昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(十八)の五と六

2011-10-10 21:14:51 | 小説


「そう。あなたは?」
「わたし、ですか?わたしはいつも元気です。
今朝もしっかりご飯を頂いてきました。
いつもみたいにお代わりをしましたら、正三兄さんに言われました。
“少しは控えたらどうだ。最近、太ったんじゃないか?
小夜子さんを見習ったらどうだ!”なんて。」
「あらあら、それはごめんなさい。
でも、朝は大事ですことよ。」
「あのぉ、小夜子さんの朝は、どんななんでしょうか?
ごめんなさい、変なことをお聞きして。」
「あたしも朝はね、しっかりと食べてるわ。
夜のお食事をね、控え目にしてるものだから、朝お腹が空くの。」
「やっぱりお夕食は控え目にされているんですね。
あたしは、だめなんです。
お腹が減ると、眠れないんです。」
「そうね。慣れるまでは、辛いでしょうね。
でも、少しずつでも、ね。」

「分かりました、頑張ってみます。」
「だめ、だめ。頑張りはだめ。
頑張らずに、気楽に、時間をかけてね。」
「でも、頑張らずになんて・・できるものでしょうか?」
「頑張るとね、反動があるの。
頑張るとね、疲れるでしょ?」
「はい、でも・・・」
「大丈夫!幸恵さんなら出来るわ。
ほんの少しだけ、控えればいいの。」
「分かりました。
あたし、がんば、いけない!頑張らずに、やってみます。」
「未来のステキな自分を思い浮かべて、ね。 」



どうしても小夜子の涙が気になる幸恵は、意を決して尋ねてみた。
「小夜子さん。
とても不躾なことですし、お気に触ることかもしれませんが、
お聞きしてよろしいでしょうか?」
「なぁに、あらたまって。
どうぞ、答えられることなら、よろしくてよ。」
「小夜子さんの涙、初めて見ました。
もしかして正三兄さんのことで、親から何か・・・」
すまなさそうに目を伏せながらの幸恵に
「あらあら、見られちゃったかしら?
心配なくてよ、正三さんのことじゃないの。
実はね、近々家を出ようかと思ってるの。
正直のところ、学業にまったく身が入らないの。
焦りが、ね、あるの。」
「えっ!行かれるのですか?
正三兄さんは、まだ暫く後のことになると思うのですが・・」
「ほほほ、正三さんとわたしの東京行きは、別ですわよ。」
「そうなんですか・・、ここから出て行かれるのですか・・」
肩を落とす幸恵に、
「手紙を書くわね、幸恵さんに。」と、指切りの約束をする小夜子だった。
「待ってます、あたし。
すぐに、お返事も書きますから。」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿