昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

蒼い恋慕 ~ブルー・れいでぃ~ (発信)

2010-02-02 18:52:01 | 小説
少年には永遠の時間のように感じた、その道のり。
話に興じるアベックたちの間延びした声が、
少年の耳に届く。

バンドの音楽も
回転数を間違えたレコード音の如くに、
間延びして聞こえる。

少年が立ち上がって、ものの五六秒。
三つのテーブル先に陣取っていたあの女が、
今まさに目と鼻の距離にいる。
そして階段も。

「あのぉ・・」
少年は、
自分でも信じられない程に容易く女に声をかけた。

つまりつまりながらも、少年が女に話しかけた。
訝しげに見上げる女に対し、
精一杯の真心を込めて話した。

付き添いの女の雑音にはまるで耳を貸さず、
ひたすら女に向けて発信した。
少年の熱い目線を避けて、俯くだけの女に対して。

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