るとね、疲れるでしょ?」
「はい、でも・・・」
「大丈夫!幸恵さんなら出来るわ。
ほんの少しだけ、控えればいいの。」
「分かりました。
あたし、がんば、いけない!頑張らずに、やってみます。」
「未来のステキな自分を思い浮かべて、ね。 」
六
どうしても小夜子の涙が気になる幸恵は、意を決して尋ねてみた。
「小夜子さん。
とても不躾なことですし、お気に触ることかもしれませんが、
お聞きしてよろしいでしょうか?」
「なぁに、あらたまって。
どうぞ、答えられることなら、よろしくてよ。」
「小夜子さんの涙、初めて見ました。
もしかして正三兄さんのことで、親から何か・・・」
すまなさそうに目を伏せながらの幸恵に
「あらあら、見られちゃったかしら?
心配なくてよ、正三さんのことじゃないの。
実はね、近々家を出ようかと思ってるの。
正直のところ、学業にまったく身が入らないの。
焦りが、ね、あるの。」
「えっ!行かれるのですか?
正三兄さんは、まだ暫く後のことになると思うのですが・・」
「ほほほ、正三さんとわたしの東京行きは、別ですわよ。」
「そうなんですか・・、ここから出て行かれるのですか・・」
肩を落とす幸恵に、
「手紙を書くわね、幸恵さんに。」と、指切りの約束をする小夜子だった。
「待ってます、あたし。
すぐに、お返事も書きますから。」
「そう。あなたは?」
「わたし、ですか?わたしはいつも元気です。
今朝もしっかりご飯を頂いてきました。
いつもみたいにお代わりをしましたら、正三兄さんに言われました。
“少しは控えたらどうだ。最近、太ったんじゃないか?
小夜子さんを見習ったらどうだ!”なんて。」
「あらあら、それはごめんなさい。
でも、朝は大事ですことよ。」
「あのぉ、小夜子さんの朝は、どんななんでしょうか?
ごめんなさい、変なことをお聞きして。」
「あたしも朝はね、しっかりと食べてるわ。
夜のお食事をね、控え目にしてるものだから、朝お腹が空くの。」
「やっぱりお夕食は控え目にされているんですね。
あたしは、だめなんです。
お腹が減ると、眠れないんです。」
「そうね。慣れるまでは、辛いでしょうね。
でも、少しずつでも、ね。」
「分かりました、頑張ってみます。」
「だめ、だめ。頑張りはだめ。
頑張らずに、気楽に、時間をかけてね。」
「でも、頑張らずになんて・・できるものでしょうか?」
「頑張るとね、反動があるの。
頑張るとね、疲れるでしょ?」
「はい、でも・・・」
「大丈夫!幸恵さんなら出来るわ。
ほんの少しだけ、控えればいいの。」
「分かりました。
あたし、がんば、いけない!頑張らずに、やってみます。」
「未来のステキな自分を思い浮かべて、ね。 」
六
どうしても小夜子の涙が気になる幸恵は、意を決して尋ねてみた。
「小夜子さん。
とても不躾なことですし、お気に触ることかもしれませんが、
お聞きしてよろしいでしょうか?」
「なぁに、あらたまって。
どうぞ、答えられることなら、よろしくてよ。」
「小夜子さんの涙、初めて見ました。
もしかして正三兄さんのことで、親から何か・・・」
すまなさそうに目を伏せながらの幸恵に
「あらあら、見られちゃったかしら?
心配なくてよ、正三さんのことじゃないの。
実はね、近々家を出ようかと思ってるの。
正直のところ、学業にまったく身が入らないの。
焦りが、ね、あるの。」
「えっ!行かれるのですか?
正三兄さんは、まだ暫く後のことになると思うのですが・・」
「ほほほ、正三さんとわたしの東京行きは、別ですわよ。」
「そうなんですか・・、ここから出て行かれるのですか・・」
肩を落とす幸恵に、
「手紙を書くわね、幸恵さんに。」と、指切りの約束をする小夜子だった。
「待ってます、あたし。
すぐに、お返事も書きますから。」
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